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オプション取引の理論を人事に応用してみる 前編

はじめに

オプション取引の理論を勉強し、実際に触ってみて、自分なりに検証してみた結果、オプション取引で活用されているリスクパラメーターの理論はビジネスにおいて非常に応用が効くのではないかという考えに至りました。

特に、人事評価の分野において、これまで説明が難しかった部分がベガ(その人の業務成果の振れ幅)、シータ(その人の残り社会人期間)、ロー(その人の業務価値と平均的な業務価値との乖離幅)という各パラメータで言語化できそうな気がしていて、深堀りする価値があると思います。

オプションの理論を当てはめてみる

オプションの価値は本質的価値と時間的価値の合計であり、その人への給与と見なすことができるでしょう。これを当てはめると、新卒などの実績は無いが今後に期待するような人物は、アウトオブマネーのオプション(時間的価値が価値の源泉)。既卒や実績を期待されるような人物はインザマネーのオプション(本質的な価値が価値の源泉)。そして、オプションの満期は日本なら定年退職といったところでしょうか。

IG証券より引用

デルタについての考察

オプションパラメータのうちのデルタは、本質的価値の変動に対する価値の変動量を表しています。人事に置き換えると実績です。インザマネーのオプションは本質的価値の増大に比例して価値が増大するのに対し、アウトオブマネーのオプションは時間的価値が本質的価値に置き換わっていくので、本質的な価値の増大がオプションの価値へと反映されにくいです。若手が実績を上げても評価されないと嘆く理由はここにある気がします。

日本経済新聞より引用

シータについての考察

オプションパラメータのうちの、シータは時間的価値の減少幅を表しており、満期が近づくほど急激に大きくなってきます。同じ業界未経験でも、新卒が優遇される理由はここにあると思います。

IG証券より引用

ベガについての考察

オプションパラメータのうちの、ベガは予想変動率の影響を表しています。少し不正確な表現ですが、ざっくり言うと当初の期待よりも上振れしそうなら、成果が出ていなくても大きくなります。新卒が優遇される理由のその2です。また若手が予想外の成果を出して大抜擢される理由もここにあります。

FXの深研究より引用

ローについての考察

オプションパラメータのうちの、ローは金利変動の影響の受けやすさを表しています。外部環境の変化への感度を表すパラメータなので、その職種に対する労働市場の相対的な評価の変化がどのくらい価値に影響を及ぼすのかがこれに該当すると考えられます。

おわりに

また別の機会に再検討しますが、今回の検討でわかったのは、時間と期待値を持っている新卒はシータとベガの恩恵を受けることで有利になっていることが分かります。ですので、新卒は時間が経過して時間的価値と期待値が剥げてくると、本質的価値で勝負しないといけなくなり、社内の競争や転職市場で苦労することになるのだと思います。

オプション理論ではこれらをヘッジする方法がありますので、いずれの機会に検討してみたいと思います。

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