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“家らしい”おいしさ|鳥中華そば

私にとって最も身近な楽しみであり仕事でもある[食]に様々な変化が起こってから、2度目になる年が明けた。一昨年の春先に、突如として、日常の一部であった外食が遠ざかった頃を思い返すと、まず真っ先に禁断症状が出始めた料理は『ラーメン』だった。

お店のラーメンというのは手軽に外食らしさが味わえる味のひとつ。こだわりのスープとそれに合う特製麺にチャーシューのほぐれるような柔らかさ、それらが一体となり湯気を立てながら熱々の状態で目の前に運ばれてくるラーメンを、家で作ることは至難の業。だからこそ恋しさが募る。

そんな時に思い出したのが、麺王国・山形で食べた人気ご当地ラーメンの『鳥中華』。

老舗日本蕎麦店のまかないから生まれたという名物麺は、いかにも蕎麦屋らしい濃厚な出汁の香りが立ち上る蕎麦つゆベースのスープに、コシのある中太の中華麺、そこにチャーシューではなく一口大に切った鶏肉と、天かす・みつば・刻み海苔という和の具材がのる一風変わった佇まい。それらをバリッときいた黒こしょう風味が引き締めて、一気にラーメンの雰囲気に持ち込んでいる。一口手繰れば、中太麺のコシに天かすの油分がコクとなってよく絡み、そこを醤油と出汁が香るスープで追いかけると、じんわり沁みるクセになるおいしさ。

出汁、鶏肉、天かす、こしょう、中華麺。材料は手近なもので大体揃う。もちろん、これにしたって本格的なお蕎麦屋さんのような厚削り節をじっくり煮出す濃厚な出汁まで真似できないけれど、そこは普段使いの出汁に煮干しを加え風味を強めて一工夫。

自分で作る目的は、あくまで“家らしい”おいしさに辿り着くこと。


発売中の書籍『おとな料理制作室へようこそ』(ワニブックス刊)に掲載の料理から、山形の人気ご当地麺『鳥中華そば』の動画を公開しました。コピーではなく、“家らしい”方法で工夫しながら、思い出のおいしさに近づけます。天かすのトッピングが味の決め手!ぜひお試しいただけたら嬉しいです。

●鶏肉こしょう天かす三つ葉『鳥中華そば』
旅情は1番の調味料。山形を代表する名物麺、老舗蕎麦店で生まれた「そばとは言っても中華そば」を、家らしいおいしさで楽しみます。


いよいよ寒さが極まり冬本番。“熱さ”がご馳走の季節にぴったりのレシピを、他にもご紹介しています。内側から体を温め、潤して、今年の冬も健やかに乗り切りたいですね。

最後までお読みいただきありがとうございました。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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