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【女子高生エッセイ】『映画館へ現実逃避のすすめ🌠』

私は映画館が好きだ。
映画館を嫌いな人は数えるほどしかいないのではないかと思う。

週末は必ずといっていいほど映画を見に行く。

平日でも下校道の延長線上に映画館があるので、ほとんど毎日足を踏み入れてしまう癖がある。


映画館が好きというのは、映画を鑑賞したいと思う気持ちももちろん含んでいる。

でも、フライヤーや広告ポスターの配置、ポップコーンの香ばしい匂い、係員さんたちの胸ポケットについた映画の缶バッジ、その全てが私が映画館に足を運ぶ理由を作っている。

映画館は日々更新されていく。

新しい映画の広告や、新しいフード&ドリンクの販売、新しいコラボグッズの販売、新しいガチャガチャのラインナップ。

私にとって、映画館は、常に新しいキラキラで溢れている場所だ。

誰かにとっての水族館がそうであるように、誰かにとってのアミューズメントパークがそうであるように、私は映画館という場所がこの世で一番好きだ。

席を予約して胸が騒ぎ、開場の瞬間に誰よりも早くチケットをちぎってもらう。

決まって私は1番後ろのど真ん中を選ぶ。有名な作品や自分が好きな作品の続編などは、必ずこの席で見たいので、席をネットで予約することもある。

でも、変なこだわりを持っているもので、私は映画館のお姉さんと話して、席を予約したいし、お金を払いたい。

最近はパネルで席を予約するところも増えてきているが、何も考えずその場で見る映画を決める派の私は、パネルを触っていたら、いつまでも見る映画を決められないので大体窓口に行く。

見る予定の映画タイトルの横に目をやると、準備中の文字が私を見つめている。

30分ほど人の流れを見ながら、その文字が開場へと変わるのを待つ。

その時間が愛おしくて仕方がない。

1番乗りでチケットをちぎってもらったあと、その半券を大切に財布にしまう。

毎回、スクリーンの大きさを見て圧倒され、広告が流れ出した音を耳がキャッチして脳が痺れる。

この時間を誰にも奪われたくない、そう思う時間が映画館で私を待っている。

映画館で流れる広告映像が好きだ。

地元の車屋さんの広告のキャッチーな感じが面白いと思うし、他の映画の予告編を見るのも好きだ。

でも何より、映画泥棒は格別である。
毎回目に焼き付けようと必死になりすぎて、最悪の場合、本編より見入ってしまうこともある。

あの作品が流れることでスクリーンを見つめる客の空気感がかわる。それが私の体を震え立たせる。

いよいよ、本編が始まる。その臨場感に満ちているのに、びっくりするほど静かで、そのギャップが心地よいのだ。

全員が次に画面が変わるのを今か今かと待つ。

そして、上映が始まる。





しかし、こんなことを話している私だが、本編が始まると、のめり込める作品よりものめり込めない作品の方が多い。

大体の場合、「ここはこんな感じの表情の魅せ方がしたかったんだな。」「ここのカットのこだわりが凄すぎる。」「脚本の流れに隙がなさすぎる。」というように、物語に没頭することより、制作段階に思いを馳せていることが多い。

純粋に頭の中がうるさいのだ。いつしか、映画が好きすぎてそうなってしまったのだ。

加えて、「ここの表現をもう少し変えるだけでもっと良くなるのに。」と思うこともある。

もちろん、公開されている一本の映画の中に様々な人が関わっていて、いろんな技術が組み込まれていることはわかっている。

先日ゲームの話をした時もそうだったが、見ている映画が良いからこそ、もっと素晴らしいものにできるのではないかという期待が勝つ。

そんなことをずっと考えているから、全く飲み物は無くならないし、気分を上げるために買ったポップコーンは待ち時間のうちに食べた分しか減っていない。

上映が終わって、個人のInstagramにあげる用の写真を撮影して、清掃の方に挨拶をする。

深呼吸をして、今日の映画館の空気をたくさん味わう。
心の中で「ありがとう。」と呟いて映画館を後にする。



こんな体験をしたからには、明日からまた日常に戻るのは憂鬱で仕方がない。

私の日常と非日常を繋いでくれるのは映画館である。


そう言って私は明日も現実逃避する。


オリジナル記事(Original article)


要約•挿絵あり(English summary with illustrations)


完全英訳版(English version of the essay)

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