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12月14日 南極の日 【SS】先住者

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- 南極の日

1911年(明治44年)のこの日、ノルウェーの探検家ロアール・アムンセン(Roald Amundsen、1872~1928年)と4人の隊員が世界で初めて南極点に到達した。

1911年10月20日にアムンセンは4人の選抜隊とともに南極大陸のフラムハイム基地を出発し、4台の犬ぞりを1台あたり13頭、計52頭に引かせて南極横断を開始した。なお、アムンセンの名前はロアルド・アムンゼンなどとも表記される。

途中好天にも恵まれてアムンセン隊は順調に距離を伸ばし、1911年12月14日、人類初の南極点到達を果たした。


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【SS】先住者

「最近、我々のこの辺りも住みにくくなってきたよな。見つかるんじゃないかといつもヒヤヒヤしてるよ」

「そうだな、特に出かける時と帰ってくる時は見つかるんじゃないかと思っちゃうよな」

「我々がこの地を見つけてから、すでに二百年くらい経っているけど、八十年くらい住んで誰もいないと安心していたら、突然アムンセンとかいう奴がやってきた時はびっくりしたよな。すぐ近くまでやって来たんだから」

「ああ、そんなことがあったな。確か旗を立てて帰って行ったんだよな。どこから来たんだっけかなぁ。ああ、そうだノルウェーとかいう国からやって来たんだったな。その後はいろんな国の人間たちが入れ替わり立ち替わりやってくるようになったな」

「まぁ、それがあったから、我々も偵察する回数を増やしたんだよね。そのせいで、あちこちで目撃されてしまったんだけど」

「でも、まだ基地がここにあることは知られていないよ」

「ああ、そうだな。しかし時間の問題のような気もしてきたな。だって、この大陸には、何ヶ国か人間の基地までできて常に誰かがいる状態になってしまっているじゃないか」

「そうだな。我々も時々潜入して監視しているけど、どんどん進歩して来ている気がするよ。特にこの大陸までやってくる船は進化してるね」

 ここは南極点の近くである。地中には長い間住んでいる宇宙人がいた。宇宙人の寿命は三百年前後のようだ。特徴的なことは、宇宙人は、空気を必要としないことだった。呼吸をしないのだ。またその大きさにも驚かされる。なんと、身長は一ミリにも満たない。透き通るような体をしている。彼らが生きていくために必要なものは水分のみだった。宇宙船の燃料も水を使っているようだ。

 あまりにも体が小さいため、宇宙人は昆虫などがいなくて、水が豊富にある南極に住居と基地を作ることを決定したのだった。最初は人間もやってくることはなかったので安心して住んでいた。彼らは温度を感じることはない。極感の地でもなんら問題はなかったのだ。ただ発見される事を恐れ、時折偵察のために、暖かい場所に現れてはいたのだが、決して地上に着陸して調査することはなかった。昆虫に見つかると命の危険に晒されるからだ。

 宇宙人は、人間界の文明の発達を第三者として支援し見守っていた。そしてそれは自分たちではない別の宇宙人であることも知っていた。彼らは、そんな宇宙人の目からも逃れてひっそりと静かに生活できる場所を求めて地球の南極大陸を見つけたのだった。彼らの住居への入り口は海底にある。海底から南極大陸に宇宙船が通れるくらいの横穴を開けて一大都市を築き生活している。一大都市といっても、小さい体の彼らにとっての都市はアリの巣のような構造をしており、宇宙船の発着場だけが広く設計されているだけだった。

 普段彼らが乗っている宇宙船は二種類。偵察に使っているのはもっぱら円盤型である。彼らは自分たちが飛んでいる位置を誤魔化すために、飛んでいる位置から一キロ先にホログラムで大きな円盤を映し出す技術を使っている。人間が目撃するのはこのホログラムの方なのだ。そして、ランダムに映したり消したりしてあたかも不思議な飛行をしているように見せかけているのである。UFOが突然姿を消すのはこのせいなのかも知れない。実際に彼らが乗船している円盤は、直径が五センチにも満たない大きさなのだ。それに比べて、集団で移動するための輸送船として使われている宇宙船は人間が葉巻型と読んでいるタイプだ。こちらは、全長が三メートルほどもあり偵察用の円盤も搭載している。どちらかといえば、惑星間の引越し用に利用するタイプなので、現在は、南極の地下の発着場に置かれたままである。

 宇宙人たちは、もともと住んでいた星の消滅を悟った時、星から集団で脱出して南極に住み着いたのだった。豊富な水が彼らの命を繋ぎ止め、南極の地下で繁栄していったようだ。地球のことを偵察しながら研究を進めていくうちに彼らは一つの結論に達した。それが彼らが地球にやってきてすぐのことだった。彼らのリーダーは、判断をくだし、一緒にやって来たメンバーに伝えた。

「この国の人間という生物は戦いを好む生物のようだ。体が小さい我々では勝ち目がない。人間があまり近づくことがなく、小さな生物が少なくて水のある人間が南極と読んでいる場所に我々の住む場所を作るのが懸命な判断だといえよう」

 こうして今日まで人間の行動を監視しながら静かな生活を維持していた宇宙人だったが、最近地球上で起き始めている異常気象と戦争を分析し、地球の寿命は長くないかも知れないと考え始めていた。地球上の異常状態が続けば、人間たちはまず戦争や天災を逃れようと今は人間が住んでいない場所、すなわち南極にも押し寄せてくる可能性があると結論づけたのだ。彼らはリスクを先読みしながらこれまで生きてきた。今回もそう判断することを決めたようだ。

「みんな、ここ地球には二百年以上平和に住み続けてきたが、我々の考えるリスク受容基準を超える可能性が出てきた。みんなには申し訳ないが、また、新天地を求めた旅に出ることにする。早急に出発の準備を各自で実施してくれ。我々は、葉巻型の輸送船の最終点検を実施し、船団を組んで宇宙へと飛び立つ準備に入る。出発は、三ヶ月後を計画しているからくれぐれも遅れる事がないように」

 こうして、南極点に人間が訪れて約百二十年が経過した時、宇宙人たちは地球に見切りをつけて、新たな惑星を求める旅に出ることを決断した。もしかしたら、愚かな一部の人間が戦争を始めなければ、彼らはもっと長く南極大陸の地下で平和な生活を楽しんでいたのかもしれない。


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