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チョコレートの世界史―近代ヨーロッパが磨き上げた褐色の宝石 (中公新書 2088)


チョコレートの世界史―近代ヨーロッパが磨き上げた褐色の宝石 (中公新書 2088)

 甘~いチョコレート、多くの方が、お好きだと思います。私も好きです(^^)
 チョコレートがお好きな方なら、本書を楽しめるでしょう。

 チョコレートがお好きでなくても、世界史がお好きなら、きっと、本書は面白いです。
 チョコレートの歴史を見てゆくと、世界史の流れが見えてくるんですよ!

 現代の日本では、チョコレートは、ごく普通に手に入るお菓子ですね。
 けれども、このようになるまでには、長い歴史がありました。

 そもそも、最初期の「チョコレート」は、食べ物ですら、ありませんでした。
 では、何なのかと言えば、「飲み物」です。しかも、嗜好品というより、薬のような扱いでした。
 味も、甘いどころか、辛いものもあったということです。

 そんな「チョコレート」が、なぜ、どのようにして、現在のお菓子になったのか、知りたいですよね(^^)

 本書の後半は、ほとんど、英国のあるチョコレートメーカーの話になります。
 そのメーカーとは、ロウントリー社です。じつは、このメーカーは、あの「キットカット」を作った会社です。
 ロウントリー社は、のちに、ネスレに吸収されました。だから、今の「キットカット」は、ネスレ社製ということになっています。

 ロウントリー社は、社会調査に熱心な会社でした。
 今でこそ、新製品を売り出す前に、市場調査をするのは、当たり前ですね。それを最初に始めたのが、ロウントリー社です。

 ロウントリー社は、社員の生産性を上げるため、社員の生活実態の調査も行ないました。二十世紀初頭のことです。その調査は、現代でもなお、高く評価されています。
 そして、この調査は、老齢年金などの「福祉」を実施するうえで、重要な基盤となりました。

 チョコレートの話を読んでいたはずなのに、社会心理学や、経済学や、福祉や、宗教の話になっています。
 これが、面白いんです(^^)  チョコレートという食べ物一つから、多くのことが見えてきます。

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

はじめに

序章 スイーツ・ロード 旅支度
 1 カカオ豆の楽園
   ”口福”の成分  など
 2 カカオ豆のマジカル・パワー
   カカオ「種明かし」  など

1章 カカオ・ロードの拡大
 1 カカオ”豆源郷”
   カカオ揺籃の地  など
 2 パラダイスからの旅立ち
   宮殿の食卓から庶民の手へ  など
 3 海を渡る褐色の双子――カカオと砂糖
   褐色の涙――大西洋三角貿易  など

2章 すてきな飲み物ココア
 1 未知の味――カトリックの宗教的論争と医学的論争
   ヨーロッパのココア・ロード  など
 2 ココアに惹きつけられた人々――ココアと階級
   貴族層の受容――ココアと権力のパフォーマンス  など
 3 プロテスタントとココア・ロード
   ココア製造マニュファクチュアの基盤  など

3章 チョコレートの誕生
 1 イギリスの市民革命とココアの普及
   ピューリタンの時代とココア  など
 2 重商主義のイギリスと貿易体制
   茶・カカオと利益集団  など
 3 カカオ加工技術の改良
   固形チョコレートの誕生  など

4章 イギリスのココア・ネットワーク
 1 ココアとクエーカー
   ココア・ネットワーク  など
 2 ココア製造マニュファクチュアの成長
   ヨークの都市自営業主層  など
 3 ココア・ビジネスと社会改良
   ココア・ネットワークと社会への関心  など

5章 理想のチョコレート工場
 1 郊外の新工場
   田園都市構想  など
 2 チョコレート工場と女性
   増加する女性労働者  など
 3 心理学とチョコレート工場
   チョコレート工場のしくみ  など

6章 戦争とチョコレート
 1 スイーツ広告とファミリー
   ココアとママ  など
 2 キットカットの「青の時代」
   キットカットの誕生  など
 3 戦地のチョコレート
   ジャングル・チョコレート  など

7章 チョコレートのグローバル・マーケット
 1 チョコレートのナショナル化
   中間層のスイーツ  など
 2 グローバル・スイーツの時代
   インターナショナルなチョコレート・マーケット  など

終章 スイーツと社会
   スイーツ・ロード・マップ  など

あとがき

文献



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