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8月15日、ヴィオラ・ダ・ガンバを聴き尽くしたような、そんな気分...

イタリアのガンビスト、マッテオ・チキッティが、オルティス、ヒューム、ヘリー、ベルタロッティの作品で、ルネサンスからバロックへ、ヴィオラ・ダ・ガンバ独奏の歴史を辿る、"Ricercare e Canzoni"。

スペイン・ルネサンスの大家、ディエゴ・オルティス(ca.1510-1576)、『変奏論』(1553)、第2巻、第1から第4レセルカーダ。イギリス・ルネサンス、ヴァイオル全盛期を彩ったヴァイオル奏者、トバイアス・ヒューム(ca.1569-1645)のエア集、第1巻(1605)から6曲。イギリスの王政復古期=イギリス音楽再建期に活躍したヴァイオル奏者、ベンジャミン・ヘリー(fl.1680-1690)の『ヴィオリスト大全』(1699)から4曲。バロックが成熟してゆくイタリアで研鑽を積み、やがてパリを拠点としたアンジェロ・ミケーレ・ベルタロッティ(ca.1665-1747)の『定旋律と装飾を迅速に習得するための易しい手引き』(1698)のリチェルカーレ。という構成...

前半、オルティス、ヒュームはお馴染みだけれど、後半、ヘリー、ベルタロッティは、なかなかにマニアック(世界初録音!)。けど、この構成により語り出される、ガンバ独奏の歴史は説得力がある。オルティスのスペイン・ルネサンス全盛期の高雅さの後で、人間味溢れるヒュームにバロックの到来を感じ... バロックの只中にあって、かえってアルカイックなヘイリー、対位法と歌心を押さえたベルタロッティには、バロックの次なる時代が朧気に浮かぶのか... 時代の変化を繊細に捉える。

一方で、ガンバ独奏の孤高の響きは圧倒的!ガンバというと、どこか線が細いイメージもあったのだけれど、チキッティのガンバは太い。というよりスケールを感じさせる。もちろん、技巧的なあたりは、きらめく弓裁きを見せて、魅了してくるのだけれど、どっしりと構えた低音は、滔々と歴史を語り出すようで... アルバムはCD1枚分以上のものはないのだけれど、ガンバを聴き尽くしたような、そんな感覚をすらある、"Ricercare e Canzoni"。いや、ただならない1枚。

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