「新たな命を吹き込む」 H 〔アッシュ〕 ・ 井原 愛梨 / 山本 小夏
OPEN Magazine "Based in Nakameguro"では、中目黒エリアに拠点を構える店舗や人を特集し、街の魅力を繋いでいきます。
今回は、2005年にオープンしたヴィンテージセレクトショップ・H 〔アッシュ〕 。
※ TOP写真 左:井原さん / 右:山本さん
メインは古着ですが、古着を使用したアップサイクルブランドもお店のシグネチャーライン。ヴィンテージアイテムの他、古着をベースにしたオリジナル商品、国内外でセレクトしたアクセサリーまで、幅広いアイテムを展開されています。
Tシャツ、スウェット、デニム、ミリタリーといった普遍的なアイテムに一手間を加えた"H(アッシュ)らしい"オリジナルアイテムが人気です。こだわりのリメイクアイテムは全て、企画デザイン・山本さんが担当し、製作されています。
今回は企画デザイン・山本さんとバイヤー・井原さんに、リメイクの魅力やまもなく開業20周年を迎えるH(アッシュ)の今について、そして今後目指すお店の姿についてもお話いただきました。
ガレージではなく、お店に。
-- H はまもなく開業20周年を迎えられるそうですね。
山本さん:そうなんです。来年2025年の春に開業20周年を迎えます。開業当初と比べると、周辺地域の景観が随分変わったと聞いています。今よりも閑静な住宅街だったそうなので、ここに来るまでに道に迷われるお客様も多かったんだとか。
-- なるほど。H は古着屋とは思えない開放的な空間が印象的ですね。
井原さん:この物件は一階と二階は店舗なのですが、もともとオーナーがガレージとして使用する予定だったんです。実際にガレージを作ろうとしていた際に「この物件をもっと有効活用できないか」と思ったそうで。それで思いきってガレージではなく店舗にしたのがこのお店ができたきっかけなんです。
大人が通える古着屋。
-- やはり古着をベースにしたリメイクアイテムが人気なのでしょうか。
山本さん:そうですね。古着はもちろんのこと、古着を使ったリメイクアイテムも人気で、H(アッシュ)のシグネチャー商品になります。厳選して仕入れた古着をリメイクし、H(アッシュ)らしい商品にアップデートさせています。中目黒にも古着屋は沢山ありますが、これだけリメイクアイテムを取り扱っているのはうちだけかもしれません。
-- では、リメイクアイテムの魅力について教えてください。
山本さん:H(アッシュ)は、アメリカからの仕入れがメインになりますが、日本人の体型に合わない海外規格のサイズでも、テキスタイルやディテールが可愛かったりするものがすごく多くて。そういったアイテムに手を加えて、私たちが着用しやすいように作り変えています。ヴィンテージファブリック〔 長い年月による独特の風合いが特徴のヴィンテージ生地 〕を使うことも多いので、唯一無二の一点ものになります。
H(アッシュ)の展開するリメイクアイテムはアップサイクルという点でも、社会貢献に繋がっている点で魅力の一つだと思っています。また、時流を組んだデザインにして今っぽくしてみたり、自由自在に工夫できるのもリメイクの魅力ですね。
-- リメイクの可能性を感じますね。では、普段このお店にはどのような方がいらっしゃいますか。
井原さん:ターゲットは20-30代なのですが、若い学生の方から50-60代の方まで幅広くご来店いただけている印象です。開業当初より「大人が通える古着屋」を目指していたのですが、今では十分体現できているように思います。「古着って若い時には着ていたけど、大人になるにつれて着なくなった」なんて方も多いんですよね。リメイクを通して大人の方でも着やすい服をみなさんにお届けできたらと思っています。
H は繁華街から外れたエリアにあるので、地域の方のご来店も多くて。お買い物帰りに顔を出してくださる主婦層の方も結構いらっしゃるんです。挨拶だけでも私たちはとても嬉しいので大歓迎です。
-- それは地域に根差したお店になっている証拠ですね。幅広い方々のご来店がある分、高いコミュニケーション能力も必要になってくるかと思います。接客面で心掛けていることがあれば教えてください。
井原さん:心掛けていることでいえば、お客様に「喜んで楽しんで帰っていただく」という意識です。H(アッシュ)では様々なテイストの古着を取り扱っているので、その中で宝探しのようにアイテムを探す時間を楽しんでいただきたくて。
会話を通して、お客様がお気に入りのアイテムに出会えるように。そのお手伝いができたら嬉しく思います。お話が好きなスタッフも多いので、お買い物はもちろんですが、H(アッシュ)の空間そのものも楽しんでいただけると嬉しいですね。
中目黒は、粋な下町。
-- 中目黒という地域にどのような印象をお持ちですか?
井原さん:「おしゃれな街、中目黒」というよりかは、人の暮らしが身近にある「下町、中目黒」という印象を持っています。元々はアパレルショップも少なくて、飲食店やスキンケアショップも今ほど充実していなかったんですよね。
下町のどこか懐かしい雰囲気と、目黒川沿いの洗練された雰囲気が合わさって、中目黒という地域の心地良さが生まれているように感じています。
-- では、今後この地域がどうなっていって欲しいと思いますか。
井原さん:そうですね。中目黒では桜の時期に提灯を吊るしたり、ライトアップをしたりしていますが、それらは昔から住む町会や商店街、地域の方々が採算度外視で街のためにやっていることだったりするらしくて。中目黒は若い方が楽しめる素敵なお店もありつつ、土着的要素もある歴史豊かな地域です。お祭りやイベントも多いので、そういった行事を中目黒全体で盛り上げていければと思っています。
誰かの思い出の場に
-- 最後に、今後展望について教えてください。
井原さん:H ができることで言えば「この場に在り続けること」だと思いました。それがきっと誰かのためになるのではないかと。古着と縁遠くなってしまった方々に、また新たな古着の魅力を届けていきたいです。H が誰かの思い出の場になれれば嬉しいですね。これからも地域に根差すお店を目指して、この可能性しかない中目黒の変化をこの場から見届けていけたらと思っています。
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