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さぶすクラシック日誌。2022年版...

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毎日、1タイトル、スポティファイでクラシックの新譜を聴いてみた。
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2022年8月の記事一覧

8月24日、シューマン×ヴィトマン、危うい魅力を放つ燃ゆる心...

ドイツのバス・バリトン、クリスティアン・イムラーが、アンドレアス・フレーゼのピアノで、シューマンの『ヴィルヘルム・マイスター』による歌曲集から4曲、レーナウの6つの詩とレクイエムと、ドイツの現代の作曲家、イェルク・ヴィトマンの歌曲集『燃ゆる心』を歌う、大胆な一枚、"DAS HEISSE HERZ"。 シューマンのリートとしては、ちょい変化球?ゲーテの『ヴィルヘルム・マイスター』による歌曲集(1849)から4曲、レーナウの6つの詩とレクイエム(1850)。そして、クラブント、

8月23日、シューベルトの最期の年とシューマンの結婚の年を見つめる。

リートの大家(だけじゃないけど... )、クリストフ・プレガルディエン(テノール)が、ジュリアス・ドレイクのピアノで歌う、シューベルトの『白鳥の歌』とシューマンのリーダークライス(Op.39)。 シューベルト(1797-1828)、最期の年、1828年に作曲された歌曲、14曲をまとめた、文字通りな歌曲集『白鳥の歌』を、7曲ずつ前後半に分け、シューマンがクララと結婚する年、突如、歌曲を量産し始めた"歌の年"、1840年に作曲された2つのリーダークライス、アイヒェンドルフの詩に

8月22日、シューベルトのピュアに癒される...

ピリオドもモダンも自在に弾きこなす、フランスのヴァイオリニスト、ナーマン・スルシンと、ピリオドの名門、クイケン家のピアニスト、ピートによる、シューベルトのヴァイオリン・ソナタ全集。 規模が小さかったため"ソナチネ"として出版(3曲セットで... )されてしまった1番(1816)と3番(1816)のヴァイオリン・ソナタに、ヴァイオリンとピアノのための幻想曲(1827)を取り上げる1枚目... 華麗なるロンド(1826)で始まり、"二重奏曲"、"グラン・デュオ"とも呼ばれる4番

8月21日、スティルス・ファンタスティクスの魔法!改めて、ビーバーの稀有な音楽に魅了された。

スペインのピリオド系ヴァイオリニスト、リナ・トゥール・ボネと、彼女が率いるピリオド・アンサンブル、ムジカ・アルケミカの演奏で、ビーバーのヴァイオリン・ソナタ集。 ビーバー(1644-1704)が、気鋭のヴァイオリニストとして活躍(ひっぱりだこでした... )していた頃、8つのヴァイオリン・ソナタ集(1681)から4曲、3番、5番、1番、6番。ザルツブルク大司教の楽長に就任(1684)し、皇帝から貴族の地位までいただいてしまった頃、『技巧的で楽しい合奏音楽』(1696)、2本

8月20日、三十年戦争の傷跡を癒すかのように美しいリュートの響き... 現代にも響く...

アメリカ出身のリュート奏者、ウィリアム・カーターの演奏で、17世紀、ポーランド、ドイツで活躍したリュート奏者、ロイスナーの『リュートの楽しみ』から、3つの組曲を取り上げる... エザイアス・ロイスナー(1636-79)。 三十年戦争(1618-48)の只中、ポーランド、シロンスク地方(当時は神聖ローマ帝国領... )、ルブベクで、ドイツ系のリュート奏者の父の下に生まれたロイスナー... 7歳の時、一家は、戦争で荒廃したルブベクから離れ、前線から少し離れたシロンスクの中心都市

8月19日、華麗にして、切なげでもある、17世紀、ヴェネツィアが、現代に重なるような...

アレッサンドラ・ロッシ・リューリヒ率いる、イタリアの古楽アンサンブル、アカデミア・ダルカディアの歌と演奏(ピリオド金管アンサンブル、ウト・ファ・ソ・アンサンブルがサポートに入る!)で、ヴェネツィア楽派、グランディの晩課の詩篇曲集。 アレッサンドロ・グランディ(1590-1630)。 ヴェネツィアに生まれ、ヴェネツィア楽派の大家、ジョヴァンニ・ガブリエリ(1557-1612)に師事し、ルネサンス期を代表する文化センターだったフェッラーラで研鑽を積み、1617年、ヴェネツィアに

8月18日、ルネサンスとバロックが融け合うローマらしさ... マッツォッキのマドリガーレ、芳しい!

エティエンヌ・メイヤー率いる、フランスの古楽アンサンブル、レ・トラヴェルセ・バロックの歌と演奏で、マッツォッキの5声のマドリガーレ集。 17世紀、イタリア、カウンター・カルチャーとして楽壇に衝撃と論争をもたらしたバロック... けど、ルネサンスの伝統(古様式)が息衝く聖都、ローマでは、もうちょっと緩やかな受容がなされたか?というあたりを垣間見れるのが、ここで聴く、1638年にローマで出版された、マッツォッキ(1592-1665)の5声のマドリガーレ集。 ルネサンス・マドリ

8月17日、モンテヴェルディのルネサンス×バロックに圧倒された!

昨年は、ジェズアルドのマドリガーレで圧倒してくれたフィリップ・ヘレヴェッヘ率いるコレギウム・ヴォカーレ・ゲント... 今年は、モンテヴェルディのマドリガーレ集、第4巻。 オペラが初めて国際的にお披露目(フィレンツェの宮廷でのロイヤル・ウェディング!)された1600年をバロック元年とするならば、バロック4年(1603)に出版されたのが、ここで聴くモンテヴェルディのマドリガーレ集、第4巻。ルネサンス以来の多声マドリガーレにして響き出すエモさはバロックという、なかなかに稀有な音楽

8月16日、リュート・アッティオルバートで捉えるジェズアルドの肖像...

スロヴェニアのリュート奏者、ボル・ズリヤンが、リュート・アッティオルバートで、リュートもなかなかの腕前だったジェズアルドをフィーチャーする、"IL LIUTO DEL PRINCIPE"。 ヴェノーサ公、ジェズアルド(1566-1613)が生きた時代、ルネサンスとバロックが混在していた頃、双璧を成したリュート奏者、ピッチニーニ(1566-1638)とカプスベルガー(ca.1580-1651)を中心に、ジェズアルドの作品も含め、当時のリュート作品を取り上げる、"IL LIUT

8月15日、ヴィオラ・ダ・ガンバを聴き尽くしたような、そんな気分...

イタリアのガンビスト、マッテオ・チキッティが、オルティス、ヒューム、ヘリー、ベルタロッティの作品で、ルネサンスからバロックへ、ヴィオラ・ダ・ガンバ独奏の歴史を辿る、"Ricercare e Canzoni"。 スペイン・ルネサンスの大家、ディエゴ・オルティス(ca.1510-1576)、『変奏論』(1553)、第2巻、第1から第4レセルカーダ。イギリス・ルネサンス、ヴァイオル全盛期を彩ったヴァイオル奏者、トバイアス・ヒューム(ca.1569-1645)のエア集、第1巻(16

8月14日、バガテル=取るに足らないもの、に、見る、ベートーヴェンの深淵...

鍵盤楽器の巨匠、アンドレアス・シュタイアー(1827年製、コンラート・グラーフのピアノのレプリカを弾く... )と、ピリオドのチェロの巨匠、ロエル・ディールティエンスによる、ベートーヴェンのチェロ・ソナタとバガテル。ちょっと妙な組み合わせ... なのだけど... ベートーヴェンの中期、1815年に作曲された連作のチェロ・ソナタ、4番と5番に、初期と後期に作曲されたピアノの小品による11のバガテル(Op.119)を挿み、後期、1823年から翌年に掛けて作曲された6つのバガテル

8月13日、美しい夢の中を漂うような... この陶酔感!リヒャルト・シュトラウスの歌曲、言葉を失います。

ドイツのソプラノ、ハンナ・エリーザベト・ミュラーが、クリストフ・エッシェンバッハの指揮、ケルンWDR響の演奏で、リヒャルト・シュトラウスのオーケストラ伴奏付き歌曲の数々を歌う、"Sinnbild"。 「セレナーデ」(モットルのオーケストレーションで... )、「朝!」、「冬の霊感」、「万霊節」(ヘーガーのオーケストレーションで... )、「森の喜び」、「こんにちは、愛らしいミルテよ!」、「あおい」(リームのオーケストレーションで... )という、普段、あまり聴く機会の少ない

8月12日、この暗さが生む安堵感は何?!シェック、エレジーに魅了された!

クリスティアン・ゲルハーヘル(バリトン)が、ハインツ・ホリガーの指揮、バーゼル室内管の演奏で歌う、20世紀におけるドイツ・リートの継承者、シェックのバリトンと室内オーケストラのための歌曲集『エレジー』。 オトマール・シェック(1886-1957)。 スイス中部、ルツェルン湖畔の小さな町、ブルンネンで、画家を父に生まれたシェック。最初は絵画で才能を見せるも、間もなく音楽でよりその才能を発揮、チューリヒ音楽院に進む(1905)。さらにドイツへと向かい、ライプツィヒ音楽院でレーガ

8月11日、時代の波に乗り、時代に翻弄されて、辿り着いた音楽が見せるパノラマに感慨...

ポール・マンの指揮、リエパーヤ響の演奏による、1920年代のベルリンにてキャバレー・ソングの作曲家として人気を博したスポリアンスキーの、ベルリンを去ってからの管弦楽作品... TOCCATA CLASSICS, TOCC626 ミシャ・スポリアンスキー(1898-1985)。 ロシア帝国のユダヤ人定住地域にあった街、ビャウィストク(現ポーランド)にて、ユダヤ系の音楽家一家に生まれたスポリアンスキー。ドレスデンで音楽を学び、第1次大戦後、ヴァイマル文化が花開いたベルリンで活躍