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【業務日誌】開業の朝はホワイトでちょっとブルー。

2021年4月1日、ぼくはりんご農家「イドバダアップル」として開業させていただいたのですが、地域の方々へのご挨拶と、米崎りんごの取材をずっと重ねられてきた地元ローカル新聞社「東海新報」様への感謝も込めて、新聞広告1面を広告として購入いたしました。陸前高田市でのりんご産業は130年の歴史があり、背景には栄枯盛衰の物語もあり、生産地としても優れた条件があることなど、「米崎りんごって何なのか?」をもう一度知っていただきたかったからです。おかげさまで沢山の反響があったのですが、次の日の紙面など貴重な経験にもなりましたので、全文を記します。


陸前高田に
米崎りんご農家が
一件増えました。

拝啓 地域の皆々様。 
実家は広田町中沢天ケ森、屋号はイドバダ。
生は昭和五十一年、農業経験わずか三年。 名は吉田司ともうします。

まずは高田のりんごの話を聞いてください。
それはジュースのようにみずみずしく、シャキシャキとして
酸味と甘みのバランスが絶妙で、皮まで味がのっているりんご。
特産品が海産物の印象が強いこの三陸沿岸で、
これほど美味しいりんごがあることに衝撃を受けたのは、かの震災の年。

調べてみると、高田は東北の中でも温暖で、果樹園の多くは 
水はけの良い南向きの傾斜地が中心。更に日照時間が長く
寒暖差も穏やかで、雪もあまり降らないので霜が降りないことなど、
果樹生産にとって好条件が揃っていることに加え
「海の見えるりんご畑」という景観が全国の生産地を見ても 
非常に珍しいことも判明しました。
しかし、辿り着いたのは二つ目の衝撃。
震災当時、承継が決まっていた三十代以下の担い手は、
たった一人だけ という現実。 

話は遡って一三〇年ほど前、時は明治。高田のりんごの歴史は
農民ではなく、 出稼ぎの大工さんが宮城県から果樹の苗を
持ち帰ったことから始まります。
秋になると紀州のカツオ船が大船渡や釜石、気仙沼に寄港しており、
木箱で行商に行くと郷土のお土産として大変喜ばれたそうです。
 “りんごを売ったお金で、大晦日は家族揃って、腹いっぱい食べて笑って年を越そう”。
震災で再確認した“家族との他愛もない日常がどんなに幸せであるか”ということ。
つまり、高田のりんごのルーツには「家族みんなで暮らしていけるように」という願いが込められていたのです。 

 結びに。昨日まで所属していましたNPO法人LAMPをはじめ、
開業までお世話になった沢山の方々と、地域の皆々様へ。
先人が開いてきた“高田のりんご”という産業と文化をつなぎ、
先輩農家が築いた“地域が誇れる農産物”を進化させ
未来へ持続させていくことを目的に、農業仲間と共に進んでまいります。
 待っているのは、令和という厳しい時代。難儀なことは百も承知。
僭越ながらご先祖様の屋号を拝借し、米崎のりんご畑から
「イドバダ・アップル」本日開業いたします。
 応援いただけたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします。                    敬具                           令和三年四月一日                        イドバダ・アップル 代表    
                              吉田 司

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                       2021年4月1日 東海新報

…そして一夜明け、翌日の東海新報コラム「世迷言」より。

世迷言
令和3年4月2日付
 新年度が始まり皆様ご多忙のことと思うが、昨日の小紙3面はご覧いただけただろうか?陸前高田市で新たに「米崎りんご」農家として独立した吉田司さんが、開業のご挨拶として打った全面広告をである▼個人から1ページ丸々の広告を請け負ったのは、長くはないがそれほど短くもない小紙の歴史上初めてではないかと思う。日付が日付だっただけにエイプリルフールの上段と思われた方もいるかもしれないが、吉田さんは本気だ▼それにしても、独立の挨拶という大切な場面に小紙を使っていただいたことは、社としても感激であり、また非常にワクワクする試みだった▼現在、同市の(一社)トナリノの佐々木信秋さんが「デジタルバカ一代」として、NPO法人高田暮舎の越戸浩貴さんが「知ってほしい 気仙の空き家」として連載して下さっている。こうした若い執筆者による寄稿というのも、過去にあまりない事例である▼一般には新聞というメディアがもはや前時代的とみなされているにもかかわらず、30代~40代の読者がこの地方紙に利用価値を見出してくれていることがありがたい▼だがそれはあくまでも既存の読者層に向けた周知力を買っていただいているに過ぎないことも理解している▼地域の情報源として次の世代にも求め続けていただくために何が必要なのか、見極めていきたい。

                                以上


東海新報様には、お世話になった方が多いのもありますが、メディアを通じてアンサーをいただけることって本当に嬉しい。粋な演出ありがとうございました。

【告知】
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応援よろしくお願いいたします!

🍏ちなみに、開業当日のホワイトでちょっとブルーだった様子がこちら

頑張ります。



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