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虐殺器官


虐殺器官

 SF小説の傑作です。
 SFに馴染みがなくても、ミリタリーものがお好きな方には、お勧めです。

 主人公は、アメリカ合衆国の軍人です。といっても、真正面から戦争に加わるのではなく、暗殺をむねとする特殊部隊に属しています。

 第一部で、いつものとおり、主人公は、暗殺を実行します。ただし、その任務は、完全に成功したとは言えませんでした。
 なぜなら、二人の標的のうち、一人を取り逃がしたからです。

 そこは、東欧のどこかの国でした。国が内戦におちいって、公式な政府は、無きに等しい状態です。主人公の任務は、そこで、「公式な政府のお偉いさん」を名乗る二人の人物を、殺すことでした。

 主人公は、標的の一人を殺す段になって、奇妙な事態におちいります。標的の人物は、内戦による虐殺を主導してきた立場なのに、なぜ、自分がそんなことをしたのか、わからないと言うのです。
 命乞いをするでもなく、言い訳を並べるわけでもなく、標的の人物は、ひたすらに、「なぜだ?」と疑問を繰り返すだけでした。

 主人公は、これまで、任務で、おおぜいの人を殺してきました。
 けれども、死を前にして、そのような反応を示す人に出会うのは、初めてでした。
 心に大きな当惑を抱きながらも、主人公は、任務を遂行します。

 主人公が抱いた当惑は、次第に育って、疑問となります。主人公は、普段の生活を続けながら、疑問の答えを探します。
 その答えは、取り逃がした標的のもう一人が持っていました。そして、それは、人類全体を破滅させるに足る恐ろしいものだったのです。

 虐殺器官。
 変わった題名ですが、この作品に対して、これ以上の題名はないと思います。
 人類を虐殺に走らせるものとは?

 ぜひ、本作を最後まで読んで、その答えを見つけて下さい。

 本作は、文庫版も出ています。二〇一四年現在では、そちらのほうが、入手しやすいでしょう。

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

第一部
第二部
第三部
第四部
第五部

エピローグ



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