呼吸をするように人と関わって、生きるように働く【わたし、島で働く。】
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呼吸をするように人と関わって、生きるように働く【わたし、島で働く。】

#離島にもっと若者の還流を

こんにちは!「わたし、島で働く」の連載企画。
今回は島で唯一の公立塾である『隠岐國学習センター』で働いていた猪原 聖さんにお話を伺いました。

3カ月の島体験を通して、次は大人の島留学・島体験事務局スタッフとして働くことを決めた猪原さん。島体験で感じたことを「ありのまま」お話していただきました。

お話を聞いた人:猪原聖(いのはら ひじり)さん
24歳(取材当時)。広島県出身。島根県の大学院に通学中。2021年7月から島体験インターンシップをスタート。

海士町に来て、就職活動をやめた。

もともと教育関係に興味があったという猪原さん。一昨年(2020年)の冬、岩ガキに関するアルバイトのために海士町に来島し、教育魅力化について関係者に詳しく話を聞くや否や「よし、就職活動をやめよう」と思ったそうです。

卒業後に自分はなにをしたいのかを改めて考え直したとき、猪原さんの心には「地域を愛する人を育てる」「何をするか、よりも、どう在るか」という教育魅力化の考え方が強く印象に残っていました。

海士町に来たら何かわかるかもしれない。そこで島体験に応募し、7月からの3カ月間、学習センターで働きました。現在は松江と海士町の二拠点生活をしながら、「大人の島留学・島体験」の事務局として教育の魅力化に関わり続けています。

今回は島体験生として学習センターで働き、感じたこと、変化したことなどをお聞きしました。


塾だけど、塾じゃない。仕事っぽくないけど、仕事。

ー早速ですが、猪原さんは学習センターでどのような仕事をしていましたか。

教科指導や質問対応をしていました。その他にも、海士町には大学生が少ないので、ロールモデルとして大学生に対するイメージや卒業後のイメージを膨らますように話をしたり、たわいもない話をしたりしていました。「仕事なのか、これは。」と思うこともありました。学習センターの仕事は説明が難しいです。


―学習センターで働く方々に、アドバイスなどいただきましたか?

いることが大事。学習面では、理系の人材が不足していたので、サポートしてほしいと言われました。自分で役割を見出だすようにしていましたが、最初の1週間は特に「よく観て」と言われました。


―「観る」というのはどういう事ですか。

よく観察して生徒の状態を事実として把握する事、その子のいろんな面を観るということでした。「観察」は受動的な行為ですが、それが今後その子とどうかかわっていくか、という積極的な行為につながります。

実際に他のスタッフを観ていても、本当によく生徒のことを観ていたので、「観る」ということの大切さ、その意図がよくわかるようになりました。


―「観る」ということは難しくなかったですか。

意外と今までも普通にやってきていて、得意なことかもしれないと思いました。どのフィルターもかけずにどんな生徒もいい面があると思って観ることができることは強みなので、むしろ自分がやらなければならないと感じました。


―教えることよりも生徒のいろんな面を「観る」という事を大切にしていたのですね。

そうですね。一番大切にしていました。教えるときも、教えるというよりは一緒にやっていました。一方的に教えるのではなく、初見では解けない問題もあるので、分からない気持ちをシェアしながら机を並べて解きます。答えを求めている子には合わなかったかもしれないけれど、それでいいのかなと思います。


―なぜ学習センターで働きたいと思いましたか。

実は教育魅力化を知るために、最初は海士町役場の人づくり特命担当に入ろうと思っていました。役場での取り組みを知ったうえで、現場に入るほうが強いのではないかなと思ったんです。

でも関係者の方と話すうちに、気が付いたら学習センターを選んでいました。今振り返ると、役場に入っていたら「魅力化」に対して頭でっかちになって、現場の課題を知らずに、魅力化を推進していること自体に満足していたと思います。

実際に現場に入って感じることは、教育魅力化がメディアに取り上げられているような綺麗な物語だけではなく、今も現場にいる人が、より良いものをつくるために、苦しみながらもがいている状態にあるということです。

その状況を変えるための1つとして、人づくり課が進めている「大人の島留学」という制度があるのだなということにも気づき、それが大人の島留学・島体験の事務局として働く選択につながっていると思います。


ありのままでいること

―そうだったんですね。では働いているときに大切にしている想いを教えてください。

学習センターで働くみなさんについていくのに、とにかく必死でした。みなさんにとっては、私の考えていることをとっくの昔に考えていて、すでにその人たちの基盤にあったので、一生追いつけないと感じました。

目の前の1つ1つの会話に集中していたので、気が付いたら、一日終わっているという感じでした。

―その気持ち、よく分かります。とにかく必死になりますよね。そんな中でも、働いていて嬉しかったことはありますか。

常にうれしいことがあったくらいです。生徒が話しかけてくれたり、生徒と勉強の話だけでなく、なんでもない話が出来るようになったりすることがうれしかったし、その環境に身を置けていること自体がうれしかったです。

どれが一番うれしかったと聞かれても選べないし、選びたくない。そこに優劣をつけたくないと思うほど、全部かけがえのない時間でした。

 

―その3カ月を終え、自分自身になにか変化はありましたか。

ありました。思っていることを中に閉じ込めずに生の感情を誰に対しても出すようになりました。


―なぜ、そう変わりましたか。

学習センターのスタッフのみなさんが、いつもありのまま伝えてくださったからです。「本気になったほうがいいんじゃないか。」「遊びでやっているんじゃないんだから。」というようなことを言い合えるような方々でした。

一方で、「助けてほしい」「どうしたらいいかわからない」という事も全部出しています。感情をそのまま出すことで生まれるものもあるということを間近で感じたので、自分も出すようになりました。


―ありのままを伝えることも、伝えられることも怖くないですか。

そうなんです。痛い。でも必要な痛みです。自分はまだまだだけど、少しずつ自分の殻を破りはじめていくうちに、なんとなく自分の大切にしたいと思っていたものが、すっと自分の中に落ちました。

それは、きれいごとではあるけれど「いつまでたってもあなたと私の関係でいる」ということです。そして最後まで自分のことも相手のことも、いろんなことに対して最後まで諦めない自分でいること。相手のことを最後まで諦めず応援することを大切にしたいなと思っています。

伝えたことで失うものもあるかもしれないけど、それでもその事実だけはずっと残っていくと思うので、大切にしています。


―それは、どのような瞬間に感じましたか。

島体験生のみんなで週に1回行っている研修で、「これからは増やすことではなく、手放した方がいい。そのままでいい。」と言われたときです。

その時は、「残り1か月なのに何もできていない。あれもしたい、これもしたい。」と焦っていて。「手放すこと、そのままでいること」に良い影響はあるのかなと思いました。

でも、過去の自分を振り返ってみると、「手放すこと」によって得たものがたくさんあって、今まで自分が得てきたものは、むしろ手放したことによって得たものだと思いました。

そこで一気に焦りが取れて、失敗しても今まで得てきたものはなくならないし、それを大切にして、手放すものは手放そうと思えるようになりました。


生きるように働ける

―最後に、島で働くことに対しての心持ちや大切にしたいことについて教えてください。

島で働くからこうしよう、島だからこういうことを大切にしなければならないというものはないと思っています。強いて言うならば、私自身が島にフィットしようとしました。

海士町だと自分が大切にしている「あなたと私」の関係性が見える位置に相手がいるので、喜んで働くことができる。生活も仕事も混ざりあっていて、区切りがなく、呼吸をするように働いて、呼吸をするように休めます。

呼吸をするように人と関わって、生きるように働ける。今までは、なんとなくうまくいかないなあと思うことが多かったけれど、今の働き方は自分に合っていると思うし、信頼している人からもそう見えているようでうれしいです。


おわりに

今回は、『隠岐ノ國学習センター』で働いていた猪原聖さんにお話し伺いました。「自分にとって大切なもの」をはっきりさせている彼女だからこそ、なにかを手放すことができるので、得るものも多いのだろうと感じました。

猪原さん、今回は貴重な時間と素敵なお話をありがとうございました。

(インタビュー:清瀬 文:山名)
今回は大人の島留学生の山名さんに記事を書いていただきました!
山名さん、ありがとうございました。


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