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空港で父は私を抱きしめた~家族への一番のおみやげは、元気な「ただいま」の声だと思った話~
私が小学生の頃。父が1週間、東南アジアに出張に行っていたときのことです。
生粋のお父さんっ子だった私は、毎晩布団の中で父が無事に帰ってこれるのか心配で泣いていました。
飛行機が墜落したりしないかな、事故にあったりしないかな、病気になったりしないかな。
そんなことを思うと涙があふれてきて、枕を濡らしました。
父が無事に帰ってきて「ただいま」の声を聞いたとき、本当にうれしくて泣きそうになりました。
でも、なんだか恥ずかしくてそっけない態度をとってしまった私。
それから十何年かたって大学2年生の夏休み、今度は私が1か月東南アジアで一人旅をすることになりました。
バンコクへ向かう飛行機に乗り込んだとき、ふとあの時の父のことを思い出しました。
「あの時とは逆の立場、今度は私が送り出してもらう側だ」
東南アジアでに1か月は、ものすごく濃ゆいものでした。
1か月で9か国をまわる旅。初のバックパッカー。
たくさんの人に出会って別れて、笑ったり泣いたり感動したり。
最終目的地のブルネイでは日本食が恋しくなりましたが、日本へ帰る便の乗り継ぎ地マレーシアの空港ではやっぱり「まだ帰りたくないな」と思う私がいました。
それでも時間は刻々と過ぎていきます。
マレーシアから羽田空港までは約1時間半。帰国の便は最終バスに間に合うように予約したつもりでした。
ですが、マレーシアから羽田空港への帰国便が1時間以上遅れてしまい私は最終のバスにも電車にも乗れない状況に。
実は翌日、私の神奈川のアパートに来ていた父と一緒に実家へ帰ることになっていたので途中の相模原駅まで迎えに来てもらう予定だったんです。
もうどうしようもないので、空港で一晩過ごそうと思って父に連絡を入れました。
「飛行機が遅延して終電にもバスにも乗れないから、始発まで空港にいる」
すると父は電話の向こう側で「迎えに行くわ」と言って電話を切りました。
父はなんと相模原駅から車を飛ばして、羽田空港まで私を迎えに来てくれたのです。
空港の駐車場に車を止めたとLINEが入っていたので、到着ロビーから駐車場へ向かいました。
「あ、1か月ぶりのお父さんだ」
私は父を見つけて思わず頬がゆるみ、人目も気にせず「ただいま」と言ってそのまま父のところへ走っていきました。
そんな私を大きな体でぎゅっと抱きしめた父。
頭の上で聞こえてきたのは「おかえり」という優しい声でした。
父とこんなふうに抱き合うなんていつぶりかな。
そのぬくもりを感じながら、父も小さいころの私みたいにずっと帰りを心配していたんだなと思うと嬉しくて、でもちょっとくすぐったく感じました。
私の旅の絶対条件は、待ってくれている人に「ただいま」を言うことです。
だから旅先で自分から危険を犯すことは絶対にしないし、身の安全を第一に考えて行動します。
私は旅先でよく気に入ったものをお土産として買って帰ります。
もちろんそのお土産でも喜んでくれるのですが、一番喜んでくれるのは私が「ただいま」と元気に帰ってきたときです。
やっぱり一番のお土産は元気な「ただいま」の声。
今は気軽に旅に行けなくなってしまいましたが、世界が落ち着いたらまた旅に出たいなと思う今日この頃です。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。とっても嬉しいです。また読みに来てください!