作家小野美由紀によるエッセイマガジンです。タイトル通り "それでもやはり、意識せざるをえない” 物事について、月に5-10本程度配信します。日々のエッセイ、恋愛、性愛、家族、また…
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2018年6月の記事一覧
短編 ピンクの象が窓から
ピンクの象が窓からじいっとこちらを見つめているので私は負けじと彼を見つめ返す。
彼はゼラチン質のねばねばした何かでできているので、窓枠(もう何年も、誰も塗り替えていない)にベタベタとくっついてなかなか離れそうにない。私は手を伸ばし、窓のノブを押し上げて窓を開け、ガラス越しのそいつに触ろうと試みるものの、背の低い私の手は頭のはるか上のノブまで届かず失敗する。そいつは私がそうしている合間にも絶え間
有名になりたい!という欲望
新潮社の文芸編集部の編集者さんに連絡をいただき、lakaguでお茶をする。
小説を褒めていただき大変恐縮。
新潮社さんに関しては、ずっとずっと前、Rolaという雑誌でライターをやらせていただいたことがあるが、その時手がけた小説家のAさんと歌手のOさんの対談の取材現場に、Aさんをご担当されている文芸編集部の編集者さんが同席していた。
「ザ・編集者」って感じの迫力のある年配の女性で、ド派手なアフリ
創作は「あなたも私も知らないこと」を書く行為である
安田弘之先生に池袋で会う。
昨日編集者さんに送ったばかりだという、「ちひろさん」の最新話の原稿のコピーを見せていただく。単行本で見るのと違って、大きなサイズで見るとやっぱり迫力がある。
あるシーンの一枚絵で、鳥肌がブワアッと立った。
先生は「毎回すごく苦しんで書いているんだよ」と言う。
「何描くか、描きはじめる前に決めてないから」って。
先生は毎回、頭の後ろの空間にある巨大な沼から、何かを引き