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文化観光で切り拓く新しい観光

コロナ禍の最中、2020年5月1日に、文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光の推進に関する法律(以下、文化観光推進法)が施行された。

この法律では、全国の博物館や美術館、寺社仏閣などを「文化観光拠点施設」と定義。地域でのWiFiやキャッシュレス決済、多言語対応などの整備や観光振興を進めるという。

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少し遡って、2017年には、文化芸術基本法が成立している。この改正では、初めて、文化芸術振興に加え、観光・まちづくり・国際交流・福祉・教育・産業等文化芸術に関連する分野の施策についても法律の範囲に取り込まれた。

これにより、文化芸術振興と観光やまちづくりなどとの連携によって社会的・経済的価値を創造。文化芸術振興(継承・創造・保存・普及)に循環させるとともに、地域活性化も実現していくという持続可能なエコシステム構築を目指すこととなった。今回の文化観光推進法はこの流れをさらにブーストする役割と考えて良いだろう。

文化観光推進法では、文化観光を文化についての理解を深めることを目的にした観光と定義している。広義にも狭義にもとれる内容だが、広めに捉えた方が主旨には合いそうだ。

旅行者に観光を通じて、文化的価値や歴史的価値の理解を深めてもらうことは非常に有意義だが、発信側はプロダクトアウト型になりやすい。コミュニケーションを間違えると受け手を限定しかねないリスクがある。

受け手側も変化している。旅の目的は多様化していて、同じ場所に百人が百通りの目的で集まるような観光の時代がはじまっている(メタ観光)。異なる目的で訪れた人たちに、彼らのまだ知らない文化的、あるいは歴史的な価値に触れてもらえるような仕掛けが必要となるだろう。

同時に、発信側も自分たちの気づいてなかった価値がそこに存在していることを貪欲に学ぶ必要がある。

また、食やホスピタリティ、快適な移動や宿泊といった街の魅力も考えなければならない。世界に誇れる文化資産・自然資産を有していても来訪者に豊かな観光体験(滞在体験)が提供できなければ、「良かったけど、一度行けば十分」という評価に留まりかねないからだ。

街自体が来訪者にとって多様な魅力をたたえた価値ある場所として評価されることが、文化観光を通じた地域活性化の実現には不可欠なのだ。

コロナ禍によって人々が時間と空間の制約から解放された今、ステイケーションワーケーションは、自宅や近隣の宿泊施設を前提としたものだけでなく、郊外、地方、そして海外にその拠点を求める流れとなるだろう。

すでに、カリブ海のビーチをようすバルバドスやデジタルノマド計画を打ち出したエストニア、コーカサス山脈の村落、黒海のビーチで知られるジョージア、ピンクの砂浜が有名なバミューダなどがリモートワーク専用の長期ビザ導入を進めている

広い世界から自分のお気に入りの場所を選び、そこを拠点に長期滞在をしながら観光と仕事の両方を楽しむスタイル は、日帰りで消化可能な薄っぺらい文化体験や整備の行き届いていないインフラ、排他的なコミュニティなどの貧弱な滞在体験を望まない。

これまでの観光は日常から非日常へ向い、そして日常へ戻るといったものが主流だった。しかし、これからは、非日常に日常を連れ出したり、旅先で得た経験を日常に持ち帰る(transformative travel)といったスタイルがより広がるだろう。

旅行者は旅先にテーマパークを求めるのではなく、歴史があり、多様な人々が日々生活を営み、文化が今も息づく場所を目指すのだ。そこでの体験を通じて自らの生活に気づきや変化を促し、より充実した豊かな人生を手にいれるために。

トークイベント『ニューノーマル、新しい観光』では、コロナ禍によるこの危機を好機ととらえ、これからの観光を様々な角度から登壇者と考えていく。

SESSION 3:
文化観光で切り拓く新しい観光 

登壇者プロフィール

牧野友衛

牧野友衛
トリップアドバイザー株式会社 代表取締役 AOL、Google、YouTube、Twitterで製品開発や業務提携を担当し、Twitterでは成長戦略の責任者として国内での普及に尽力。2016年より現職。総務省「異能(Inno)vationプログラム」や農水省、東京都などの専門委員として、 イノベーション・戦略・ マーケティングの観点からアドバイスを行う。

伏谷博之

伏谷博之

ORIGINAL Inc. 代表取締役_タイムアウト東京代表 島根県生まれ。関西外国語大学卒。大学在学中にタワーレコード株式会社に入社し、2005年代表取締役社長に就任。同年ナップスタージャパン株式会社を設立し、代表取締役を兼務。タワーレコード最高顧問を経て、2007年 ORIGINALInc.を設立し、代表取締役に就任。2009年にタイムアウト東京を開設し、代表に就任。観光庁、農水省、東京都などの専門委員を務める。

高橋政司

高橋政司
ORIGINAL Inc. 執行役員_シニアコンサルタント 1989年外務省入省。日本大使館、総領事館において、主に日本を海外に紹介する文化・広報、日系企業支援などを担当。2009年以降、インバウンド政策を担当。2014年以降、UNESCO業務を担当。「世界文化遺産」「世界自然遺産」「世界無形文化遺産」など様々な遺産の登録に携わる。2020年、宗像環境国際100人会議実行委員会アドバイザー、伊勢TOKOWAKA協議会委員

堀口ミイナ

堀口ミイナ
ナビゲーター トルコ・イズミル出身 日本とトルコのハーフ早稲田大学政治経済学を卒業後、大手総合商社(三菱商事)に勤め、2017年よりタレントに転身。母国語の日本語・トルコ語に加え、英語・スペイン語を扱い、ラジオナビゲーターとして活躍。ワインエキスパート テキーラマエストロ小型船舶操縦士1級の資格も持つ。

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