経営者とデザイナーの関係性が生み出す「共創」の価値 ~経営とデザインの融合~
多くの企業では経営戦略は経営陣が、デザインはクリエイティブチーム(もしくは外部委託)が担当するという分業体制が一般的です。
しかし、このような分業体制が企業におけるデザイン活用やブランディングの弊害になってしまう可能性もあるのです。
本記事では、従来の分業体制が抱える問題点や経営者とデザイナーの関係性が生み出す共創がもたらすメリットについて解説していきます。
■ この記事から学べること
1.分業体制の罠
多くの企業ではブランディングやデザインなどのクリエイティブ制作に取り組む際に以下の画像イメージのように分業体制で実施されることがほとんどです。
このようにそれぞれがそれぞれの専門分野で、高い専門性を発揮して取り組んでいるのが一般的です。
このような分業体制が決して悪いということではありませんが、様々な企業と仕事をさせていただく中でこのような分業がブランディングやデザインなどのクリエイティブ制作において弊害になってしまうケースを多く経験してきました。
ブランディングにおいて顧客とのすべての接点において一貫性のあるメッセージが発信されていなければ、人々の印象には決して残りません。
以下のブランディングに関する記事の中「ブランドの一貫性を保つ重要性」について解説していますので、あわせて読んでみてください。
このようにブランディングにおいて、経営戦略(伝いたいこと)とコミュニケーション戦略(伝える手段)の間に壁がある状態だとブランドの一貫性を保つことが難しくなってしまうのです。
これは経営者の腕やデザイナーの腕の問題以前に、このような組織体制そのものがブランディングの弊害となってしまっているのです。
一見効率的に見えるこの分業体制が、実は組織の縦割りを生み、ブランドの統一感を失わせているのです。
2.経営者とデザイナーの関係性が生み出す共創
ブランディングやクリエイティブ制作において一貫性のあるメッセージを発信していくためには、自分の専門分野に閉じこもるのではなく部門の壁を越えた共創が必要不可欠になります。
では、経営者(または企業担当者)とデザイナーの理想的な関係性とはどのような関係性なのでしょうか?
例えば、先ほどの画像を以下の画像のように真ん中の壁を取り払って、色を混ぜてしまうようなイメージを想像してみましょう。
経営者(または企業担当者)とデザイナーの間にある壁を取り除かれることで、お互いの色が混ざり合う(共創する)ことで、思いもよらないアイデアや革新が生まれる可能性があるのです。
デザイナー(特に外部委託の場合)が経営戦略に関わる機会は正直ほとんどありませんが、それでもデザイナーのもつ視点や思考が経営などのマネジメント領域のどこかに貢献できることは少なからずあるはずです。
デザイナーは経営のプロではないため、経営戦略における貢献度は経営者や企業担当者ほど高くありません。そのためデザイナーの領域にグラデーションによる薄い青色(経営戦略)が混ざってくるイメージになります。
また、経営者(または企業担当者)も「デザインのことは分からないからデザイナーに全て任せる!」のではなく、デザインなどのコミュニケーション戦略の領域に関心をもって、少しでも意見を述べて関わっていくことで、経営戦略に基づいた一貫性のあるメッセージを顧客に発信できるようになります。
経営者はデザインのプロではないため、コミュニケーション戦略における貢献度はデザイナーほど高くありません。そのため経営の領域にグラデーションによる薄い白色(コミュニケーション戦略)が混ざってくるイメージになります。
例えばApple社の成功は、スティーブ・ジョブズとジョナサン・アイブ(元Appleの最高デザイン責任者)の密接な協力関係なしには語れません。経営者のビジョンとデザイナーの創造性が融合することで、革新的な製品が次々と生み出されたのです。
このように全員で創り上げていく「共創」こそが、質の高いブランディングやクリエイティブ制作を実施するために非常に重要となるのです。
3.経営者とデザイナーの共創がもたらすメリット
経営者(または企業担当者)とデザイナーが積極的に関与していくことで、ブランドの一貫性と独自性をより強化することができます。
これは単なる指示出しではなく、お互いが同じ目線を持った対話を通じて、ブランドの本質を深く掘り下げることができるのです。
また弊社としても様々な企業と仕事をさせていただく中で、多くのメリットを感じることができています。
例えば、よくプロジェクトの企画段階からデザインの相談を受けるケースがあります。
「えっ?何も決まってないのに何をデザインするの?」と思うかもしれませんね。
しかし、デザインとは単に色や形をつくるだけのものではありません。
以前「デザインのもつ4つの力~狭義のデザインと広義のデザイン~」という記事の中で、以下のデザインのもつ4つの力について解説しました。
デザインとしてカタチにする以前に、問いを発見したり、アイデアを可視化してみたり、情報を整理してみたりと様々な工程を行っています。
このような工程を踏むことで、経営者(または企業担当者)とデザイナーそれぞれに大きなメリットがあると考えています。
①経営者視点からみたメリット
経営者としてもプロジェクトの企画段階からデザイナーに相談することで、デザイナーの視点や思考をヒントにプロジェクトの問題点を発見したり、アイデアを具体化することで企画の方向性を定めたりすることができます。
実際に、弊社が企画段階からデザイナーとして関わったプロジェクトでは、デザイン(アイデアの可視化)を通して企画が良い方向に動き始めたり、試作デザインを通してプロジェクト関係者のモチベーション促進などの多くのメリットを感じることができました。
このように経営戦略の視点からみると、デザインにはプロジェクトを推進させる力があるのです。
②デザイナー視点からみたメリット
またデザイナー側の視点から見ても、プロジェクトの構想段階から関わることで多くのメリットがあります。
よくあるデザイナーへの相談および依頼タイミングとしては、プロジェクト自体がほとんど固まった状態になったタイミングです。
このような依頼方法が一般的ではありますが、実際にデザイナーがデザインとしてカタチにしてみても「あれ?何かイメージとちょっと違うなぁ」というケースも決して少なくありません。
これは最初に説明したように分業体制が敷かれていることによって、経営者(または企業担当者)とデザイナーの間で共有すべき情報にズレが生じてしまっているからです。
デザイナーが経営戦略の領域に少しでも関わることができれば、プロジェクトの企画段階から関係者の想いや過程に密接に触れることができます。
そのためデザインとしてカタチにするための情報が濃密かつ多く得られるため、デザインとしての完成度が格段に違ってくるのです。
もちろん組織体制や予算の関係上、デザイナーが経営戦略の領域に関わることのできるケースは決して多くありません。
実際に弊社でも全てプロジェクトの企画段階から関わっているというわけではありません。
しかしデザインへの関心やその本質を理解している経営者(または企業担当者)の方々は、プロジェクトの企画段階から相談してくれる傾向が多いです。
このようにデザインを効果的に活用している企業は次々に新しいことにチャレンジしているなど、企業としての勢いも非常に素晴らしいものを感じています。
■ まとめ:共創でブランドの未来をつくる
経営者とデザイナーの共創は、ブランディングの新たな地平を切り開く鍵となります。
専門性の壁を越えて協力することで、革新的なアイデアが生まれ、強力なブランドが構築されるのです。
ぜひ自社の組織体制を見直し、経営とデザインの融合ポイントを探ってみましょう。
まずは部分的もしくは小規模なプロジェクトから共創を実践し、その効果を体感することから始めてみてはいかがでしょうか?
ブランドの未来は、あなたの一歩から変わり始めるのです。
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