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ゲストハウスをやりたいんです、と相談される話

 ゲストハウスを開業したい、というひとの相談を受けることがまた多くなってきた。"また" というのは、これに波を感じるからだ。

 開業間もない2010年〜2011年のあたりは、県外出身の女性がひとりでゲストハウスを始めたらしいという噂からか、「その業界全然知らないけれど、なんだか簡単に始められそうだし、流行ってきてるよね」というようなちょっとミーハーな質問をうけることが多かったし、東日本大震災の直後は「やろうと思っていたけれど、今じゃないかな」というような諦めの話があったのも覚えている。デザイン性の高いバーを併設したホステルの開業が増えてきた2015年あたりはうちのように最低限の予算でセルフリノベーション率の高い小さなバックパッカー系宿(というのか?)を目指す人たちは少なかったのか、話を聞きにくる人自体が少なかった。そしてコロナ禍を抜けた今、一人で回せる小さなサイズのゲストハウスを開業したいというひとたちからの相談を受けることが続いている。

 将来自分で開業したいという1166バックパッカーズのスタッフには定期的に勉強会を開いている。コンセプトはみんなそれぞれに描いているので、私としては立地、許認可、値付け、初期投資額、売上、経費、利用しているソフト関連の話などを段階にわけてやっている。泊まりに来られるお客さんで開業希望の方とは事前にわかっていればスケジュールを合わせて少しお話しすることもある。どのくらいの規模がいいか、物件の探し方、そのあたりを聞かれることが多いけれど、本当はもっと突っ込んでお金の話も聞きたいんだろうなと思うから、状況によってこちらからそういう話もする。自ら事業計画書や図面を持ってきた本気のかたと膝を突き合わせて話をしたこともある。民宿から業態変更でゲストハウスへ、というかたもいた。

 先日、急ぎのスケジュールに追われるなか、隙間の時間で忘れ物を取りに宿に戻ったとき、宿の前に見慣れない車が停まっていた。私がつくとタタタっと小走りで運転手らしき男性がこられ、「飯室さんですよね、僕もゲストハウスを開業することになったんですが…ゲストハウス開業するのって大変ですか?」と聞かれた。このnoteがもしかしたらその方の目に触れるのかもしれないけれど、これは私にとっては対応しづらい。私自身、急いでいる。あなたの名前すらわからない。そして質問がざっくりすぎる…やわらかい物腰で、感じのよさそうな方だったので、時間があればお話しをお伺いできたと思うんだけれども、ちょっと急ぎの用事の中にいたので、また事前に連絡してからにしてください…とお願いした。

 慈善事業ではないし、貧乏暇なしでいろいろ慌ただしいので、いろんな角度から投げ込まれる「ゲストハウスやりたいんです、話聞かせてください」球を全て打ち返せない。とはいえ、私だって開業前に話を聞きに行ったことがいくつもあった。ゲストハウス業界というものにこれから先も未来があることを感じているし、周囲に素敵なゲストハウスができて、そのオーナーと繋がっているというのは私自身も楽しい。「1166バックパッカーズに相談しよう!」と思ってくれるのは、きっと「1166バックパッカーズってなんかいいよね!」と言ってもらっているからだと思うので、それは涙がでるほど嬉しい。ということで、ボランティア精神でお手伝いできることがあれば対応することも多い。丁寧に投げられた球は丁寧に打ち返してゆきたいと思っている。

 

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