ソモフの妖怪物語 (ロシア名作ライブラリー)
群像社の『ロシア名作ライブラリー』の一冊ですが、著者は、ウクライナ人です。
ウクライナの民話を基にした、小説の短編集です。原版は、なんと十九世紀の前半に出ました。
著者のオレスト・ミハイロヴィチ・ソモフは、ほとんど忘れられた作家でした。日本で彼の作品の翻訳が出たのは、これが初めてだそうです。
本書は、十九世紀前半の、ロマン主義時代の雰囲気を、よく伝えています。
ルサールカ、キキモラ、魔女、人狼といった、超自然的な存在が活躍する作品ばかりです。
それらの存在は、ウクライナの伝承に、深く根ざすものです。
ウクライナの文化は、ロシア文化の母体といわれています。ロシアを含むスラヴの文化の、根幹をなしていることは、確かでしょう。
ウクライナやロシア、その他のスラヴ系文化に興味がある方には、本書は、とても有用です(^^)
妖怪や妖精といった、超常的な存在に興味がある方も、ぜひ、本書をお読み下さい。それらの起源の一部を、知ることができます。
例えば、二〇一一年現在では、人狼は、日本人にすら、お馴染みの妖怪ですね。ハリウッドの映画やら、日本の漫画やら、小説やらで、さんざん使われてきたからです。
けれども、人狼の起源の一つが、スラヴの文化にあると知る人は、少ないでしょう。
本書にある短編「人狼」は、フィクションに人狼が登場した、極めて早い例です。
二十一世紀の現在から見れば、ソモフの作品は、洗練されているとはいえません。そこを受け入れがたいと感じる方も、いるでしょう。このために、評価の星を一つ減らしました。
しかし、そこが、ソモフの作品の魅力でもあります。私にとっては、その土俗性が好もしく感じられました(^^)
以下に、本書の目次を書いておきますね。
はじめに
クパーロの夜
ルサールカ
キエフの魔女たち
鬼火
キキモラ
寡婦の息子ニキータの話
人狼
骨砕き【コストロマー】の大熊と商人の息子イワンの話
訳者あとがき
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