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土佐・物部村 神々のかたち


土佐・物部村 神々のかたち

 高知県の、物部村【ものべそん】という村に伝わる民間信仰「いざなぎ流」について、解説した本です。
 物部村は、平成の大合併により、現在は、高知県香美【かみ】市の一部となっています。

 いざなぎ流は、現代に残る陰陽道【おんみょうどう】とも言うべきものです。呪術的な要素が濃いです。
 村の中でだけ、ひっそりと伝えられてきました。今もなお、外部には、すべてが明らかにされているわけではありません。
 神道、陰陽道、仏教、道教などの要素が、渾然一体となっています。

 オカルト好きなら、日本の生きている呪術「いざなぎ流」を無視できませんね。

 この神秘的な信仰について、かなり詳しく紹介されています。
 いざなぎ流について知りたいのなら、まず、本書をお勧めします。

 その理由は、いくつかあります。
 一つには、写真が美しいからです。物部村の風景写真に、思わず見とれてしまいます。懐かしい日本の風景です。
 いざなぎ流の特徴である、御幣【ごへい】の写真も、何種類も載っています。一枚の白い紙から、こんなにも多彩なものが作れるのかと、感動します。

 初心者でも、本書の写真を見るだけで、いざなぎ流の世界に入り込めます(^^)

 もう一つの理由として、「手ごろな厚さと価格」が挙げられます。
 いざなぎ流を解説した本は、他にもあります。それらは、みな分厚くて、お値段も高いのです。初心者がいきなり手を出すのは、ためらわれるでしょう。

 もちろん、本書は、写真ばかりでなく、解説文も良いです(^^)
 祭儀の時に唱える「いざなぎ祭文【さいもん】」や、実際の祭儀の様子などについて、語られています。

 おそらく、中世の日本では、いざなぎ流のような民間信仰が、たくさんあったと思われます。田畑や家や山や水辺に宿る、無数の小さな神々と、共存する道です。科学技術が発達する前には、そのように生きるしか、なかったのでしょう。
 いざなぎ流は、その最後の残り香といえます。

 日本人の心の奥底に、触れる本です。

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

土佐・物部村【ものべそん】へ

いざなぎ流への道  小松和彦
 物部川源流域の村
 風土に育まれた信仰
 十二所神社の最後の大祭
 一人前の太夫【たゆう】になるには
 祭文を覚える
 祭文が語る世界
 「式法」を修得する
 祭儀は人を救うための儀礼
 いざなぎ流の意味を探る

御幣・神々のかたち
 山の神の祭り
 水神祭り
 幣を切る
 病人祈祷と式王子【しきおうじ】
 家の神の祭り
 日月祭【にちげつさい】
 仮面

いざなぎ流「日月祭」を見る  梅野光興【うめの みつおき】
 市宇【いちう】十二所神社の祭り
 取り分け
 精進【しょうじ】入り
 山の神の祭り・公神【こうじん】の祭り
 日月祭

天中姫宮【てんちゅうひめみや】の修行の旅  山本ひろ子
 「いざなぎ」って何?
 奥三河の「いざなぎの命」と博士【はかせ】たち
 天中姫宮の出生と天竺への旅立ち
 笈【おい】の玉箱と綾の小笠
 日月さまとの出会い
 いざなぎ様との邂逅【かいこう】と姫宮の米占い
 笈の玉箱の怪異―荒神鼠の呪い
 いざなぎ様の館へ―通行手形としての米占い
 いざなぎ様の帰館
 位競べ
 「祈り証拠」の弓をもらう
 呪術の戦いとその修得を語るドラマ

祀る民の暮らし  田辺寿男【たなべ としお】
 天井が騒ぐ
 面様【めんさま】を祀る
 許されなかった撮影

祈りに満ちた村  大竹昭子【おおたけ あきこ】
 山あいの暮らし
 幣を切る
 太夫への道
 祈りに込められた知恵

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