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チーム5.0時代の幕開け

ここまで「Withコロナ時代の」というテーマで記事を書いてきましたが、もうそろそろ具体的な名称をつけて新しい時代を表現していく必要もあるのではないかと感じています。企業組織についてもコロナ初期にあったインフラ関係も落ち着いたりリモートワークも定着するなど混乱も落ち着き、新しいフェーズに入ったと感じています。そこで、とても良い区切りではないかと思い、過去から現在までを振り返り、主に日本社会を前提とした企業にみられるチーム(職場ととらえていただいてもOK)の在り方の変遷を時代とともに大きく5つに区分して辿ってみました。(このコンセプトは今月出版された「人事実務」にも寄稿させていただき紹介しています)

チーム5.0時代

1.組織のシフト①(チーム1.0~2.0時代)

高度成長期以降、物質的に豊かになることを目指し進んできた日本社会の発展に伴い、組織の中では明確なゴールに向かい全員で総力をあげていく「集団凝集性」を重んじ、報酬と罰の外発的な動機付け、訓練を中心に能力を高め、働く環境をつくってきました。そして、バブル崩壊以降、社会の様相が変わりはじめ、徐々に米国式のマネジメント手法が脚光を浴び、2000年以降成果主義が導入されるようになると、組織もフラット化していくようになります。この頃から、多くの組織で生産性と効率性を最優先に掲げ、一人一人の自律が求められる中、主体的に能力を高め、問題を解決し、仕事を完遂することが要求されるようになりました。職場の様子が変わり始めたのはこの成果主義が日本企業に導入され始めて間もない2004~2005年の頃と言われています。徐々に自分のことだけを考えて仕事をしていく人たちが増える中、職場の関係性もどんどん希薄化していきました。私語は厳禁。そんな無機質で窮屈な職場が増え始める中、やがてひとりひとりが孤立し、抱え込むことで精神を病んでしまうという心の問題が社会問題になり始めました。集団凝集性を大事にするチームから成果偏重型のフラット型チームへ。ここまでがチーム1.0~2.0時代への変遷です。

2.組織のシフト②(チーム3.0~4.0時代)

2010年代に入り、東日本大震災を頃から社会のモードが徐々に変化していきました。「つながり」や「絆」という言葉が社会的にもよく起用されるようになり、職場の関係性のあり方や仕事の仕方もそれに伴い見直されるようになっていったのです。また、この頃はビジネス環境も大きく変わり、経営層は「イノベーション」を経営課題に掲げ、現場には柔軟な連携や新しいアイデア、発想を生み出すことを求めていくようになりました。これまで生産性と効率性の追求を求められていた現場では、その要求にはなかなか応えきれず、試行錯誤するようになっていきます。さらに、2010年代後半は「働き方改革」を中心に、ひとりひとりの仕事と生活のバランスを見直し、多様な働き方を奨励しながら、仕事を通じて一人一人の幸福を実現しようという動きが起こってきました。チームのつながりだけでなく、一人一人の人生と仕事のあり方を包括的に考えていくことのできる経営が求められるようになっていったのです。この2010年代前半から後半へのシフトは「組織のための個」から「個のための組織」という「チーム3.0から4.0時代への移行」と言うことができるでしょう。

3.時代はチーム5.0時代へ

一方で、2015年に国連で採択されたSDGsをきっかけに、少しずつビジネスの目的が変化し始めます。地球環境の危機を背景に、ビジネスにおいてもあらゆる社会課題を包括的にとらえ、解決していく動きが全世界で始まります。2018年以降は、日本でもSDGsの推進が進み、社会課題解決を目的としたビジネス提案や新規事業を推進しようとする動きが加速していくようになりました。一方、現場では社会課題と言われてもどうしても身近にとらえることができず、現場のミッションをこなすので精一杯で、社会課題解決はスローガン化してしまうという企業も多く存在していました。そんな中、2020年に入り新型コロナの問題が立ち上がったというわけです。一時的な可能性があるとはいえ、これまでの社会の前提が崩れつつあり、全世界で再構築を求められる今、もはや最も大きな社会課題とは新しい社会を創造することなのではないでしょうか。そのような意味で、このような環境下であっても一人一人が心身ともに豊かに暮らすことのできる新しい社会をどのように作り、未来につなげるか、そのために自分たちに何ができるかということをひとりひとりが考えなくてはならない時代に突入したと言えます。それに伴う組織のシフトこそチーム5.0であり、まさにここからその探求が始まろうとしているわけです。

4.OSのねじれ現象

ここまでまとめてみると面白いことがわかります。

一つは、とてもゆっくりではありますが着実に日本の企業組織は進化を遂げてきているということ。徐々に組織の中にある個人という関係性から、個人が自立的になり、組織とある意味対等の関係性へと移行し、組織とともに自律的かつ生命的な存在へと発展を遂げようとしているのです。

もう一つ。皆さんの職場をこの図に当てはめてみてください。そうすると、「うちの会社は会社全体ではチーム4.0時代のOSを志向している一方、職場を見るとチーム2.0時代でマネジメントされている」といったように、会社全体でスローガンとされているOSと、現場のマネジメントのOSに矛盾が生じていることがあります。

「うちはそんなにきれいに進んでないよ」

これが実態だと思います。ちなみに、チーム4.0はチーム2.0を包含しているため、本来このOSで動いていればチーム4.0に沿った2.0を検討可能です。(すべてのOSはそれ以前のOSを含んで超えてきているという前提です)しかし、チーム2.0で止まっているマネジメントは3.0も4.0も知らないため、大きな時代錯誤となってしまいます。この組織の発展は社会の変化とも連動していると考えることができ、3.0あるいは4.0の前提となる社会を若年の頃から過ごしてきた層からすると、入社後にカルチャーショックを受けるがごとくモチベーションを落としていく様子をうかがうことがあります。実はこのねじれ現象こそ多くの若手社員のやる気を削いだり、流出を招いている元凶だったりしているのです。

なぜねじれるのか、そして何がOSを発展させるのかについてはまた記事にしていきたいと思います。まずこの時代を表現するキーワードと組織のマネジメントのOSを定義して次の時代を考えたいということでまとめてみています。

皆さんの組織と職場はどのOSで動こうとしていますか?

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