FinancesOnlineというビジネスソフトウェアの評価サービス(日本国内でいえばITReviewやボクシルのようなサービス)があるのですが、たまたま読んだ120のセールス統計に関する記事が大変素晴らしいものでした。
120項目、営業に関する各種重要なデータが総まとめされていました。引用されているのは、Salesforce、hubspot、LinkedIn、Adobe、outreach、Gongといった一流のセールステック企業や、セールスコンサルティング/統計会社が発表しているものです。すべてを紹介できれば望ましいのですが、時間の限りもございますので、特に印象に残るセールス統計データに関して、引用とともにコメントをします。これで法人営業に関する統計データの全体像をインプットすることができるはずです。
【新型コロナウイルス】
営業データ①:デジタル販売(ビデオ会議)はトレンドに
日系大手企業様においてもzoomやteamsを活用したビデオ会議が当たり前になっている印象があります。
営業データ②:コロナ禍で最大の課題は営業マネージャーと営業担当の断絶
2020年は、新型コロナウイルスによるリモートワークの強制という社会背景があります。これが起因して、営業マネージャーが営業担当と断絶される事象が発生しているとのことです。
【営業マネジメント】
営業データ③:企業のセールスイネーブルメントの取り組みは、トレーニング (68.1%)、販売ツール整備 (58.5%)、コンテンツ作成 (52%)、コーチング (50.9%)、販売プロセスの改善 (49.6%)
営業組織のレベルを高めるセールスイネーブルメントが流行の兆しを見せています。取り組み内容は、トレーニングや営業ツール導入、営業コンテンツ作成といった後方サポートが中心です。
営業データ④:営業マネージャーの 65% は、自分たちにとって最大の課題は、仕事を遂行するための時間とリソースの不足
営業マネージャーはグローバルな統計でもリソース不足を大きな課題として抱えています。日本企業においても、そもそものマネージャーが不足しており、慢性的に業務過多になっている印象です。セールスイネーブルメントや、セールスツール導入など営業投資の取り組みで楽をさせるべきは、実はマネージャーなのかもしれません。
営業データ⑤:営業担当は、見込み客との会話に時間を使えていない
よくセールステック(営業DX)系のツールのセールストークの中でも聞くのですが、営業担当は実際には顧客と対話する以外のデスクワークに時間を取られていて、それが商談を進めるうえでの時間毀損になっている状態になりがちです。
営業データ⑥:営業の最優先事項は「価値を伝える能力の向上」
営業的に投資をしなければならない、優先度の高いものはなにか?は私も知りたかったのですが、営業生産性を高めることより更に重要なのは「価値を伝える能力の向上」というデータです。
これは納得感があり、どんなに生産性を高めたところで、顧客への案内方法や伝え方に至らないところがあれば顧客を動かすことは出来ません。
営業データ⑦:企業の購入プロセスには、約 6 ~ 10 人の意思決定者が関与する
こちらの書籍でも同じ統計データを拝見したのですが、法人取引(つまりBtoBの法人営業)で難しいポイントは、顧客が1人ではなく複数人からなる組織であるということです。
誰が社内で決裁を取りにいくのか、どう会社内で納得させるプレゼンを顧客ができるのか、ということが重要になります。
営業担当としては顧客は1人ではなく複数人の合意を得なければ案件が進まないことを念頭に動かなくてはなりません。
営業データ⑧:47% の企業が、営業チームとマーケティングチームでうまく連携している
THE MODELのムーブメントもありましたが、BtoB取引においてはマーケティングからセールスに到るまでの顧客情報の連携は鍵になります。
【営業のスキル】
営業データ⑨:最初の電話で最低 11 問の質問をすると、販売の成功率が 74% 向上
「最低11問」ですから、営業担当もいろいろ頭を使いながら質問しなければなりません。(場当たり的に質問するだけでは11質問も出来ませんので・・・)
ですから、商談前に色々と顧客のことを考え、対話の中でも顧客の話に真剣を傾けていて、それが前提で11問もの質問を繰り出せるため、結果として成功確率が高まる、と解釈しました。
営業データ⑩:信頼性 (47%) と応答性 (44%) が、セールスに求められる最も重要な特性
どんな営業が優秀なのか?という問いに対して、顧客から求められるのはどうやら信頼性と応答性のようです。信頼性はわかるのですが、応答性(レスポンスの早さなど)が重要だというのは意外でした。
テキパキしている、といいますか、応答が早いというのは日頃の業務を素早くこなし余裕のある証拠なので、営業とはそうあるべきなのでしょう。
営業データ⑪:電話(インサイドセールス)のコツは、提供価値に焦点を当て、顧客と協力し、市場の洞察を提供して、顧客のニーズを理解すること
先ほどの「信頼性」とは、営業段階で顧客に提供できる価値や、新しい洞察を会話の中で提供できることと解釈できます。顧客と協力して…というのは、顧客と同じ目線に立って、顧客社内の問題解決に向けて一緒に考えていくような姿勢のことでしょう。まさにインサイド(中にいる)セールスです。
営業データ⑫:契約をクロージングする際の苦労ポイントは、低コスト競合との競合 (31%)、価値提案ポジショニング (17%)、「決定なし」を回避する現状維持との闘い (17%)
営業データ⑬:成功している営業は、会話中に協力的な言葉を活用する。つまり「私」の代わりに「私たち」の言葉を使う
法人営業においては、購買において顧客も社内で稟議をあげるための提案をしなければなりません。その点で、営業が案件を成約させるというより、営業の先にいる顧客が個人として、会社組織の中で提案を決めてくるというのが正確な表現です。そのため私、というよりは営業と顧客の「私たち」という主語で話を進めたほうがたしかに成約率は高いのだと思います。
【顧客の営業に対するニーズ】
営業データ⑭:消費者の 79% は、ビジネスに価値を付加できる「信頼できるアドバイザー」としての営業やり取りを好む
私の周囲にいる優秀な営業マン誰もが口を揃えて言うのは「優れた営業は医者である」と聞きます。これは、処方箋をわたすように信頼できる知見をもとにした提案を行う医者の仕事のように、営業も仕事をするべきだという価値観を皆が持っているからだそうです。顧客の目線からも、良い提案をくれる優秀な営業マンのほうが好ましいですから。
営業データ⑮:営業担当は、顧客のニーズに耳を傾ける (69%)、強引にならない (61%)、製品に関する関連情報を提供する (61%)べき
営業データ⑯:消費者の 71% は、購入プロセスの早い段階で営業担当者からの連絡を期待している
消費者というのはBtoBにおいては企業になりますが、なにか課題解決をするためにツールやソリューションを探すうえで、早い段階からフォローアップしてくれると助かる、という話なのでしょう。
【最新データでわかるBtoB取引のまとめ】
新型コロナウイルスによってリモートワークが加速し、ビデオ会議によるWEB商談も加速したが、それにより営業マネージャーが営業担当の状況をマネジメントしにくい状況が起きている。
営業マネージャーはどの会社も慢性的なリソース不足に陥っているため、リモートワーク環境の中では更にマネジメント不全が起きている。また営業担当も見込み顧客との会話に十分な時間を割くことが出来ていない。
しかし、顧客の決裁のハードルは高まっており、法人取引における複数人の調整を行う高いスキルが必要になる。購買の各種関係者に、価値を伝える能力を営業チーム全体で高めていかなくてはいけない。
具体的には、正しく質問をする、市場の洞察/示唆を与える、「私たち」と顧客を巻き込むことができるといった営業のスキルが必要。それによって信頼力や応答性(レスポンス力)を高めなければならない。
うまく自社の価値を伝えることが出来なければ、安いコストの競合に流れる、そもそも購買しないという選択に見込み顧客が陥ってしまう。
営業の姿勢としては、購買の意思決定の後半フェーズよりも、前半フェーズから寄り添うのが好ましい。早い段階から顧客の声に耳を傾け、強引になることをせずに、製品に関連する役に立つ情報を提供するべき。「信頼できる事業アドバイザー」として関係を構築する必要がある。
おわりに
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