導くということ - ローテーション(2)
私が、最初にラインになった時は、やはり自分自身の経験から施策を考えていたこともあり、ローテーションを意識していました。私自身の経験で最も大きかったのは、他部門に異動して違う仕事をしたいと思っていた時に、あるお客さまのプロジェクトが終了し、結果報告をお客様に提出するとともに次の提案も同時に実施していたことがありました。なので、プロジェクトは終了するのですが、仕事が切れることがなかったのです。その時、当時の私のラインからは「あなたが仕事をとってくるから異動できないんだよ」と言われてしまいました。ちょっと違和感を感じた瞬間でした。自分がラインになった時は、個人に依存する仕事ではなくチームに依存するような仕事の仕方にできないものかということを考えるようになったわけです。お客様から頼りにされるのはとても嬉しいことで心地いいのですが、一方でまだまだ成長したいという欲求もあるものです。そのためには、チームで仕事をする形式にしてできるだけ個人に依存しない仕事の仕方を模索し始めました。「昭和SE回顧録」という私の電子書籍の中の「18話 リピートオーダー」で紹介している内容がまさに実際のプロジェクト現場で行った実験と言ってもいいかもしれません。リピートオーダー毎にプロジェクトメンバーを全員入れ替えて対応するという方法への挑戦の話です。チーム内に適度な緊張感も維持でき品質も低下することなく実施できたのです。
この経験を踏まえて、当時の私の部門でのローテーションの方針は、ある方向性を見出していました。人と同じことをすることが嫌いな私は、「相対評価のいい社員をローテーションの対象にする」ということを自分に言い聞かせました。他の部門は、全く逆の施策を実施していたのです。自部門で活躍できない社員を他部門に異動させていたわけです。気持ちは分かりますが、他部門の仕事なら素晴らしいパフォーマンスを発揮できる人が対象になっていたわけでもないので、受け入れる側としても複雑だったと思います。ローテーションといういい仕組みがあるにもかかわらず、社員のために有効活用されているとは言い難い利用だったように思います。
高い評価の社員を他部門に異動して違う経験をしてもらうと言っても、高い評価の社員を全員異動してしまうと部門として成り立たないので、バランスを考慮しながらの異動検討ということになります。その際、評価が低い社員は部門内での仕事の変更などを試みて力が発揮できる役割を探すことになります。部門内で力を発揮できる役割が見つかれば評価も上がります。こうして部門内の新陳代謝も向上していくわけです。
<続く>
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