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視覚に囁く『小ご絵』

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いつも大きくて立派な扉ばかり見せられてきたように思う。 深く考えることなく、大きくて立派な扉ばかり追いかけてきたように思う。 だけどいつもうまく開けられるわけじゃない。 ある… もっと読む
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2022年9月の記事一覧

その腹は、闇なのか、病みなのか。黒いのか、濃紺なのか。

 それとも、そのいずれも持ち合わせているのか。  彼らのその濃い色の腹づもりひとつで、い…

奇抜は現実空間で「ふつう」に落ち着く。

「キミのクラスの出し物は何なんだい?」 「『三惑星と三日月の三角関係』という創作劇。作り…

人はコスモス。

 見上げる宙は広いけど、掘り下げる人の心も負けちゃいない。いったいどこまで深いというんだ…

仲間思い。

 スターターを回しているのに、エンジンが食物繊維の挟まった歯に歯痒さを膨らませる心のよう…

人の、猫の、機嫌事情。

 何がお気に召さないのか、険しくした顔を包み隠さぬ者がいる。寡黙が研いだばかりのナイフに…

「あっしが関わってきたことでござんす」

「あっしには関わりのねえことでござんす」  全国の町から村、村から村へ旅を続けていた木枯…

気候変動にこの手がある。黒猫キキはエコな乗り物。

 日本だけじゃない。世界に広がる気候の地滑り、大雨、洪水、雨、嵐。それもこれも、地球の吸う息、吐く息が乱れたせい。地球が、人類の吐き出す毒気に嫌気をさしたから。  人類の歩みに欠かせなかった文明開花、文化大発展は、弱者の頭を踏みつけて上り詰めたみたいに見える。大地が物言わぬことをいいことに、やりたい放題、し放題。  だけど大地は黙っちゃいなかった。声の代わりに重かった腰をとうとう上げてしまったわけだ。  人類の「ごめんなさい」は口先八丁手八丁。排出した分をマイナスすれば、

せっかく考えたけど。

 くだらないことについて、よく考える。無駄だとわかっているのに、深く考えてしまう。考えな…

虹とスニーカーの頃。

 かぐやが月に帰っていかなければならなかったように、虚実を問わずすべての物語には終わりが…

橋の架けられない川。

 かの国の垢すりじゃあるまし、こすれば出るわ出るわのボロの数々。烏の行水で落としきれない…

時計を止めるな。

 3本の針しか持たないのに4本目の軸と言われるそいつの針を止めるな。  形にできないはず…

中流未満の忍耐限度。

 総中流社会の時代はとうの昔に歴史に名を刻み、今ではひと握りの金もちと多くの中流以下とに…

心が冷たくなった時に思うこと。

 心が固く冷たく凍えたら、鏡をのぞいてみるといい。  反射ガラスの向こうからこっちを見つ…

愛站。

 単行本『女のいない男たち』をずっと読まずにいた。短編の大半が過去に寄稿された作品だったし、その大半をオンタイムで読んでいたからだ。  買って読んでも読んだことを忘れてしまって同じ書籍を買ってしまうほどに記憶は消えていくものだから、過去に読んだ短編のすべては、すでに筋書きを消失していた。  読みたかった本をちょうどすべて読み終えたタイミングに、気まぐれで予約した順番がまわってきたことが重なって、借りた。だけど、返却日にまとめえて返した本に紛れて、数ページしか読んでいなかった本