見出し画像

8月23日、シューベルトの最期の年とシューマンの結婚の年を見つめる。

リートの大家(だけじゃないけど... )、クリストフ・プレガルディエン(テノール)が、ジュリアス・ドレイクのピアノで歌う、シューベルトの『白鳥の歌』とシューマンのリーダークライス(Op.39)。

シューベルト(1797-1828)、最期の年、1828年に作曲された歌曲、14曲をまとめた、文字通りな歌曲集『白鳥の歌』を、7曲ずつ前後半に分け、シューマンがクララと結婚する年、突如、歌曲を量産し始めた"歌の年"、1840年に作曲された2つのリーダークライス、アイヒェンドルフの詩による12曲からなるOp.39の方を挟む、という構成...

で、まずは『白鳥の歌』の前半7曲。その何ともやさしい響きに耳が持っていかれる!シューベルトの死後、友人たちがチョイスし出版した歌曲集には、どこか思い出を振り返るような感覚があるのか、ふんわりとした温もりに包まれ、その穏やかな表情に癒される。

からの、シューマン... クララは嫁にやらん!騒動で、師であり舅となるヴィークと裁判までやってのハッピーエンドがもたらす安定感だろうか?そこから紡がれる伸びやかな表情には、シューベルトからシューマンへ、リートの深まりが感じられ、惹き込まれる。

で、『白鳥の歌』に還っての残り後半7曲... シューマンの後だと、シューベルトの実直さが際立ち、またそこに、"白鳥の歌"なればこその、作曲家、最期の年に漂う死の影が感じられ、前半のやさしさとはまた違う重み、迫ってくるようで、聴き入ってしまう。

いや、絶妙なる3部構成!ただ歌曲集を並べるのではないプレガルディエンのキュレイションが効いていて... で、飾ることのないプレガルディエンの伸びやかな歌いが3部それぞれを引き立て、ドレイクのピアノも手堅く美しい背景を描き、ドイツ・リートの世界を瑞々しく響かせる。何だか、秋を少し先取りした気分...

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?