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【読書記録】ことば、身体、学び 「できるようになる」とはどういうことか

こんにちは、Yoshiです。

本日は、『ことば、身体、学び 「できるようになる」とはどういうことか』の読書記録を書きます。

サマリ

  • ことばと身体は密接に結びついている。ことばを身体で理解し、その意味を想像できるからこそ、言葉が通じる。

  • 逆に言うと、言葉が通じるとは、私とあなたで共通の身体性・理解があるという前提に成り立つので、それがない場合はことばは通じない。相手のレベルにことばを合わせる必要がある。

  • 身体も言葉も同様で、様々な状況に対して自らをアジャストさせて同じ結果を出せるようになることを「できる」と言うことができる。そのためには、様々な助教を抽象的に見て応用できるメンタルモデルが必要。

  • 上記のような自身の調整を行えるようになるには、自らに対して自覚的で、言葉や身体でそれを考え、表現・再現できる能力が必要。


「できるようになる」とはどういうことか

この本を最初に見た時、タイトルの上記部分にとても興味を抱きました。

確かに、「できるようになる」って何なんだろう?と。

私は趣味でクライミングをしていたり、仕事でプロジェクトマネジメントをしたりしています。
あるいはこうやってnoteを書いたり、これからコーチングを学ぼうとしたりしています。

いずれも、ある程度は「できる」と思います。
でも、本当の意味でそれはどういうことかは考えたことがなかったです。

ことばと身体はつながっている

内容は、元陸上選手の為末大と言語心理学者の今井睦さんの対談形式で書かれています。

為末さんは元々かなり哲学的で好きな方です。
そんな方が、言語心理学者と対談するというのですから、面白いに決まっています。

対談は、スポーツの文脈を中心に言葉について議論するという形で進んでいきます。

例えば、コーチが選手にアドバイスをするとき、「足を直角に上げて、地面に着く前に素早く反対の足を上げる」と理論的に伝えるより、「熱い鉄板の上を走るように」と言った方がよく通じるという感じです。

これは確かにその通りだなと思います。

前者の方が理論的で正確な気がしますが、イメージがしづらい。
後者は、抽象的なことばであるものの、イメージがしやすい。

この違いは、そのことばが身体と結びついているかとのことです。

身体に結びつかないことばは、意味は分かるけど理解することが難しい。
逆に、身体に結びついていることばは、意味は分からないけど理解し、再現しやすい。

このことから、言葉には話す人と受ける人の間で共通の身体性や、その前提となる文化が必要ということが言えます。

伝わることばと伝わらないことば

そう考えると、ジェスチャーとかまさにそうですよね。

あれは、言葉ですらないじゃないですか。
でも、どの国に行っても大体通じる。

それは、あれば「ことば」よりもさらに身体性に訴えているから。

食べるという動作は人間であれば共通だし、悲しければ泣くというのも同じ。
だから、言葉がなくとも通じるんですね。

逆に、身体性がない言葉は、どれほど流暢であっても通じないのかもしれません。
例えば、AIがきれいな英語を話したとしても、それは人の心には通じないのかもしれません。


もっと考えると、それは人間の想いに近くなってくるのではないでしょうか。

立て板に水のように話すけど、全く話が伝わらない人もいれば、一言二言しか話さないけど、想いが十分に伝わる人もいる。

それは、その人がどれだけ身体、あるいは心を込めているかによる違いなのかもしれません。

相手のレベルにことばを合わせる

言葉は相手との共通概念がないと通じないとするなら、正確に言葉を伝えるには、その内容もそうですが、相手に合わせたレベルの言葉を使うことが必要ということです。

これがいわゆる、「本当に頭のいい人は難しいことを分かりやすく言う」ということなのかなと思います。

これを普段の仕事に当てはめて考えてみると、相手の役職や状況に応じて話す言葉を変えるということかなとも思います。

つまり、詳細を詰める場面ではより具体的に、深くまで正確に話す必要がある一方、相手が部長や役員などの方であれば、そこまでの詳細は不要で、ざっくりと状況を伝えられれば良いということです。

この違いを理解し、実行できるようになるためには、場数ももちろんですが、相手の状況やレベルを推測する想像力、メンタルモデルが必要になります。
また、自らに自覚的になり、様々な状況で同じような結果を出せるように鍛錬を積む必要があります。

その意味で、言葉を正確に使うということは、スポーツで体が上手く使えるようになるということと非常に近しいのかもしれません。

終わりに

タイトルからして面白い本書。

内容も素晴らしく、普段何気なく使っている言葉について考える良い機会になりました。

また、言葉や身体性以外の領域への適用も可能で、非常に幅の広い本だと思います。

単純な興味でも良いですし、何かスポーツをされている方、言葉について敏感な方にお勧めできる一冊です。

(追伸)
言葉に敏感という意味で言うと、こうやってnoteを書いている人にもお勧めかもしれません。


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