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ケルトの神話 (丸善ブックス)


ケルトの神話 (丸善ブックス)

 ケルト民族の神話や伝説を、紹介した本です。

 二〇一四年現在では、類書は、数多く出ていますね。
 けれども、本書が出た一九九七年には、まだ、それほど、ケルトの神話は、日本に紹介されていませんでした。
 本書は、ケルト神話を総合的に紹介する、日本語の資料として、貴重でした。

 本書を読み通せば、ケルト神話について、基礎的な知識は、身につきます(^^)

 ただし、ケルト神話については、日本語に訳すにあたって、重大な問題があります。
 ケルト語の音を、日本語にどうやって移すかについて、統一された見解がないことです。
 このため、文献によって、同じ神の名や、同じ英雄の名が、違う発音で表記されていることが、よくあります。
 これが、ケルト神話の全体像を理解するうえで、かなりの障害となっています。

 本書のケルト語の表記は、必ずしも、一般的な表記とは、言えません。
 本書で、ケルト神話に興味を持ったなら、ぜひ、他のケルト神話の資料にも、目を通して下さい。他の表記がわかりますし、神話に関する知識も、より深まります(^^)

 本書は、具体的な物語が載っている物語集ではなく、神話の解説書です。
 もちろん、神話の内容は紹介されていますが、あくまで、解説です。物語としての楽しみのほうは、犠牲にされています。
 物語を楽しみたい方は、他の資料にあたりましょう。

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

I ケルト神話とは
 時間と空間
 ケルト神話発見の問題点
 古代ギリシア・ローマの評者の資料
 地元言語の資料
 考古学的証拠
 など

II アイルランドの神々
 トゥアハ・デ・ダナン族
 アイルランドを守る戦い――フィル・ヴォルグ族とフォモーレ族
 聖なる王権
 フィン物語群

III アルスター群の神話
 『トーイン・ボー・クーリンゲ』(『クーリーの牛捕り』)
 クー・フリンと他のアルスターの英雄たち
 メーヴとコナホール
 戦いに狂う女神たち

IV 初期のウェールズ神話
 プゥイル、アラウン、フリアノン、プラデリ
 ブラヌエンとベンディゲイドヴラン
 マナウィダンと、ダヴェドにかけられた魔術
 マス、グイディオン、スレイ、ブロデイウェズ
 キルフッフ、オルウェン、トゥルフ・トルイス

V 聖なる恋人たち
 アイルランド神話における恋と嫉妬
 ウェールズの恋人たち
 異教ケルト宗教における聖なる恋人たち

VI 空と太陽の神話
 地元言語による伝承
 異教ケルト・ヨーロッパにおける太陽崇拝
 太陽の車輪神
 太陽馬
 治癒と豊穣
 など

VII 豊饒、国土、水
 山水の精霊
 水と治療効果のある泉への信仰
 神話と豊穣の信仰
 ケルトの祭り

VIII 信仰と神話のなかの動物たち
 野獣と狩猟
 蛇と鳥
 エポナと馬たち
 犬の象徴性
 三羽のツルを伴う牡牛像(タルウォストリガラヌス)と牡牛神話
 など

IX ドルイド神官、生贄【いけにえ】、儀式
 ドルイド神官、予言者、吟遊詩人たち――国境を越えたケルト聖職者集団か?
 聖なる空間――木立ち、聖域、縦穴
 生贄と奉献物
 人間の首の儀式

X 死、再生、「異界」
 魂の転生
 「あの世」観
 死
 再生のイメージ

関係固有名詞・用語表



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