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52ヘルツのクジラたち

町田そのこ 2023年

・あらすじ
52ヘルツのクジラとは、他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く世界で一頭だけのクジラ。何も届かない、何も届けられない。そのためこの世で一番孤独だと言われている。自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれる少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、魂の物語が生まれる。(本書後ろのあらすじより引用)

・感想
前々から、「いつか買おう、いつか買おう」と思ってきましたが、今まで、単行本のみでお財布には厳しそうで中々買う機会を見つけられなかった作品でした。しかし、先月文庫化されたという話を聞き、手軽に買うことが出来そうになったので、「チャンス!」と思い、先週末どこかへ行った帰りに書店で買いました。

この作品は2020年に単行本として発売。21年に本屋大賞に1位となりました。町田そのこさんの出世作と言っても過言ではない作品だそうです。

物語は、世の中と自分の価値観が合わない、若い女性「貴瑚」が紆余曲折あって大分県の海辺の町に逃れてきたことから始まります。そんななか、一人の少年と出会います。彼はなぜか何も話すことが出来ない。メモ帳とペンを渡し、「私にあんたのこと教えてくれる?」というと、さまざまな暗い過去が明らかになりました。ここからその子の過去を探っていく作品です。

まず、思ったことは、フィクションでただ1人の人生ですが、多くの人に通ずることなのではないかと思いました。題名にもなっている「52ヘルツのクジラ」とは、高い周波数で鳴くために周りに自分の存在を示せない。群れの中に入れたとしても、すぐに仲間外れになってしまうクジラのことだそうです。作者は、一部にとって生きづらい現代社会を、そういったクジラに見立てて、この作品を綴ったそうです。面白いですよね。

私も、共感しました。人それぞれ価値観は違います。私には私の価値観。皆さんには皆さんそれぞれの価値観があると思います。自分と周囲の価値観がずれていて、理解してもらえず誰にも相手にされない。そんな切ないことが、他人事のように感じて、以外にも身近なところで起こってしまっているのが現状なんだと感じました。

正直、難しいことです。自分の価値観を変えることも、人の価値観を変えることも。そもそも、生きてきた中で身につけたものは、習慣化されてしまって、「別」を受け入れることはハードルが高いと思う人が多いはずです。なので、一生変わらないと私は思います。なので、一時的に周りに合わせていくことと、その時は頑張って受け入れることが必要であると感じました。(あくまで一個人の考えです。)

あれだけ、弱そうだった2人も最後は力強く、それぞれの道に進んでいきました。最初の時と比べると、信じられないほどの勢いで、「人生ってこういうことなんだなぁ」と、感じました。

本屋大賞2021、1位の当作品ですが。町田そのこさんは、このほかにも「宙ごはん」で本屋大賞2023の候補作に選ばれていましたね。去年の春に「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」も読んでいたので、さらに次の作品も楽しみです!

・書籍情報
初版刊行日:2023年5月25日
刊行元:中央公論新社
定価:本体740円+税
備考
2020年4月単行本として発売。

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