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消えるヒッチハイカー―都市の想像力のアメリカ


消えるヒッチハイカー―都市の想像力のアメリカ

 都市伝説について知りたいなら、本書を無視することは、決してできません。
 都市伝説という言葉を、世に定着させたのは、本書の著者ジャン・ハロルド・ブルンヴァンです。
 ブルンヴァンを読まずして、都市伝説を語るなかれ!

 ブルンヴァンの都市伝説シリーズのうち、最初に翻訳されたものです。やはり、本書から順番に、ブルンヴァンの著作を読んでゆくのが、理解しやすいでしょう。

 本書では、有名な都市伝説が、いくつも取り上げられています。
 ただ、「こんな話があった」と紹介しているだけではありません。一つ一つの話の変異を追って、人々の間で、どのように「都市伝説」が形成されてゆくのかを、探っています。
 そこが、本書の面白いところであり、ちまたにあふれる類書と、一線を画しているところです(^^)

 誰かと話していて、以下のようなキーワードが出てきたことはありませんか?
 もし、あるのなら、その時の話は、都市伝説(本当らしいが、本当でない話)の可能性があります。

・ボーイフレンドの死……デートに出かけたカップルのうち、男のほうが行方不明になる。女のほうは、車の中で彼の帰りを待つ。最後に彼女が車を出ると、恐ろしいことが。

・死人の車……新車同様なのに、やたらに安く売っている車がある。その理由は。

・消えるヒッチハイカー……夜、車で走っていると、道端でヒッチハイクをしている女性がいる。彼女を乗せてやると、目的地に着いた時、彼女が消える。

・鉤手の男……カップルが、車の中で、カーラジオを聞く。ラジオニュースで、精神病院から危険な男が逃げ出したと言う。怖くなった二人は、車を発進させるが。

・バックシートの殺人者……見知らぬ車が、しつこく自分の車の後を付いてくる。どうしても振り切れない。とうとう自分の家まで付いてこられてしまった。さあ、どうなる?

 他に、「ベビーシッターと二階の男」、「ルームメイトの死」、「オーブンに入れられたペット」、「髪の中のクモ」、「ケンタッキー・フライド・ラット」、「下水溝のワニ」、「包みの中の死んだ猫」、「おばあちゃんの遺体が消えた」、「セメント詰めの車」、「裸で道路に取り残される」、「ヌードでびっくりパーティー」、「レッド・ヴェルヴェット・ケーキ」、「毛布の中の蛇」、「異常に燃費の良い車」、「幽霊旅客機」、「ダンスホールの悪魔」、「遊園地やショッピングセンターでの幼児誘拐」などが、載っています。

 本書が刊行されたのは、一九八八年です。二〇一一年現在からすれば、二〇年以上も前です。
 けれども、内容は、古びていません。
 例えば、「ショッピングセンターでの幼児誘拐」は、二〇〇〇年代に入ってから、日本で、噂になっています。

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

日本の読者へ
はじめに

1 古い伝説から新しい伝説へ
2 自動車にまつわる古典的伝説
3 「鉤手の男」、その他の「こわい話」
4 汚染、あるいは異物
5 盗まれし死体、死んだものへの畏れ
6 おたのしみ、裸、悪夢
7 いんちき商売
8 生まれ続ける都市伝説

おわりに
補遺・都市伝説の収集と研究

解説 「都市」とフォークロア 大月隆寛
訳者あとがき
索引



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