自分の興味を深める原体験をした。3ヶ月のなかで得たこれからへの手がかりとは
1度学問の外に出たいと思い、大学を休学。興味のある分野に、仕事という側面から関わってみて感じたこととは。
今回は、R5年度島体験10−12月生として海士町に来島し隠岐島前森林組合で働く北村健祐さんにインタビュー。
3ヶ月間の島体験もまもなく終了。離島直前の北村さんに島での生活を通して感じたことや、これからのことについてお聞きしました。
島での暮らしを決めたのは、地方移住への興味から。
高校の頃から海外の大学に行きたかったので、1年目はマレーシアの大学、2年目からはイスラエルの3年制大学に通っています。大学生活の折り返しというタイミングで、1度学問の外に出たいと思ったので休学しました。
島体験に参画した理由は、地方移住に興味があったから。でも地方って多いから、どこに行こうかなって考えてたんですけど、元々島留学に来ていた知り合いのSNSを見て、それでやっぱりいいなと思って。去年やっていたインターン先の上司が海士町に住んでいたこともあり、せっかくだから行ってみようと思いました。
海士町でなにかやりたいことがあって来たわけではなくて、3ヶ月間島で暮らすということにめちゃめちゃ興味があって来ました。地方に住んでみたいってずっと思っていたけど、長期間地方で暮らしたことはなかったから。
事業所を森林組合に決めたのは、簡潔に言うと林業と農業で迷った結果林業にしたという感じです。
小さい頃から自然に興味があって。森林保全とか、自然ってなんだろうなっていうのはここ1~2年で本を読んだり自分で考えたりしてきたんだけど、なんか頭でっかちになってる感じがあったんです。
だから、せっかくなら自然に触れ合える事業所で働きたくて。
林業にするか農業にするか考えたときに、農業体験は他にもできるところがあるかもしれないけど、3ヶ月だけ林業に関われる場所ってなさそうだなと思って森林組合に決めました。
森に入ったからこそ気づけたギャップと、これからへの手がかり
10月はまだ山には入らず、神社や個人宅のお庭など平場の整備。竹林の奥に重機を入れるために、竹を切りながら道をつくったりしていました。
11月からは山に入って、スギ・ヒノキ林の全伐という業務をしています。何十年前かに植えられた林なんだけど、全然整備されてこなかったから木材として使えなくなってしまってて。だからその区画内のスギ・ヒノキを全部伐採して植え直すための地ごしらえという作業をしています。
働くときに意識していたのは、「弟子になる」ということ。現場で弟子になるっていうのは、作業員の方が「こういう動きをしてほしいんだろうな」ってことを予測して動くことだと思うんです。木の切り方とか、切ったあとの木の並べ方とか。自分のやりたいことを通すのではなく、そういう動き方をすることで普段自分がやらないこと・考えないことに触れられたなと感じています。
実際に働いて感じたのは、自分が関わりたいと思っていた「森林保全」に対するギャップ。森林保全というものに興味があって森林組合に入ったけど、自分が得てきた知識とか詳しいひとに聞いた話に照らし合わせると、「どうやらこれは森林を保全してはないな」と感じるようになって。仕事では将来的に木材にするための木を植えているから、「あるべき姿に戻していく」という、自分が思っていた森林保全とは違っていました。
このギャップを知れたことは自分にとって大きいことで。森林組合で働かなければ、森林整備の計画を提示する側と、現場で作業する側の考え方の違いは見えてこなかっただろうなと思っています。もしかしたら、こうやって森林を守れていないという状況は日本のなかで頻繁に起こっているのかもしれない。それを感じられたから、島体験を終えてからも、他の地方はどういった取り組み方をしているのか、とかを調べてより知っていくきっかけになったかなって。
あとは、短い期間だったけど刈払機で木を切るっていう実践をできたことがよかったな。今までは頭で考えてるだけだったから。
刺激的な毎日のなかで感じる豊かさ
同期の10月生と関わっていて、やっぱり変な人は多いなって思います(笑)
夏休み期間を使って、とかだったらまだ来やすいと思うけど、10月に来るってなるとやっぱりみんな休学してたり、授業受けながら来てたりしていて。そういう決断をした人たちだから、やっぱりそれぞれ個性があるし、しっかりしているところもあれば迷ってるところもある。「こうしていきたいな」「どうしたらいいんだろう」って、模索しているのがみんなと関わる中で感じられて。特にシェアハウスでは、時間もたっぷりあるし深い話をすることも多いから、他の人の考えに触れられる機会が多いからめちゃくちゃ面白いです。
自分の選択肢が広がったというよりは、他の人に興味が持てるきっかけになったと感じています。新しく人と出会ったときに、「この人もなんか面白い経験をしてきてるかも」って考えるようになりました。
暮らしは、すごい豊か。
物価は高いけど、野菜をおすそ分けしていただいたり、魚を釣ったり買ったりしていると自然の恵みが豊かにあるなと感じて。
山で作業してると、むべ(海士弁ではフユビ)が落ちているから1日に2~3個は食べてます(笑)
椎の実とかも結構好きで、実を食べたあとに殻でお茶をつくったりもして。そういうことは出身地の大阪ではできなかったことだと感じているので、改めて自然豊かなところで暮らすことはいいなって思いました。
あとは、シェアハウス生活がすごい良かったなと思っていて。人と3ヶ月一緒に住むなんて家族以外でしたことがなかったから、みんなでご飯を食べたり話したりする時間が楽しかったです。
緩やかな変化を感じながら、「非線形」に生きる
10月の最初の研修のとき、自分の生き方が「目標を決めてそれに向けて努力する線形」か、「目標にとらわれず、試行錯誤をしていく非線形か」という話があって。最初から自分は「非線形」だなと思っていたんですよね。興味があることをやってみたり、やらなかったり、やめてみたり。島に来てからもそれは変わらなくて、この3ヶ月に明確なゴールがあるというよりは、何も成し遂げずに帰ってもいいんじゃないかなと思っています。
島体験を通して、自分の興味を深めることができた
今後は、大学に戻れるかがまだわからないから見通しは立ってないんだけど、1月・2月はまた自然に関わって、修行をしたいと思っています!
海士町に来てから、森林組合の人の繋がりで自然農法をやっている農家さんのお話を聞いて、やっぱり農業もいいなと思って。農家さんのところに滞在して勉強しに行こうかなと考えています。
ここ2年くらい「農と食」というのを大きな自分のテーマとして持ち続けていたから、島体験を通してより近づくことができたというか。もともと興味があった分野が改めていいなと感じて、これからもその分野に進んでいきたいなと思いました。
とにかく、島体験に来てよかったです。仕事内容とか、仕事が自分の想像とは違ったこととか、シェアハウスで過ごした時間、10月生との関係とか。いろんな要素があるけどそれを全部合わせて、やってよかったなって思っています。
(R5年度10-12月期大人の島体験生:山本)