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それでもやはり、意識せざるをえない(小野美由紀のマガジン)

作家小野美由紀によるエッセイマガジンです。タイトル通り "それでもやはり、意識せざるをえない” 物事について、月に5-10本程度配信します。日々のエッセイ、恋愛、性愛、家族、また… もっと読む
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2018年6月の記事一覧

あれの先端に星、外科医が上手は嘘です

あれの先端に星、外科医が上手は嘘です

 お腹が空きすぎてドトールで北海道ソフトクリームを無心で舐め狂っていたら、向かいの席の人に「食べ方がナイスですね」と言われてナンパされる。facebookを見たら共通の友達が50人も居たので食事をすることに。

 彼は飲食店の経営者だったので、食べログへの呪詛やら、良い店の見分け方やらを色々聞いた後で、途中から「テレビに出る・出ない」の話に。

「テレビってね、『人生のピーク』を人工的に作り出して

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今宵も服懺悔

今宵も服懺悔

3月某日 
 服屋の前を通りかかったら90年代のものすごく瀟洒なマルニと目が合ってしまったので思わずお買い上げ。

 服さえ買わなければ私の人生のQOLはもう少し高いような気もするが、なぜこんなにも浴びるように服を買ってしまうのだろう。何かの呪いか。いろいろ考えて言い訳するも、最終的には「ま、あと100年後には死ぬんだしいいよね」と人生のあらゆることの切り札となる言い訳を0.5秒で持ち出してレジへ

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短編 ピンクの象が窓から

短編 ピンクの象が窓から

 ピンクの象が窓からじいっとこちらを見つめているので私は負けじと彼を見つめ返す。
 彼はゼラチン質のねばねばした何かでできているので、窓枠(もう何年も、誰も塗り替えていない)にベタベタとくっついてなかなか離れそうにない。私は手を伸ばし、窓のノブを押し上げて窓を開け、ガラス越しのそいつに触ろうと試みるものの、背の低い私の手は頭のはるか上のノブまで届かず失敗する。そいつは私がそうしている合間にも絶え間

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分からない事しかないの世の中はだからおはじき積むの夜半に

分からない事しかないの世の中はだからおはじき積むの夜半に

6月11日

「群像」から随筆の原稿を頼まれたが、エッセイと随筆の違いがわからぬ。

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有名になりたい!という欲望

有名になりたい!という欲望

新潮社の文芸編集部の編集者さんに連絡をいただき、lakaguでお茶をする。
小説を褒めていただき大変恐縮。

新潮社さんに関しては、ずっとずっと前、Rolaという雑誌でライターをやらせていただいたことがあるが、その時手がけた小説家のAさんと歌手のOさんの対談の取材現場に、Aさんをご担当されている文芸編集部の編集者さんが同席していた。

「ザ・編集者」って感じの迫力のある年配の女性で、ド派手なアフリ

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創作は「あなたも私も知らないこと」を書く行為である

創作は「あなたも私も知らないこと」を書く行為である

安田弘之先生に池袋で会う。
昨日編集者さんに送ったばかりだという、「ちひろさん」の最新話の原稿のコピーを見せていただく。単行本で見るのと違って、大きなサイズで見るとやっぱり迫力がある。
あるシーンの一枚絵で、鳥肌がブワアッと立った。

先生は「毎回すごく苦しんで書いているんだよ」と言う。

「何描くか、描きはじめる前に決めてないから」って。
先生は毎回、頭の後ろの空間にある巨大な沼から、何かを引き

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