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Saori Ogataテキストまとめ

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民話、雑記、歌詞など。
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2021年7月の記事一覧

御種の松【岩手の伝説⑨】

御種の松【岩手の伝説⑨】

参考文献「いさわの民話と伝説」 編:胆沢町公民館

今を去る三百七、八十年前、当時の領主によって御種松(おたねまつ)が植えられ、その善政でわが村も、いたる所に人家が見られるようになりました。

しかし、そこここの林という林は、用材や薪炭材(しんたんざい)として、

頻りに(しきりに)伐採されましたが、植林はしなかったので、果ては切株さえ掘り起こされるようになり、再び蝦夷時代の草原を思わせる有様にな

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民話前九年の役【岩手の伝説⑧】

民話前九年の役【岩手の伝説⑧】

参考文献「いさわの民話と伝説」 編:胆沢町公民館

※前九年の役・・・平安時代後期の、陸奥国(東北地方)で起こった戦い。永承六年から康平五年まで。源頼義らの軍が、陸奥国の豪族安倍氏を滅ぼした。名称や期間は諸説あり、奥州十二年合戦とも呼ばれる。様々な伝承が残る有名な戦い。

安倍の貞任をして落城などありえないと、豪語せしめた衣川の館は、なるほど堅固なものでありました。

※安倍の貞任・・・あべのさだ

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タデ沼の主【岩手の伝説⑦】

タデ沼の主【岩手の伝説⑦】

参考文献「いさわの民話と伝説」 編:胆沢町公民館

言い傳えによると昔、蜂谷の人達は、水沢の町に出ることを非常に恐れていたといわれております。

その訳は、今のところ、どういう理由によってか明らかにされてはおりません。

ですから生活必需品を買うためとか、生産品の販売のためには、水沢に出る道より二倍も時間のかかる難所の永岡の道路を通って、金ヶ崎の町に出たということです。

その道は、尿前川を太郎左

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駒ヶ嶽のお駒様【岩手の伝説⑥】

駒ヶ嶽のお駒様【岩手の伝説⑥】

参考文献「いさわの民話と伝説」 編:胆沢町公民館

昔あるところに、山に入って薪を切り、それを町に行って売り、米塩に換えて、老母と暮らしている男がありました。

競争相手もあって、薪はいつもうまく売れるという訳にはいきませんでした。

時には何本か残ることもありました。

そんな時は、家の近くの川に流してやりました。

龍宮の乙姫様も、さぞ薪に困っているだろうと思っての仕業でした。

或る日のこと

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