毎年20万円自腹切ってまで、その理由

そのひとの話、衝撃的でした

京都の南部に、とある公共的施設がありまして、その中に大きな池を作って様々な植物を植え、以前そこにあった自然の姿を再現させているボランティアの方から偶然その話を聞きました。

その池は、昔そのすぐ近くにもっともっと大きな湖があったのですが、干拓されたから、ありし日の湖のミニチュア版をくだんの公共施設内の空地に作ったものです。ミニチュア版といってもけっこう大きな池です。作ったからには手入れが必要で、それには道具とか電気とか井戸とか小屋とかいろんなものが要り、そのための費用を上述のボランティアさん当人が、自分の個人のお財布から毎年出していると言うんです。しかもその金額年間20万円!

なぜ??なぜあなた個人が出費しなければならないの?

と私が尋ねたらボランティアさんの顔は急に曇り、小さな声で、
「もしお金のはなしを切り出すと、すべての事がまったく動かなくなってしまうから、自分で出すしかないんです・・・」と吐露しました。

つまりこうです、
公共的施設の目的は、作った池の用途とはまったく別のことを研究している機関なのです。しかも公営の施設だから、最初っから池に関する予算は出す根拠が無いです。

ただ空いた場所だけあったので「自由にどうぞ」と、そこの使用は公共施設側が理解してくれて許可してくれた。だからそこにミニチュア版の池を作り、井戸を掘って水を流し、草刈や池掃除や植物の世話をして、訪問者に池の歴史やここ特産の植物や動物の解説をし、いろんな学校などが見学や学習にそこを利用しに来るようになった。

現在ここはかなり学術的にも評価が高い場所にもなっているようです。私と同日にそこを訪れた方々はその道の研究者も複数混じっていました。ただどこにもお金を拠出する予算の出どころが無いのが現状というはなし。
それを課題だと言ったとしたら「・・・とりあえず活動休止しましょう」になってしまうことは火を見るより明らか。その後にっちもさっちも活動は動けない。そうなるのだそうです。だから個人で毎年20万円の持ち出しに。。

この方は、活動最初の頃からそうなるだろうことは分かっていたらしいです。それでも進んで行ったということはいったいどういうことでしょう?

ボランティア活動って、実のところ多かれ少なかれ手弁当以上の自腹は出るんです!

その自腹を切っても「やる」と決心する根拠は「それにやり甲斐を見つけてしまったから」に他ならないと私は思います。

それにしても毎年20万円もかけて・・・と思うかもしれませんので、このように考えてみたら、なーんとなくわかるかも、と思って自分の例を書いてみました。

私自身は海外旅行が大好きです。妻もそれが好きなので、毎年東南アジア方面に出かけて行きます。観光地に行くことも少しはありますが、それより現地のガイドの人や、ホテルスタッフ、レストランの人なんかと話するのが楽しみなんです。それに街に出て現地の人が何しているのか観察するのも好きです。そうやっていると文化の違いが見えてきて、こんな発想!日本では気づかなかったな!なんて気がついてひとり喜んでいます。そのうち海外で友人ができないかな、と思います。

そういう旅行が楽しくて楽しくてたまらないから、毎年夫婦で30万円ぐらいかけて10日ぐらい東南アジアに出かけて行くのですが、その費用はとうぜん自己負担です。30万円かけてもそれをするのが楽しくて仕方がないので、そのぐらい投資しても構わないと、何の疑問も抱かずにそうしているわけです。

おそらく、くだんの池を作って手入れしているボランティアさんも、海外旅行じゃないけど、その活動自体に似たような期待を抱いてそうしているのではなかろうか?と私は想像しています。それをやりたくてたまらない!と思ってしまった以上、何がどうあれ今のチャンスをみすみす逃す手は無い!たとえ自腹を切ってでも!と決心してしまった。こういう寸法です。

私はボランティアはそうするべきだ、なんて思いません。出来ることなら寄付とか助成金や入場料なんかの収入で運営できるように持っていくのが良いと思います。ただ、そんなこと待っていられない、という実情はかなり高い確率でそれぞれのボランティア活動につきまとうお金と時間の間の課題になってしまう、そういう事情も実際あります。特にボランティア活動始動後はしばらくそんなになる可能性は大きいです。

私はというと地元の小学校の「総合的な学習」という授業の企画や実行計画のボランティア活動をやっています。先生が教えられる範囲を超えるような専門のところをボランティアで子ども達に説明するのが仕事?という格好ですが、ここもボランティアへの謝礼予算がありません。「そういう授業支援は無償の奉仕活動で地域の方にやってもらいなさい」というお上からのお達しがあるから、という事情があるらしいです。だから私自身も20万円よりずっと少ないですが持ち出ししています。しかしそうしてでも子ども達が興味を持てるようにな授業にしたいです。お茶を濁すんじゃなくて。先生方は恐縮顔ですが・・・。

きのう、いつも日課の犬の散歩をしていたら、公園で遊んでいた子ども二人が後ろから駆け寄ってきて「あの~・・・こんにちは」って言う声が聞こえました。私が振り向いたら総合的な学習の授業をしているクラスの子ども達でした。
その子が「また来月もよろしくお願いします」って言って微笑んでいる!っていう光景に出くわしました。まさに犬も歩けば・・・状態。

こんな目に遭うと、ものすごくうれしいです。海外で異文化に出会ったときはまた違う楽しさというか、やり甲斐がそこに出来つつあるのが分かる瞬間なのですね!
だからなおさら「お金のことは二の次でいいや」と思う気持ちが膨らんでしまうのですが、それで万事うまく行くほど甘くはありません。別のリスクがあるんです。

ボランティア活動は、はまるとやり甲斐が膨らみますが、実は扱いが難しいものだと私は実感しました。
明日はそのことを書きます。

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