【二輪の景色-4】その時代に生きる女。
「古いバイクが好きなのよねえ」
ショベルヘッドの1340ccを彼女はキックで始動して見せた。茶の革ジャンに黒の革パンツがスリムな体をさらに細く絞り込んでいる。生あるものというよりむしろ屍にも近い細さだ。生物学的に言えば骨格を動かす筋肉量が圧倒的に不足している。だからよけいに彼女と彼女を取り巻く空気がどこか遠くに取り残された何か、という感じがする。そこだけ時間軸が間違っている、そんなふうな雰囲気と言えば少しでも現実をとらえられている気がする。現代では嫌悪を覚えるのが当然の咥え