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ゲストハウスオーナーの悲喜交々

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長野市の小さなゲストハウス・1166バックパッカーズの飯室がゲストハウス経営の悲喜交々を綴ります。現場の話からスタッフ育成、宿をこれからどう育ててゆくか大きな声で言えない葛藤なん…
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2023年5月の記事一覧

"気になる"に、手を伸ばし続けてゆく

"気になる"に、手を伸ばし続けてゆく

 小学1年になったばかりの我が子は、毎朝近所のお兄ちゃんお姉ちゃんたちと一緒に登校班で通学する。私は運動も兼ねてときどき小学校までついてゆく。今朝、「算数が得意!」と話す女の子の横で、「ぼく、得意なことがない」と聞こえないくらいの小さな声で男の子が呟いた。何か気の利いた返しをすぐにできればよかったけれど、私もそういうのが得意ではないので、小学生の歩幅に合わせて歩きながら、「得意」ってなんだろうな、

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ある夜の宿直日誌

ある夜の宿直日誌

  朝一番でお客さんにあったとき、必ずかける言葉がある。「よく寝られました?」だ。海外からのお客さんにも同様に「Did you sleep well?」ときく。声をかけられたゲストは大抵「はい / YES」とにこやかに答えてくれる。たとえ腫れぼったい目をしていても、たとえあくびをしていても、想定外の早く起きててしまったであろう様子でも。

 先日、久しぶりに宿直勤務をした。しかも訳あって、スタッフ

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ゲストハウスをやりたいんです、と相談される話

ゲストハウスをやりたいんです、と相談される話

 ゲストハウスを開業したい、というひとの相談を受けることがまた多くなってきた。"また" というのは、これに波を感じるからだ。

 開業間もない2010年〜2011年のあたりは、県外出身の女性がひとりでゲストハウスを始めたらしいという噂からか、「その業界全然知らないけれど、なんだか簡単に始められそうだし、流行ってきてるよね」というようなちょっとミーハーな質問をうけることが多かったし、東日本大震災の直

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大家さん

大家さん

 ゲストハウスを開業した同業者たちのヒストリーを聞くと、大抵のひとが物件探しに難航したり、妥協をしたりしている。私も、多少の難航はあった。

 物件を探していた13年前、「ゲストハウスを開業したい」というと不動産屋さんや大家さんにいつも難色を示された。当時は今ほどゲストハウスという業態が一般的ではなかったころ。"不特定多数の人の出入りがあるし、外国人も多い。しかも他所者の訳のわからないひとに貸すよ

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恐怖の5月18日 17:33

恐怖の5月18日 17:33

 5月18日(木)17:33に悲劇が露呈した。

「戸隠の奥社についたよ!で、宿はどこだい?」というゲストからのメッセージと「さっき預かった荷物、ジョン(仮名)のじゃなかったです!(汗)」というスタッフからのメッセージが、まさに同時に私の携帯に届いたのだ。そこで私の頭は真っ白になり、持っていた携帯を落としそうになった。

 まず、何があったかを遡って説明する。「今夜宿泊のジョンが13時に荷物を預け

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大切なものを大切に扱う

大切なものを大切に扱う

 前回、どんな忘れ物が多いか、という話を書いた。そして今日は、忘れ物とは、と言う話。

 今年の春先だったか、お友だち数名とのグループ宿泊で来られた女性。賑やかに宿泊し、翌朝はゆるゆるとお部屋を出てラウンジに。客室に誰もいなくなると、我々は早々に空いたベッド周辺を確認しにいく。流れるように無駄のない動きで、白いシーツをシュッとひっぱり、くるっと丸める。掛け布団を干し、マットレスを立てる。枕カバーと

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旅と忘れ物

旅と忘れ物

 みなさんは旅先で忘れ物をしたことがあるだろうか。私はある。幼少期の旅行ではクラスのみんなに買ったはずの大量のご当地キットカットを宿の冷蔵庫に忘れて帰ったときは泣きそうになったし、100均で購入した充電器を忘れた際は諦めたにも関わらず宿屋さんのご好意で "着払い" で送られてきて、100均の充電器に600円ほどの送料を払った(悪いのは私だが、発送前にひとこと欲しかった…)。つい最近は財布やクレジッ

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スタッフとの関係性

スタッフとの関係性

 HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン/Highly Sensitive Person)、という言葉があるらしい。言葉の力はすごいな。メタボ同様、こういう言葉が出てくることでそのものの輪郭、存在がはっきりしてくる。ちなみに、HSPは "統計的には人口の15%~20%。5人に1人があてはまる『性質』"、だそう。多っ!

 で、これって、関西弁でいう "気にしぃ" と何が違うのかはわからないけれど

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誕生日プレゼントは母娘旅

誕生日プレゼントは母娘旅

 独身時代によく泊まりにきてくれていた当時20代前半だった女性。確か一番始めは同じ年頃の女友だち3人組でよく泊まりにきてくれた。何度か泊まりにきてくれているうちにくれた、自分で彫った消しゴムハンコとその青い缶ケースはまだ私の手元にある(いや、これはお友だちの方がくれたんだったか。そのくらい11年前の記憶はあやふやだ)。

 そんな彼女が、小学生の長女ちゃんを連れて初の母娘旅で泊まりにきてくれた。長

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アフターコロナの雑記

アフターコロナの雑記

 2022年10月、水際対策の大幅緩和により外国人観光客の本格的な受け入れ再開した。これは2020年春に鎖国状態になってから、実に2年半かかった。開国してからはどどどーっと海外からの旅行者が雪崩れ込み、我々は「英語を忘れた」と思っていたことすら忘れて、ひさびさのゲストハウスらしい交流の日々を楽しんでいる。

 東日本大震災直後と同じように「日本への旅行を心待ちにしていた!」という親日家の旅行者との

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