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冬こそ昆虫観察シーズン!特に水生生物の世界は

冬に虫は出て来ない!は、実は勘違い。卵で冬を越す虫は多いけど、幼虫や親虫で寒い冬を越冬する虫も多いんです。人間には少し寒いかもしれないけど、寒さが幸いして虫の動きも鈍いから、観察するときに虫はじっとしてくれるから虫の体のディテールを見る絶好の機会なのです。

そうは言っても寒い冬は草原や森をあるけば虫の方から飛び出してくることが無いので、虫が隠れていそうな場所を探って探し出さなければなりません。昨日に小川や池での水生昆虫観察会をやったので、12月の水生生物観察はこのような感じです!という見本になればいいなと思い、その様子を記事化しました。

今回行った観察会は、雨が降らないとほんの少ししか水が流れていないような山里から浸み出しているような細い小川と、その水を引いて作った子供用プールぐらいの大きさの人口の池です。地面を掘って池を作ったのが今から5年前。最近ようやくトンボの幼虫のヤゴやオタマジャクシが見つかるようになりましたが、子どもが1日かけて生き物を集めても数種類が見つかる程度だったので、ここで生物観察をやるのはちょっと難しいのかと思っていましたが、思い切って大学で生物学を教えている先生の協力をいただいて、どんな種類の生き物がいるか、どんなところに目をつければ生き物が見つけられるのか、そのテクニックを伝授してもらいました。

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ちなみに捕獲に使った道具は、台所用のザル、バケツ、100均で売っている白いプラスチックのトレー、柄付の魚を捕る手網(タモ網とも言います。ホームセンターで1000円ぐらいで売っている)、それと素手。スポイトやピンセット、虫メガネとか。
とても手軽に捕獲や観察ができます。

冬の水生生物捕獲のテクニック

川や池の生物観察でいちばん見つかるのは水生昆虫、しかも幼虫です。虫の幼虫って、陸生の昆虫ではあまり一般的ではなくて、どちらかというと知る人ぞ知るマニアックな存在ですが、水生では逆点して、図鑑でも幼虫主役で「親虫は7こんなです」と小さく写真で載っているものが多いんですね。

そんな水生生物を捕獲する術の一端を以下に書いてみます。

特に冬の水生生物は、水の底の葉っぱの下を探せ!

落葉した落ち葉は冬になると川や池にはいっぱい沈んで溜まっています。こんな落ち葉に着いたヌルヌル成分や、やがて腐って柔らかくなった葉を食べている生物がここに住んでいると先生は言うので、葉っぱを手で拾ってバケツの中で洗ってみました。

落ち葉をバケツに張った水の中でジャブジャブすると、確かに何か水の中で動く生き物がバケツの中に少しだけ出てくるのですが、いったい何なのかよく分からないんですね。

観察には老眼鏡を忘れるな!

目のいい人にはメガネなんて不要かもしれないけど、もし近くがモヤって細かいもんがよく見えない人は、老眼鏡をかけてバケツの中をもう一回覗いて欲しいです。そうしたら多分そこにはカゲロウの幼虫なんかがモソモソと動くのが分かるハズ。もしメガネをかけないと「なーんにも居ないわ!」になってしまうのでメガネは必需品です。大学の先生も野外観察に出て「あ!メガネ忘れた!」という非常事態には最寄りの100均に飛び込んで老眼鏡を100円で買うのだそうです。だから自然観察場所は、山奥よりも観察道具が100円で買える100均の近くの川でやるのがイイんですね。

水でジャブジャブやったぐらいでは落ちない生き物もいる

嫌な虫の代表ですがブユという刺す虫が川から出て来ますが、この幼虫は流れのある川の中に住んでいます。ブユの幼虫は頭とお尻の吸盤があって、それを交互にペタペタやって葉っぱの表面を横に歩くのがメガネをかけていると観察現場でも観察できます。ちょうど尺取虫の横動きバージョンみたいな感じ。コイツは葉っぱを洗ったぐらいじゃ出て来ません。目で探して見つかったらピンセットの細い先で葉っぱから剥がして小さな白いトレーに入れなければなりません。そういうトレーも100均で見つかるし、先細のピンセットも100均にあります。

こんな虫を見つけていると「冬はやっぱちっちゃい虫しかいないのかぁ・・・」と思ってしまいますが、実はそうじゃなかったのです。探し始めは水生生物がどこにいるか、どんな格好をしているか勘が分からないので見つからないだけだったことがやがて分かって来て、目も慣れてくると思います。それで捕まえやすくなってきます。

そーっと探すのではなく、池の底全部掻き出してみる

生き物は小さいものもいるから、水底の葉っぱを一枚一枚丁寧に見るのもアリですが、実は大きな獲物はあのテレビ番組に見習って、川や池の底の葉っぱや泥を網やシャベルで地面に揚げて、その中から探し出した方がたくさん見つかるんです。

だから、最初は丁寧に水底の葉っぱ表面を調べて、小さな生き物を探し出し、その後「全部出してみる」作戦に切り替えて探したらいいと思います。

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徒然草じゃないけど「先達はあらまほしきことなり」はホント!

徒然草で、仁和寺のある僧侶が石清水八幡宮にお参りしに向かったはいいけど、一人で行ったので山の上の総本山に気が付かずに、下にある別の場所にお参りしただけで帰って来てしまい、せっかくの目的が達成できず、なんのこっちゃ状態になったというような、有名なお話しがあります。

生き物観察会も実は同様で、はじめての人が探すと「なーんにも居ないや!」だったもんが、有識者の手にかかると膨大な種類の生き物がゲットできるのです。
ちなみに上の写真の左側の男性が大学の先生であるところの先達!です。

実は普段から子ども相手に生き物探しを同じ場所でやっているのですが、前述したように私の技量ではせいぜい数種類でしたが、今回の先生(先達)の手にかかって大雑把に数えて23種類出ました。それも小さな生き物だけじゃなくて、全長5センチ級のヘビトンボの幼虫今がこの日新たに見つかりました。やはり先達の採集指導が効果的だったのです。

でも、これから生き物観察をやろうとする人は「先生がいない・・・」と落胆する必要はありません。図鑑を買って観察を続けていくうちに、自身が先達になれるんです!仁和寺の僧侶も、次に参拝に行ったときにはちゃんと石清水八幡宮にたどり着いたと思われます。

観察テクニック

生き物観察は、たとえばバードウォッチングのように野山で、つまり観察現場でそのまんま観察するのが主流のような気がしていましたが、水生生物については、捕まえてきて、部屋の中に持ち込んで、観察するのが彼らの体の隅々までじっくり観察できていいんですね。

しかも冬は寒いから彼ら獲物もじーっとしていて暴れ回ることがありません。だからよく眺めまわすことができます。この観察テクニックを以下に書いてみます。

スマホのカメラなんかを使って生き物観察すべし

もし一人で観察するのなら虫眼鏡で捕った獲物を覗き見てもいいです。が、できたらデジカメやスマホを固定したものの下に獲物を入れた100均の白色トレーを置いて、さらにその画像をディスプレイに映し出すともっといいです。

昨日は観察者が10人ぐらい集まったので7、全員で観察できるようにプロジェクターを使ってリアルタイム投影しました。下の写真が白いトレーの中を写す固定したデジカメ。

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こんなふうにすると、一度にみんなで観察できるから学校の授業とかに応用することもできます。まさに観察のマスプロダクションですね。これは20世紀ではテレビカメラとモニターを組み合わせて・・・とか決して容易ではなかった難しい技術でしたが、今ではその気になったら誰でもできます。

これがデジカメ画像をプロジェクターで投影したところです。

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しかも、画像を記録しておきたくなったら、その瞬間に生き物の姿を写真とか動画に撮れるんだから便利です。

倍率はそのまんまの1倍から、まあ最大5倍ぐらいまで

プランクトン観察では100倍とかもっと大きな倍率が欲しくなりますが、水生生物観察では20倍でも大きすぎ!

けっこう生き物って植物でもない限り動き回るから、何かの方法で動かないようにして局部拡大して見ようとしない限り倍率はせいぜい3倍から5倍もあれば十分。だからスマホやでデジカメで写すとか、100均で売っている虫メガネで観察するのが都合いいです。

ただ、微妙な同定作業では細かく見る必要もあるので、その時だけ20倍ぐらいの実態顕微鏡が欲しくなりますが、コイツを買うのはすごく高いです!
そんなことするのはもっともっと生き物観察の腕が上がってからのことで、最初は100均で買えるモノで十分に観察が楽しめます!

被写体の生き物はピンセットで拾い上げる

実は生き物を拾い上げることは練習が要るんです。

使うピンセットはストレートの先細タイプが扱い易いようです。細くとがった先で虫を素早く挟んでカメラの下に持って来るわけですが、このとき虫を潰さない、しかも途中で落とさないような力加減を身につけなくてはなりません。もしある程度の大きさがある、たとえばトンボの幼虫のヤゴみたいな脚のある昆虫の場合は脚をピンセットで掴むといいみたい。

もっともっと小さくて柔らかい虫は、挟むというよりピンセットの先ですくい上げるような動きを先生の手は見せていました。たぶんこれも場数を踏めばできる技なのです。

ちなみに、この先細のピンセットもちゃんと100均に売っています。一番左のヤツです。

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この日に観察した水生生物達をいくつか

この日に捕れた水生生物のうち、特に話題性の高かった生き物は以下のものでした。

オニヤンマのヤゴ

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オニヤンマは大きくて立派なトンボで、その幼虫もけっこうデカイです。特徴はこの写真のように上から見ると顔の真ん中部分に櫛みたいなものが見える角ばったいかつい虫です。

下の写真はギンヤンマのヤゴですが、華奢な体のカタチに比べてオニヤンマはガッチリしているので、慣れたら識別ができます。
ちなみにヤゴの仲間はエラで水中から酸素を吸収しますが、エラは体内にあって、体内に吸い込んだ水を使って呼吸するそうです。

下の写真の下側がギンヤンマのヤゴです。

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ホタルの幼虫

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写真の左下が頭で、その近くから脚が6本出ていますが写真では見えていません。トゲみたいに体から突き出しているのはエラです。これで水中呼吸しているのですね。

蛍のいる川はキレイな川というイメージがありますが、蛍の幼虫はカワニナという淡水に住む巻貝を主に食べています。カワニナは泥の中に住んでいるので、そういう泥がある川というのは必ずしもキレイとは限らないから、キレイな川の蛍というのは人が作った「伝説」の可能性があるかもです。

なぜか人は蛍を川に呼ぼうとしてカワニナを川で増やすことに取り組んだりします。それ自体はいいのですが、蛍の生まれて間もない小さな幼虫は小さなカワニナしか食べられません。なので、小さなカワニナに代わる別の巻貝を放流する蛍を育てる団体が現れ、そのベツモノの巻貝が外来種として広まってしまうこともあるそうな。という先生のはなしがありました。

センブリとヘビトンボの幼虫

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センブリというヘビトンボを小さくして羽を黒くした肉食の昆虫がいます。センブリもヘビトンボも幼虫はこんな醜いカタチをしていて、ムカデみたいですが、お腹についている脚のようなものは脚ではなくてエラです。

ちなみにもっと大きなベビトンボを写して見ている写真が下です。

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センブリもヘビトンボも肉食なので、大きなアゴで他の水生生物を捕まえて食おうとしているんですね。ちなみに素手でコイツを掴むとアゴで噛んで抵抗します。だからビックリします。「恐い!」っていう感じがします。

ヘビトンボの仲間は流れのある川が住みかで、割と上流に住んでいます。ただこのようなカタチの幼虫はゲンゴロウの幼虫もほぼほぼ同じカタチをしていまして、ゲンゴロウの親虫は甲虫なのに、ヘビトンボやセンブリの親虫はトンボの首を伸ばしたような虫なので、親虫は別モノなのに幼虫はそっくりさんという「似て非なるもの」を絵に描いたような昆虫なのです。

ヨツメトビケラ

初級者が生き物を見つけようとして川の底の石や木の枝を網から捨てるとき、必ず捨ててしまう生き物です。なぜなら木の枝の短く折れたヤツそっくりだからです。

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この虫は砂を体から出した糸でつなぎ合わせて作った自家製の巣を背負っていて、その中に潜り込んでいます。ミノムシみたいですね。動くときには巣から胸についた脚を出して歩くから生き物だと分かりますが、捕獲したときには巣に引っ込んでいるから小さな枝と見間違えてピックアップできずに「棄却」されてしまうのですね。

こういう虫の存在も先生無しではなかなか知り得ませんでしたが、一旦それが虫だと分かったら、次から次へと見つけ出すことができます。

ミズカメムシ

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こんな小さな虫が水に浮かんでいるなんて、昨日の今日まで私は知りませんでした。これはうっかり水面に落ちた虫ではありません。アメンボのように水の上を表面張力を使って歩き回って生活する昆虫なのです。

カメムシの仲間で、口が尖っています。
実はアメンボもカメムシの仲間でして、口が尖っていて他の昆虫を襲って体液を吸うのです。でもアメンボは一番前の脚が短くて触覚なのかな?と思えるような位置についています。だから上から見るとアメンボは4本脚に見えます。

一方写真のミズカメムシは上から見たらちゃんと脚が6本見えますから、目が良ければ見つけられて識別できて、他人にエラそうにウンチクを説明できるでしょう。それにはメガネが多分必要になります。

屋外に昆虫の観察をしに行くときにはメガネとスマホを忘れないようにしましょう。この2点さえあれば、水中の生き物観察はなんとかできると思います。

ちなみに、小さな生物をデジタルカメラやスマホでうまく綺麗にピントを合わせ、鮮明な写真を撮るのはけっこう難しいものなのです。かつて自然保護団体のセミナーで講師の方に「どのカメラを使うのがいいでしょうか?」と尋ねたところ、コレです!と紹介してもらったカメラがオリンパスのTG-4です。TG-6もあります。

このカメラは接写に強く、オプションパーツを装着することで更に明るく鮮明な写真が撮れる特徴があります。残念なことにオリンパスはカメラ事業を2020年度内にも売却するつもりだというので、今後の市場動向によってはこのカメラは末永く販売されるのかどうかが気がかりです。高価なカメラなので、実は私もまだ入手に躊躇しているところです。しかしなんとか手に入れたいですね!!

このカメラで写した写真が見られるオリンパスのサイトは以下です。鮮明な生きものの写真を鑑賞ください。


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