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悩める牧者

居酒屋には、レコードやお酒のほか、スピリチュアルや心理学の本が並んでいる。

店主 : 「いらっしゃい」
カウンターに仕事帰りのサラリーマンや銀行員、若い大工らが入って来る。
客 : 「お、よっちゃん。元気かい。久しぶりだね」
よっちゃん「相変わらず元気にやってるよ」
女将: 「先生、雨は大丈夫でしたか」
先生と呼ばれた男 :「ちょっと降ってたが、すぐに止みました」
店内で喧嘩がおこる。
先生と呼ばれた男、牧師 :「無学な者たちよ!」
喧嘩者 : 「哲学者さん、無学とは何だい」
牧師 : 「大学で西洋思想を学び修士まで取りましたが…向こうで学問とは、キリスト教です」
喧嘩者 :「たまげたな。あんたは、先生かい?」
牧師 : 「なぜ先生と呼ぶのでしょうか。喧嘩ばかりしていないで少しは天国のことを考えなさい」
喧嘩者 : 「どうしたら天国に入れるんだ」
牧師 : 「貧しい者に施しをしなさい」
喧嘩者 : 「おい、今まさに口論してたのは、そのことなんだ。こいつが借りた金を返せないというんだ」
牧師 : 「負債を許してあげなさい。そして、天の父にこう祈りなさい『われらに負債のあるものをわれらが許すごとくわれらの負債をも許したまえ』(祈る)」
喧嘩者 : 「そんな話しがあるかい。(周囲からブーイング、涙して)マスター、おあいそ(去っていく)」
牧師 : 「金持ちが神の国に入るのは難しい」
よっちゃんの子 : 「では、誰が神の国に入ることができるのでしょうか」
牧師 : 「ラクダが針の穴を通る方が易しい」
よっちゃん : 「タバコ一本やるよ(銘柄はCAMEL)」
もう一人の喧嘩者: 「ありがとう。それじゃあ、今日俺が友人に貸した金は、全部許すことにするよ」
よっちゃんの子 : 「本当だ、本当だ。金持ちが神の国に入るより、ラクダが針の穴を通る方が易しい」
牧者 : 「ああ、たった今ここに救いが訪れた!」
客 : 「(おいおい誰だ、小水を流しているのは…)マスター、この小便垂れを追い出してくれ!」
牧師 : 「(店の外へ出て)威張っているけれど、本当に僕は、まだ子どもで手伝ってもらわなくては生活もままにならないんだ」
よっちゃん : 「マスター、お勘定(全員分払う)。今日はおごりだ。もう一度飲み直そう(牧者と共に)」


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