Vol.1 オーガニックとは何ぞや?


最先端のバイオ技術から、今晩のおかずのお話まで。
微生物の道先案内人が、オーガニックのもろもろを
ミクロからマクロまでたっぷりお届けいたします!

はじめまして。オーガニックや農業、微生物のお話(できるだけためになるやつ)をつづっていこうと思います。私は「金澤バイオ研究所」という微生物の研究所の企画をやっております。こちらは、「すべては土から」をコンセプトに、四半世紀以上のあいだ大学で微生物の研究をしていた父の立ち上げた研究室。土のことなら顕微鏡でしか見えないミクロから、宇宙レベルまで、がっちり説明する自信がありマス! この世界を、たまたまこの環境に生まれ落ちた私がハブとなってお伝えできればと思っております!

さてさて、ではそもそもオーガニックって結局!?(・_・;?? からはじめようと思います。無添加とか無農薬とかナチュラルとか、人それぞれ何となくイメージがあると思います。意識高い系の人が好きそうとか、聞いたことあるけどよく分からないですよね。

オーガニックの定義って?
ではオーガニックに対する漠然としたイメージを持っている方に、この言葉の定義を日本標準と世界標準の両方から解説していきたいと思います!

国際的な規模で有機農業推進活動を行っているIFOAM( 国際有機農業運動連盟) は、オーガニックの原則として「生態系」、「健康」、「公正」。「配慮」の4項目をあげています。日本の有機認証制度はこのIFOAMの起訴基準から作られています。

説明しても長くなりそうなので(笑)、IFOAM( 国際有機農業運動連盟) についての詳細は、以下のリンクからご確認くださいませ。
https://www.isis-gaia.net/hpgen/HPB/entries/555.html


なるほど。「大辞林 第三版」によると、「有機栽培,有機農業。また,その農産物。広く,畜産品を含めた生産物をいう場合がある。」

農産物のほかに有機畜産物というのがあるのですね。動物用の医薬品を避けた飼料を与えた動物、動物にとって配慮した環境で育てた家畜や家きんですね。餌は主にオーガニック農産物、病気にならないための抗生物質などを使わない、遺伝子組み換え技術を使用しないことがポイントだそうです。

ふむふむ。世の中ではそういう定義なのですね。ではもっと現場に近づいてヒアリングしてみましょう。

専門家に聞いてみた
ここでもうひとかた、長年微生物の研究をしている父にズバリ「オーガニックとは何だ?」と「簡潔に」と添えて聞いてみました。

ズバリは「農薬や化学肥料を使わない農業のこと」。そのメリット、デメリットも聞いてみたところ、メリットは土を健康にするから、動植物が健康になるよ、と。デメリットは、日本では環境的になかなか実現しにくいところ、いい資材がないことだという。それもそのはず、日本のオーガニックの生産率は0.3%以下! 1%ないって・・・。

では、どうしてそんなに少ないのでしょう? それには、悲しくもごもっともな理由があったのでした。「日本は温度と湿度が高く梅雨もある。雑草と虫にとってパラダイスなんだよね。雑草が生えればメインで作る農作物もやられるし、草取りの手間は想像以上に大変なんだよ。虫は農作物食べるわ、病気運んでくるわで農家さんにとっては悪さばかりでしょ・・・。。残念ながら、我が国はとてもオーガニックで大規模で作れる環境ではないんだよ。ヨーロッパとかアメリカは乾燥しているので虫にもやられにくいからオーガニック農業が大規模にできるんだけどね。ほんといいよね。」

無農薬は理想的ですが、生産者さんからしたらそんなに簡単なことじゃない。切実ですよね、草と虫。どっちもイタチごっこですから・・・。

「1たん、2たんの小さな畑でマニアックにオーガニックにこだわるのは可能だけど、それを生業にしている人にとっては農薬や化学肥料で抑えなければいけない事情があるよね。農薬と化学肥料はカップルだし。でもうちの畑はオール無農薬・無化学肥料でやっているよ。ひと昔前はキチ○イ扱いされてたけどね(笑)。先生何やってんだ、バカやってんじゃないよって。でも、結局周りも真似しはじめたんだよ。土を根本的に健康にしてれば何とかなるんだよ。自然は応えてくれるんだよね。雑草には相当苦労しているけど。」

じゃあ虫問題は? 「それが、害虫と言われる虫を益虫が食べちゃって、殺虫剤もいらない世界になったんだよ。とくに何もしてなかったんだけど。当時畑の師匠って言ってるおじいちゃんがいてね。これには驚いてて。夜中にこっち来い、こっち来い、って虫を呼んでたんだって。すごいだろ?」

確かにすごい。やったのは、いい有機質資材を土に入れただけ。最初ガッチガチだった土がフワフワになり、害虫を益虫が食べるという、いわゆる食物連鎖が出来上がったということだ。

父はお茶好きが高じて、鹿児島大学時代に「茶園土壌の研究」を始め、その傍ら自ら畑を作る。農薬天国の現場に単身乗り込み、KY全開で無農薬栽培を決行。雑草対策にワラや竹など駆使したり試行錯誤しながら完全オーガニックで周りを納得させた過去あり。

十勝毎日上

↑下の方は、「土の薬膳」®︎で最初半信半疑でオーガニック茶畑を作った茶農家さん(大臣賞受賞歴あり、手もみ名人)。完全無農薬・化学肥料・もちろん除草剤なしでお茶作り成功!

しかし「農薬と化学肥料がカップル」とは!? その辺りは後日の「農薬と化学肥料」のお題の時に綴ります。

じゃあ、日本でオーガニック農業は無理なの?

しかし、どうやら日本でのオーガニックは簡単ではなさそうな感じがしてきましたね。では、この現状を変えるには? 

「昭和30年代の理想的な農法をやりつつ、作業を機械化することだよ。実際いくつか実証しているよ。アナログと機械のツインをうまくカップルにすれば日本でも大規模なオーガニック農業だって可能だよ。しかもね、オーガニックで作ると植物がじっくり育つから本来の風味になるんだよ。お茶もお米も野菜もビックリするくらいおいしいから。おいしくなければここまで追求しなかったからね(笑)。」

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↑これ、我が金澤バイオの画期的農法の「竹による水田マルチ(雑草防止)農法」(笑)。手でまいてますが、本来なら機械で。(泥vネックの研究所長)

うーむ。これ、速攻やったほうがいいのでは?(笑)。そのあたり(アナログ&機械化カップル)はまたの機会にレポートいたします。

そしてオーガニックは目に見えない「微生物」というのが影の立役者だということです。

「結局オーガニックとかできたもののこと言うけど、土がすべてのお母さんだからね。それには目に見えない微生物の働きがあるんだよね。ここをちゃんとわかって工夫すれば日本のオーガニック農業の未来も夢じゃない。」

ご自身の専門に話が流れてきましたが、確かにそうです。食べ物は土から生まれ、その土の中の・・・と時間を戻していけば「微生物」にたどり着きます。日本人の職人気質とオーガニックが掛け合わされたらすごい食文化が生まれそうですよ。

発酵ブームや先のノーベル賞受賞が微生物関連ということもあり、だんだんポピュラーになってきましたが、まだまだマニアックなこの業界。

しかし、空中地中あらゆるところで働く微生物がいなければ、人間は1日も生きることができないわけであります。微生物は、毎日のご飯やお酒、薬やアンチエイジング、みんなが気になるアレコレを目に見えない小さな体で支えているのです。めちゃくちゃ健気な生物なのです。食べられたりせっせと増えて働いたり、土の中で黙々と植物のために栄養を作ったり・・・。よく考えると何億、何万、気の遠くなるような彼らが毎秒、毎日働いているのです。何年もののチーズだよ、ワインだよ、と格好つけるのが恥ずかしくなってしまいますよね? 

なるほどなるほど。究極のエキスであぶり出すと、私たち人間、というよりもあらゆる生き物や植物、はたまた鉱物や宇宙、結局あらゆるものの健康に関係している「壮大な」要素ということが分かります。

この大切な「微生物」と言うテーマは一回で綴れない大きなテーマであり、今後そこは小さく小分けしながら解明していきます、そして今回のお題が「オーガニック」ということを思い出しましたので、オーガニックとは何ぞや!?、のテーマらしく締めくくりたいと思います。


有機農業であればいいというものでもない
ここで、これまたうれしくないコメントが。「あとね、オーガニックオーガニック言うけどね、本物ってほとんどないから。有機肥料って臭いでしょ? あれ未熟なんだよ。まだ腐ってる状態なの。ちゃんとしたものは匂いがないからね。前に調べたらね、ほぼ100%の圃場に大腸菌がいたし。未熟な肥料を放り込んじゃうと、病原菌をそのまま入れちゃっているのと同じなんだよね。病原菌って生々しいおいしいものが大好物なんだ。まだまだ栄養のある臭い肥料を入れてしまうと彼らのおいしいご馳走になっちゃう。病原菌が活性して元気になっちゃう。だから、ちゃんと完熟したものを入れて、土を健康に、植物を健康にしなくちゃいけないんだ。あんまり大きな声で家なんだけどね、これ。」

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確かに有機肥料の業者さんにケンカ売ってしまいますしね・・・。でも最高峰、といわれてるお高い肥料で臭くないものがないのは私も知っている・・・。わたくしごとですが、オーガニック肥料を製造しているのですが、オーガニック栽培のお悩みのひとつに「コバエ」問題があります。このコバエ、普通に生活してても台所やらどこやらにブンブンきて嫌ですよね。臭いのある有機肥料たるや、コバエがたくさんくるし、下手したらそこが宿になってしまうことも(ゾッ)。でも現実、世に出回ってる有機肥料はほぼこっち。

「あとね、化学肥料とか未熟な有機肥料を入れて育てると、硝酸態窒素の値が高くなっちゃって、酸素欠乏症を起こすんだ。いわゆるブルーベビー、真っ青な赤ちゃんが生まれてしまったり・・・。」

これは怖い。この「硝酸態窒素」問題。これは大きなテーマにて、別にまとめていこうと思います(あとでまとめが多いのは失敬! どれもかなり説明がいるので!)

さて。これまでオーガニック栽培のキモは、気候や環境、いい資材を入れてあげることが大切だとわかりました。そしてオーガニックというのは生命体の健康にとってとても大事であることが分かりましたね。とどのつまり、オーガニックとは、化学肥料と農薬を使わない農業のこと。そしてそのキモというのが健康な土が基本であること。ということですね。

希望的観測で締めくくり
しかし、すべてオーガニックで生きてる人って一体どのくらいいるのだろう?(笑)。少なくとも私の周りにはいないなあ(もちろん私も)・・・。しかも、実は本物ってほとんど皆無とのことだし・・・。現実的なことを言ってしまいますが、こだわればこだわるほどコストはかさんでエンゲル係数はあがり、他の人との距離が生まれ(食べるものが変わってくる)、アレはダメ、これはダメ、で息苦しい・・・。生食で食中毒起こすくらいなら、化学肥料かかった野菜食べたほうが安全かも? と私は思ってしまうのですが、いかがなものでしょう?

日本でもっとオーガニック栽培できる環境が整い、ピリつかなくても安全かつおいしいものが普通に食べられる世の中にするには? と前向きな働きかけがココを通じてできれば幸いでございます。

それでは、このへんで今回のお題「オーガニックって何ぞや!?」を締めくくりたいと思います。そして次回のお題は考え中です!

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