Ginga Otake

俳句を書きます。おすすめの本など

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りんごの草木染め

 りんごの草木染め  青森は、りんごの名産地として知られている。10代の僕は、しばしば青森へ訪れた。あるとき、お土産で購入したりんごの葉染めブックカバーがある。このブックカバーは、文庫本サイズで絞りの模様が表紙についているのであるが、文庫本を収めるには、幅が余りすぎだ。あるとき、口語訳の聖書につけたところ、その厚みにカバーがピッタリと収まった。それから、あたたかみのあるこのカバーを愛用している。ところで、りんごとは、原罪を象徴する果実らしい。りんごのブックカバー、いかがなも

    • K君のこと

      小学校4年生に進級したある日のこと、それまで学童保育に通っていたため、近所には、まだあまり友達がいなかった。 おつかいを頼まれ、歩いているところを同級生が遊びに誘ってくれた。 それからは、よくその少年グループで遊ぶようになった。 その中のひとりにK君がいた。 夏休みのこと、午前中に遊んでいるとき、互いに喧嘩をして、K君ひとりが公園に残されてしまった。 午後うちに来たら、と僕は声をかけた。 すると、午後1時に玄関のチャイムがなった。 K君が喧嘩していた友人らとみな

      • 信仰の裏通り / 博士をキリストと呼んではならない

        高層ビルの建ち並ぶ大路を避け、狭き門より裏道へ行けば、家並みの低き民家が並ぶ。 君は、そこで本当の貧しさと信仰がひとつの暮らしを発見するだろう。 写真撮影は、禁止されているに違いない。 それでも、君は、こっそりとガラパゴス携帯から写真を送ってくれる。 文面には、メッセージの代わりに有名な聖句が入っていた。 『力を尽くして狭き門より入れ。滅にいたる門は大きく、その路は広く、之より入る者おほし。生命にいたる門は狭く、その路は細く、之を見出す者すくなし』 力を尽して狭き

        • 誰がその中に?

          あなたは、鍵穴の形をしています。 鍵が鍵穴より大きければ、その扉を開けることは、不可能です。 わたしを閉じ込めていた扉には、鍵が挿しっぱなしであったと後に母から聞きました。 父もまた、まだ幼いとき納屋に閉じ込められたことがあるのだそうです。 そうです。 鍵穴は、魚の口に似ています。 しかし、あなたは、貪欲な魚の口でありません。 魚の口から出てくるのは、空虚な言葉に過ぎないからです。 それは、もし例えるならば小さな小さな魚の口であるべきです。 空っぽの鍵穴に、空っぽの墳墓に、あ

        りんごの草木染め

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          Do ut des

          「その人は、五日間何も食べていなかったようだよ。もちろん、パンと水は、与えたさ。それなのに『コーラが飲みたい』って言うんだもの」 「” Do ut des “ か」 「どういう意味?」 「与えよ、さらば与えられん」 「それをいうなら、求めよ、さらば与えられんだろ」 「ラテン語の読み書きは習わなかったのか。Do ut des(ド・ウト・デス)。それでコーラは、買っていったの」 「どうだったか。さっきのは、聖書の言葉だよ」 「ラテン語は、ともかくだ。君はその人から信

          T 博士のこと

           T 博士は、四国の高専を出て7年間会社員として勤めたのち、献身を決意して神学校で学び、宇都宮のとある教会で奉仕された。 働き盛りでの編入学に対して、周囲の同僚からは、反対もあったようだ。 神学校卒業後は、出版社に勤めながら「宗教改革著作集」を出版されたと聞いた。  先に奥様を天に召された博士は、身持ちを崩してアパートの一部屋で年金生活をされていた。 洗濯物と買い物のお手伝いをしたある日のこと、博士は、  「ラテン語の読み書きなら教えられる」 と僕に向かって言われた。

          T 博士のこと

          ダヴィンチの疲れたときおすすめの本特集(だったかな)で見かけた「ドミトリーともきんす」(高野文子)ようやく読めました。大きめの漫画本です。デザインのようなイラストが好きになりました。 #おすすめの漫画

          ダヴィンチの疲れたときおすすめの本特集(だったかな)で見かけた「ドミトリーともきんす」(高野文子)ようやく読めました。大きめの漫画本です。デザインのようなイラストが好きになりました。 #おすすめの漫画

          10月7日朝日新聞

          10月7日 朝日新聞より足尾で中国人捕虜の強制労働や殺害や起きていたことを知った。足尾とは、かつて足尾銅山で栄えた町である。田中正造が鉱毒事件の際に国会で証言したことは、歴史的によく知られている。一方、こんなに身近な場所でさえ、知らないことがある。 10月20日 下野新聞より菊池寛賞の一つに信濃毎日新聞社「五色のメビウス」取材班が選ばれたとある。この本は、外国人労働者をめぐる取材ルポであるようだ。 10月21日 産経新聞見出しより "中傷「いいね」で賠償命令 東京高裁判決

          10月7日朝日新聞

          深夜、部屋はまだ暗く、洗濯機の回る音がした。夢の中の自分と現実の自分は、紙一重で異なる。涙の上の方舟を四方に蹴り飛ばす脚は、意識より少し遅れて動く。上半身は、野山を逍遥して、鳥や獣を数えているのだ。目が覚めて聖書の言葉を思う。そして、また目が覚めて今の生活を送る。

          深夜、部屋はまだ暗く、洗濯機の回る音がした。夢の中の自分と現実の自分は、紙一重で異なる。涙の上の方舟を四方に蹴り飛ばす脚は、意識より少し遅れて動く。上半身は、野山を逍遥して、鳥や獣を数えているのだ。目が覚めて聖書の言葉を思う。そして、また目が覚めて今の生活を送る。

          『ルバイヤート』オマル・ハイヤーム

          ペルシアの詩人、ウマルの四行詩ルバイヤートを黒川恒男訳で読んだ(青空文庫に小川亮作訳がある)。この詩人は、同時代の数学者と混同されてきたようである。 詩集には、酌人である美しい若者や盃、酒壺などを詠んだものが多い。それは、宗派の定める戒律よりその実質的な徳や美観を重視するためであったと思う。この詩人は、悲しむ人や賢人、清らかな人たちへ酒を飲もうと呼びかける。その手にある盃は、以前は人であった土から陶器師が捏ね上げたものであり、聖句が施されている。酒壺は、転じて人の頭となり、

          『ルバイヤート』オマル・ハイヤーム

          “all cats have asperger syndrome” KATHY HOOPMANN

          荷物を整理している最中、以前に図書館で見つけた本『all cats have asperger syndrome』和訳すると”全ての猫はアスペルガー症候群”を読み返しました。全ての頁に猫の写真が載っているため、当時は何となく眺めるようにして読んでいました。しかし、改めて読み返すと対人関係で見過ごされがちな発達障害に関しての理解や示唆に富んだ本でした。今まで助けを必要としている人がそばにいても気づかなかっただけなのかもしれないと反省しています。 いくつか内容を紹介します。

          “all cats have asperger syndrome” KATHY HOOPMANN

          後脚痺れる猫の短夜鳴く #俳句 #jhaiku #短夜

          後脚痺れる猫の短夜鳴く #俳句 #jhaiku #短夜

          ひっそりと酒乱起きれば夕立す #俳句 #jhaiku

          ひっそりと酒乱起きれば夕立す #俳句 #jhaiku

          小粒なる納屋の葡萄へ祈り捧ぐ #俳句 #jhaiku

          小粒なる納屋の葡萄へ祈り捧ぐ #俳句 #jhaiku

          短歌鑑賞 潜望鏡の一首

           連日の暑さで日焼けし痩せているためか、中高生と間違われた。一方で冬は、ひと回り老けて見られる。マスクをしているから尚更だ。 ✳︎ 菊池洋勝さんの短歌、潜望鏡というソープランド用語を使いながら、自己を客観視する描写である。天国とは、呼吸器をとるため文字通り隣りあわせの世界にある。入浴とは、この場合介護における危機的状況であり、その緊張と恥じらいを機知で乗りこえる奥ゆかしさがこの短歌に表現されている。潜望鏡という言葉に過剰な反応を示すものがいるならば、それは表面的にしかこの

          短歌鑑賞 潜望鏡の一首

          すててこを呼ぶときは笑顔になりぬ #jhaiku #俳句

          すててこを呼ぶときは笑顔になりぬ #jhaiku #俳句