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#17|コミュニティには「サブスクリプション」が必要

コミュニティは、人生をより豊かにする居場所となるー。
「偏愛物語」とは、オシロ代表の杉山博一が「偏愛」を紐解く連載企画。
第17回は、サブスクリプションならではのコミュニティの魅力を紹介する。

これまで、ぼくはコミュニティの大切さを発信してきたが、OSIROが提供しているのは単なるコミュニティではない。活動を継続するためのコミュニティである。そのためにも会費のあるサブスクコミュニティが取扱いのほとんどを占める。

ぼくらにとってサブスクコミュニティは当たり前ではあるが、一般的にはまだまだハードルが高いと感じられている。そこで今回はサブスクコミュニティの魅力を伝えたい。

そもそも最初にコミュニティを無料で始め、後から有料にしたいと思った時になかなか有料にしずらいと念頭に置いておいてほしい。

会費の対価を作りすぎない

多くの人がハードルとして感じているのは、会費分のコンテンツを作らないといけない、と思っていることだ。

たとえば一冊1,000円で販売されている雑誌がサブスクコミュニティを始めようとするとき、仮にコミュニティでも毎月1,000円の会費をいただくとする。コミュニティ向けに新たに1,000円分のコンテンツを作る時間を割くことは難しい。そう考える人は多い。

でも、コミュニティに参加する人はコンテンツへの対価だけを求めているわけではない。その雑誌の世界観や価値観に共感し、ある意味偏愛しているから参加されている。

一般的に顧客が求める「価値」は二つに分けられる。機能的価値と情緒的価値だ。

機能的価値はその商品やサービスの性能への価値で、情緒的価値はその商品やサービスを使ったり所有する際の幸福感やワクワクする感覚のこと。

偏愛しているものは、単に機能や性能がいいから選んでいるのではなく、情緒的価値を感じているはず。だからこそ、偏愛する対象のコミュニティにコンテンツだけの対価を求めるわけではないといえる。

消費者から貢献者へ

もちろん、コンテンツに対価を求める人もいる。
最初に何か情報を得るためにコミュニティに入るとする。それによって自身の課題が解決されると、今度は同じように悩んでいる人に対して、自然とサポートする貢献者へと変化するようになる。

知りたい情報を得たから退会する、という人もいるが、OSIROの場合はつながりが深まるコミュニティなので、貢献者にまわる人が多いのだ。

以前お伝えした「イミグレ」を主宰する遠山正道さんは、会費の一部を会員の活動に還元している。みんなから集まったお金をどう使うかはオーナーの腕の見せ所である。さながら小さな国のようだ。住民に税金を課し、その税金を何に使うかは国によって異なる。

もしオーナーがテイクするだけの人だと関係性は築かれにくいし、コミュニティの継続は難しいだろう。ギブしあうことで、コミュニティは豊かに育っていく。

四角大輔さんのメンバーシップ・コミュニティ「LifestyleDesign.Camp」もいい例だ。
彼の提唱する人生デザインの流儀と技術のすべてを体系化している記事が毎週配信されているが、その内容は毎年アップデートされているもののコアにあたる部分は基本変わっていない。

会費を払うことで自分の知りたい情報を得るというあり方から、コミュニティのメンバーとの交流が増え、自分の知見を提供したり自分の困っていることを相談し合うようになる。それはやがて「つながり」という新たな価値が生まれてくる。つまり「サブスク」の対価が変わっていくのだ。

仲間がいるから継続できる

サブスクのもう一つの利点は、継続だ。
イベントも無料だと参加率が下がるが、有料だと参加意欲が高まる。
コミュニティも同じ。無料ではなく有料の方が、意欲や熱量の高いメンバーが集う場になる。「コミュニティラーニング」という考え方があるように、一人では活動や学びを続けられなくても、同じ思いや境遇の仲間がいることで続けられる。

ただ情報を得るだけなら本やネットで十分だが、本を読んで実践する人は2〜3%だと言われている。しかし、コミュニティに入れば近い境遇の仲間と出会い、実践し、励ましあうことで続けることができるのだ。人は環境に大きく左右される生き物だ。だからこそ、仲間がいるから続けられるのだ。

また、以前も少し触れているが、会費があることで、安心安全の確保にもつながる。無料の公園(SNS)には誰でも入ることができるが、有料の公園(クローズドなSNS)にはナイフを持った人は入ってこれないようにできる。サブスクは安心料でもあるのだ。

一方で、有料にすると無料に比べて人数規模は小さくなる。SNSだとフォロワー数で評価され、人数が多いほどいいとされているが、OSIROはクローズドなSNSなので量よりも質が大事。

サブスクコミュニティは無料でオープンSNSのように会員数は多くはならない。会社としてビジネスインパクトを求めようとすると、なかなか「量より質」を理解してもらうことが難しいだろう。たとえ数百人でも熱量の高い仲間といえるようなファンが集まると、新たな価値が生まれるとしても。そんなときどうやって理解してもらうか?

OSIROを利用くださっている「DEAN & DELUCA」さんでは、食を楽しむ学びの場として「LIG DEAN & DELUCA」を開いている。シェフやバイヤーさんなどプロの方から食の楽しみかたを学ぶコミュニティだ。もちろんサブスク会費が設定されている。

一定数の熱量の高いファンと顔の見える関係を築き、交流を通じてお客さまのニーズを知りたい、という試みからスタートした。

その結果、店舗利用頻度や購入金額に大きくつながっただけでなく、DEAN & DELUCAさんの社員さんも参加しているので、直接お客さまの喜ぶ瞬間と出会えることがモチベーション向上にもつながっている。(詳しくはこちらのインタビューをご覧ください)

DEAN & DELUCAさんが主宰する「LIG DEAN & DELUCA」のコンテンツイメージ

このように、コミュニティはメンバーの「つながり価値」を生むだけではなく、コミュニティに関わるオーナーや運営者、社員とのつながりも醸成されていく。

前回の記事でもお伝えしたが、よい状態で続いていくコミュニティには、オーナーのコミュニティに対する愛がしっかりある。コミュニティのメンバーがいるからエールを直接感じることができ、オーナーとメンバーとの絆が育まれ、オーナーにとっても自身の活動や事業を続けていくことができる。

ぼくはサブスクリプションをコミュニティを豊かに育てるための肥やしと考えている。

次回は、コミュニティがベースとなるメディアの考え方を綴ってみたい。どうぞお楽しみに。

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