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アリの巣をめぐる冒険―未踏の調査地は足下に (フィールドの生物学)


アリの巣をめぐる冒険―未踏の調査地は足下に (フィールドの生物学)

 昆虫の研究者さんが書いた本です。
 著者の丸山さんは、好蟻性【こうぎせい】昆虫というものを、研究してらっしゃいます。

 好蟻性昆虫って?
 アリ(蟻)の類ではないのに、アリの巣に同居する昆虫のことです。

 そんな昆虫が、いるんですね。
 普通の人は、ほとんど知らない世界でしょう。
 本書は、未知の昆虫世界を、私たちに見せて(魅せて)くれます(^^)

 アリは、普通であれば、同じ巣の仲間以外を、排除します。たとえ同じ種のアリ同士であっても、巣が違えば、生死をかけた争いになります。

 ところが、そんなアリの巣の中に入っていって、無事に成長してしまう昆虫たちがいます。
 しかも、そのような昆虫たちは、アリから餌までもらっています。アリの幼虫などを、捕って食べてしまうものさえ、います。

 どうして、そんなことができるんでしょうか?
 なぜ、好蟻性昆虫たちは、そんな暮らしを選んだのでしょうか?
 誰もが、不思議に思いますよね。

 著者の丸山さんも、人一倍、不思議がっています。だから、研究者になったのですね。
 本書は、丸山さんの研究者としての半生記にもなっています。研究者の生活がどういうものか、具体的にわかります。
 昆虫の生活と同じくらい、研究者の生活も、興味深いですね(笑)

 昆虫の分野でなくても、研究者の道を選ぼうと考えている方は、本書を読んでみるといいでしょう。とても参考になると思います(^^)

 研究者を目指していなくても、昆虫に興味があるなら、本書を読まなければ、損ですよ。未知の昆虫のフィールドが、すぐ足もとにあると、わかります。わくわくします(^o^)
 文句なしの、五つ星評価です。

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

はじめに

第1章 好蟻性【こうぎせい】昆虫ことはじめ
 アリクイエンマムシの発見
 ハネカクシの世界の門を叩く
 好蟻性昆虫の分類学
 アリの巣をめぐって、名もなき虫を見つける
 分類学の研究をはじめる
  コラム 分類学は科学かという議論
 旧北区のクサアリハネカクシ
 好蟻性昆虫からアリへ

第2章 アリの行列の百鬼夜行
 新属、また新属
  コラム 属ってなんだろう
 ヒメサスライアリを探せ
 歩道の掃除から
  コラム 痛い虫、いやな虫
 軍隊アリ化現象
  コラム ワズマン型擬態
 ランビル国立公園のハネカクシ
  コラム よいこの標本作製
 何もかもが未知だったタイ
  コラム ついでになんでも採って喜ぶ
 マレー半島の決着
  コラム 採集の神器
 グンタイアリを求めてエクアドルとペルーへ
  コラム 採集時の服装

第3章 研究の枝葉を伸ばす
 日本のアリスアブ相
 アリヅカコオロギと相棒小松君
 愛しきヒゲブトオサムシ
  コラム 最近の発見1
 ツノゼミへの興味
 シロアリの巣もめぐる
  コラム 最近の発見2
 マンマルコガネからみた熱帯の法則
 悩みを抱えて海岸へ
 本当の生物多様性未踏の地はどこに

第4章 冒険は続く
 三つ子の魂と進路
 生き物漬け生活
  コラム びっくり三選
  コラム 採集法の奥深さ
 虫と青春
  コラム 在野研究者と職業研究者
 生き物の多様性のすばらしさを伝えたい

さいごに
附記・本書の言葉遣いについて
引用文献



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