初恋の話

初投稿で急に初恋の話を。


 世間で言う恋人は、彼氏とか彼女とか、いわゆる「付き合っている」相手を示す言葉なのだろう。付き合っているということは、お互いが好きだということ。お互いが相手に恋をしているということ。それなら、告白などの口約束がなくても、思いが通じ合っていれば恋人なのでは。少なくとも、私はそのような意味で、彼のことを恋人だと思っている。


 彼との出会いは高校。私は生徒、彼は教師だった。生徒が教師に恋をするという、まあよくある話である。彼に出会うまで、もちろん恋人はできたことがなかったし、彼ほど好きになれる人には出会わなかった。初めて抱く恋心に戸惑いながらも、彼のことが好き好きで、愛おしくて、どうにかなりそうで。しかし、だからといって在学中に迫るということはしなかった。それは彼を守るためでもあったし、ただ単にアプローチの方法がわからなかったためでもあった。


 好きになって5年目、高校を卒業して2年目になるが、未だに面と向かって気持ちを伝えたことはない。私たちが急接近したのは、卒業してちょうど1年ほどたった三月の終わり頃。学校以外で初めて彼と会い、今まで指一本も触れたことのなかった彼の手が、初めて私の頭に触れた。そして六月、街灯も少なく暗い車の中、私たちは初めて唇を交わした。


 私を見つめる瞳、私に語りかける声、私に触れる手は、優しくて、繊細で、だけど重みがあって、まるで壊れ物を扱うようだ。言葉がなくても伝わってくるものがある。これで私のことを思っていないのなら、彼はよほど演技が上手なのだろう。だけど私は恋する乙女、そんな彼の瞳が嘘をついているようには到底思えなかった。


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