見出し画像

課題に向き合う中で、楽しさを見つけていく。海士町で過ごした2週間

島根県の離島、隠岐島前地域で活動したみなさんが、お互いにインタビューして執筆する「島でnote書いてみた。」
今回執筆してくれたのは、2023年8月に来島したインターンシップ生。短い期間のなかでどんなことを考え、感じたのか。
率直な思いをお届けします。

8月後半の2週間を海士町で過ごした、乙川翔太郎さんにお話を聞きました



埼玉県出身 乙川翔太郎さん
上智大学総合人間科学部4年生(取材当時)


憧れだけでなく、実際に暮らしてみる。


インタビュアー:
では早速ですが、この島に来ようと思った理由を教えてください。

乙川さん:
僕がこの島留学の募集に応募したのが、ちょうどワーホリでオーストラリアにいる時だったんです。日本の街並みとか、ちょっと閉鎖的な場所、いわゆる日本らしいところで暮らしてみたいというのがあって応募しました。
僕はアウトドアが好きで、島みたいな自然の近いところで暮らすのに憧れがあったんです。ただ憧れだけではなくて、実際に暮らしていくなかで経験することから理想と現実のギャップを感じてみたいと思っていたのもあります。

インタビュアー:
来島前からやりたいことは決まっていましたか?

乙川さん:
具体的には決まっていなかったのですが、今までやってみたことのないものに挑戦したいという気持ちはありました。

インタビュアー:
実際にどんな仕事をしていましたか?

乙川さん:
僕は2週間ひとつの仕事に従事していました。所属としては教育委員会の里づくり科、「海の士(ひと)を育む会」で舟小屋再生プロジェクトに携わっていました。

舟小屋再生プロジェクトは、隠岐伝統の船である「かんこ舟」の復活を目標に海士町の宇受賀地区にある港で進められている。
かんこ舟は島の中でも高齢の方々にとっては身近な存在だが、若い人たちには縁遠い存在となっており、舟小屋も老朽化が進み文化として廃れつつあった。乙川さんは、かんこ舟が入る舟小屋作りに参加していたそうだ。


船小屋再生プロジェクトの様子

インタビュアー:
舟小屋作りにはどんな人たちが参加していたんですか?

乙川さん:
海士町の有志が集った「海の士(ひと)を育む会」と島根大学建築デザイン学コースの小林久高准教授、総合理工学部4年生の仲田ひなたさんを中心に学生が主体となって動いていました。最初は草むらだったところを草刈りして整地して、木材をたてるところに穴を掘って…と一から全て自分たちの手でやりました。

自分が知らなかった面白さに出会う。


インタビュアー:
活動していく中で、発見や気づいたことはありましたか?

乙川さん:
僕は初めて建築の仕事に携わったのですが、作業をする中で建築のおおまかな仕組みや技術を知ることができました。建築にも興味を持つようになったり、実際に建築用の工具も使えるようになったりして「自分が知らないだけで、面白いことってあるんだな」というのが発見でした。

インタビュアー:
普段アクセスしない領域にも面白いことがあるに気づいた、というような感じでしょうか?

乙川さん:
そうですね。それから、「挑戦すること」は大事だと思っている人が多いけど、僕はそれに加えて「やりきること」もすごく大事だと思っていて。舟小屋の作業をしていると、想定通りに進まないことがたくさんあるんですよ。木を立てるのにもっと深い穴を掘りたいのに、石があって掘り進められないとか。ただ建物が建てば良いと思うなら、そのまま木を立てて作業を進めていくこともできるけど、作るなら良いものを作りたい。
そのためには妥協せず、他の方法がないかとか、工夫ができないかとか、違うアプローチをみんなで探していく。今まで僕は挑戦しても投げ出してしまうこともあったのですが、そういう弱い部分をこの仕事の中で克服できたことはよかったです。


製作中の舟小屋

インタビュアー:
働く中で大変だったことはありましたか?

乙川さん:
僕は作業に加わったのが遅かったし、建築系の勉強をしているわけでもなかったので、基本的に指示を聞いて動く役だったんです。それで働いていると、「この次は何をやるんだろう?」とか「この作業何のためにやってるんだろう?」とか、分からないことが結構出てくるんです。分からないと不安になるし、モチベーションを保つのも難しくなる。最初に明確なタイムスケジュールとか目標のようなものを提示してもらえると、組織としての力はすごく上がるんだなというのを感じました。

インタビュアー:
乙川さんはひとつの仕事をしてきたとのことでしたが、大人の島留学では複業をしている人も多いですよね。それについて思うところはありましたか?

乙川さん:
教育学科なので、もし夏休みでなければ学校の現場にも出てみたかったです。あとは、最初は漁に参加したかったんです。仕事としては出来なかったんですけど、崎地区の方で定置網漁をやっていて。見学や参加をさせてくれるということだったので、自分で電話して参加してきました。

インタビュアー:
自分からやりたいことのために動けるのはすごいですね。話は変わりますが、生活の方はどうでしたか?

乙川さん:
初めてのシェアハウスで、すごく楽しかったです。ご飯とかもみんなで食べて。作ったものをみんながおいしい!って食べてくれるのが嬉しかったです。
ここにくる前はオーストラリアでホームステイをしていたので、そことの違いも面白かったです。


同時期に島に来た、大人の島留学生と花火
シェアメイトと

おわりに

インタビュアー:
ここでの生活から学んだことで今後に活かしていきたいことはありますか?

乙川さん:
先ほどもお話ししましたが、舟小屋製作での試行錯誤から、諦めないでやっていくことの大切さを感じたし、この経験が自信にもなっているのでやりきることを大事にしていきたいです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?