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導くということ - 社員研修とOJT(後編)

 お客様から依頼されたシステムの中で作成しなければならないプログラムの一つに対して仕様を全員に渡し、検討し作ってもらうということでした。研修と違うのは、一番優れた成果物を作り出した新人のプログラムを実際にお客様に納品するというところでした。つまり、スキルアップのために学習するのではなく、お客様に納品する一部を作成するということを意識させてみたのです。5人で協業するもよし、単独で作り上げるもよし、しばらくは見守ることにしました。ただし、納期厳守ということだけを足枷にしたのです。しばらくすると、5人の中から他をリードする社員が必然的に現われ、他のメンバーに役割分担をして支持するような体制が確立していきました。5人それぞれが最終的にはプログラムを作り上げました。

 私は、彼らが作成したプログラムに対して、保守しやすいプログラムなのか、無駄がないプログラムなのか、仕様は満たされているかを判断しました。万が一、全員がNGの場合に焦らなくてもいいように、私もプログラムを書いていましたが、5人の中のリーダー格の社員のプログラムが一番できがいい状態ということを全員に通知するとともに、全てのプログラムに対し、いいところと改善すべきところを説明しました。しかし、全員が協力して実施したにもかかわず、全員ちがうロジックを作り上げたのです。このことは、協力は進んで実施するけれど、成果物は個人の責任で仕上げるということを分離して考え行動した成果でした。ここに大きな成長を感じました。環境を整え、題材を投入するだけで自律的にチームワークが発足し納期通りに結果を出したのです。最も、何度か質問には応じ、その度に方向修正できるようなアドバイスはしていましたが、入社したての社員でも、少しのアドバイスで実務の中で活躍できるポテンシャルはかなりあるなと感じることができました。

 一方、中途入社社員の場合は、すでに高いスキルを保有していることが多く、即戦力になりやすいのですが、他の社員と接している時間が短かったり、社内のプロセスを理解していないという点でチームの中で孤立しやすいということを感じていました。この場合は、協業することでチーム内の信頼を早く築けるような体制の推進が役に立ちました。中途入社社員が持っているスキルを必要とするプロジェクトに配属するのですが、そのスキルを必要とする担当者は少し若手の社員をアサインします。そして、中途入社社員はアドバイザー的な役割に徹してもらうのです。同時に、プロジェクトリーダーを補佐するような立場でも振る舞ってもらう役割にもアサインします。こうすることで、若手の社員は、質問する相手が中途入社社員ということになり、うまく回答したりアドバイスしたりできれば、そこに信頼関係ができます。また、プロジェクトマネージャの補佐をすることで社内プロセスにも携わることになり、他の部門の社員とも接点が作れるようになり、社員の中に溶け込む時間も短くて達成できると思います。






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グループリーダーや部下を持っている管理職の方達の日々の迷いを共有し少しでもヒントになるような記事を目指して描いていきたいと思います。

経験から得られた、社員に対する育成や組織に対する取り組みということを私なりに綴ってみたいと思います。

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