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人種で語れてしまった、南アフリカでの2週間


大学1年生の夏、父と2人で、南アフリカに住んでいる叔母夫婦を訪ねた。

もう4年前のことだけど、人種差別について考えるとき、あのビビットな経験がよみがえってくる。


人種の話題はタブー...?

南アフリカは、ヨーロッパの陰鬱な冬から逃避したい西洋人たちにとっては人気の旅行先らしいけど、日本人にとってはあまりなじみがないだろう。

何しろ遠い。

行きも帰りも、寝ても覚めてもインド洋上空で、気が狂うかと思った。
(それでも、もう一度いきたいと思えるらい、いい国だったけど。)

出発前に南アフリカについて知っていたことと言えば、アパルトヘイトとネルソン・マンデラくらいだった。
だけど人種隔離政策は負の遺産、いまは平等なレインボーネーションを謳っているのだから、人種についてはタブー、絶対に触れないようにしなければ、と肝に銘じていた。


なのに、


空港に迎えにきてくれた叔母夫婦の車が高速にのってすぐ、
ただっぴろい地平線と濃い青空に感心しているときだった。


父が、


「それでこの国の黒人と白人はどうなの?」と切り出した。


いや、ちょっとまって!?

父は良識がある人だと思っていたのに。
開口一番、肌の色なんかで区別してものを聞くなんて、差別的なことを!

アフリカの政治の研究をしている、助手席の叔父は、
この父の発言になんて失望したことだろう、
なんて言ってたしなめられるんだろう。

旅のスタートとして最悪だ。
私はめっちゃ焦った。


ところが、

叔父は、とうとうと解説を始めた。

白人は○○で~、黒人は○○、と。



???????

あれ?


人種でものを語って、いいの??



差別から生まれた格差はなくならない


それは、1日、2日と過ごすうちにだんだんとわかってきた。
白人と黒人と褐色の人では、「違う」のだ。

肌の色だけじゃない。

生活圏が、文化が、言語が、社会階層が。

差別を合法化する法律がなくなって、
平等へと歩んでいるんだから、もっとまじりあって表面上だけでも仲良くやっているものだと思っていた。


そんなの、過去と現在の連続性を認識できていない私の空想だった。


この道の右側の地区は白人が住んでて、左側の地区には黒人が住んでるんだよ、と叔母が教えてくれた。

ワイナリーのオーナーは白人で、
ブドウ畑で作業しているのは黒人達だった。

私たちが行くようなレストランのお客さんはみんな白人で、
ウェイターさんはカラードだった。

街角には黒人しかいないレストランがあって、
通り過ぎたタウンシップ(旧黒人居住区)はスラムのようだった。


わたしってつくづく馬鹿だな、と思った。

歴史の教科書に載っていることは、全部おわったことだと思っているところがある。

よく考えれば、そんなはずないのだ。


法律上の差別が終わっても、差別によって生まれてしまった格差は、1世代、2世代回ったところで変わりようがない。
ましてやアパルトヘイトが終わったのは、私が生まれるちょっと前の話だ。


貧困もお金持ちも連鎖する。

ワイナリー経営者の子は、親から肌の色だけじゃなく、ワイナリーも受け継ぐ。

貧しい人は教育が受けられないから、いい職には就けず、子供ができても教育を受けさせる余裕なんてない。

だから黒人系の名前の人は、名前だけで就活で落とされやすくなる。


ただの肌の色の違いだったものが、差別を通して本当の違いになってしまう。
それが偏見を生み、さらなる違いにつながっていく。


それはなかなか覆せない。


だから語れてしまうのだ、肌の色で。


まだ肌の色が主語になる世界で

Trevor Noah という、南ア出身で、アメリカで超売れているコメディストがいる。
(アクセントの物まねが最高だからYoutubeで見てほしい。)

彼がギグのなかで、「南アの人は人種についてオープンに語る、アメリカ人もそうしたほうがいい」と言っていた。

南アフリカを経験した今なら、それはよくわかる。


Black Lives Matter に対して、All Lives Matter だといい返す人がいる。
耳障りはいいし、正論ではあるけど、それは黒人差別の事実をぼやかしている。

肌の色は本来、その人について何も規定しないはずだから、
肌の色が主語にならない世界が理想だとは思うけど

人種差別・格差が残っている以上、

南アフリカに行く前の私のようにこの話題を避けるのではなく、

問題点を認識するためにも
まだまだBlack, White, Yellowと、肌の色を主語にして語っていく必要があるのだと思う。


ちなみに、南アフリカはめちゃくちゃいい国だった。


私が行ったのはケープタウン周辺だったけど、

フルーツはフレッシュで、料理はユニークな野菜を使っていて面白いけど西洋風で口にあうし、ワインは安くて種類豊富だ。

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観光資源はたくさんあって、
野生のペンギン、鯨、ダチョウ、サルなんかに間近で会えるし、

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数あるワイナリーは、差別化を図るためにそれぞれの売りがあって、何か所いっても楽しめる。

料理にあったワインを楽しめるレストランが併設されているのはもちろん、
アヒルの行進がみられるところ、チーズが有名なところ、スパがあるところ、泊まれるところなんかがあって、ちいさなテーマパークみたいだった。


現地の人たちは穏やかでオープンで、見知らぬ外国人の私たちによく話しかけてくれた。


風景は見たことのない種類だった。

地形はアフリカ!って感じの雄大さがあって、建物は中世ヨーロッパ風だけど彩りが豊かで、植生は地中海みたいなのだ。

頭がバグってしまいそうだったけど、これがけっこう癖になる。

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(これ全部ワイナリーで📷)


プレゼンテーション能力が高くて、お店も商品も、なんでも見た目はオシャレなんだけど、
叔母曰く、内実を伴わないからトラブルがあるとにっちもさっちもいかなくなるらしい。

我々の滞在中に泊まったB&Bで、二階建ての一階なのに雨漏りがして、電気と水道が止まって、ドアノブが取れるなんていうこともあった。(上の階の一般住人がお風呂のお湯を止め忘れて水があふれたらしくて、バスローブ姿で謝りに来た。彼と親しいらしいB&Bのオーナーには「You can punch him in the face!」って言われた。コメディーかと思った。)



治安の悪い国ではあるし、ここに住むのは不便そうだけど、

観光に行くなら心底おすすめしたい。



インド洋はちょっと、広すぎるけど。



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