【Audible本の紹介23】総理通訳の外国語勉強法(中川浩一)
今回は、2020年に発行された「総理通訳の外国語勉強法」です。外国語学習本の紹介は4冊め。上達しないので、いろいろと読んでます。
1 著者は外務省の外交官です
外務省には、大学を卒業した若者が入省後、言語を習得するため、2年間くらい、外国の大学に留学する仕組みがあります。どの言語にあたるかは、特にマイナーな言語は、運や偶然にも左右されることもあるようです。
英語などを除くと多くの言語は未知の言語ですが、それでも2~3年の留学と数年の実務経験を経て、30歳くらいには皆がその言語のスペシャリストとして活躍できるようになります。大変な努力と多くの経験の賜物です。
さらに、その言語の中で、数人の特に優れた人物が総理などの重要な通訳として活躍します。著者は、アラビア語で総理通訳を務めた人です。
そういう方が執筆した外国語学習本を読んで、なかなか外国語が上達しない自分にとっては、痛いところを突かれていると感じる点が多くありました。
(一定の精神力さえあれば)、誰にでも取り組める本質的なことを、外国語習得のポイントとして主張されているので、とても参考になると思います。
なお、自分は地方公務員ですが、20歳代の後半、外務省(ロシア関係)に出向していました。ロシア語通訳を務めている同僚も、こんな風に取り組んでいたんだろうなと、その勉強の「すごさ」を感じました。一方、公的な立場でなく、ビジネスベースでロシア語が上手な人も身近にいて、こちらの人たちの努力も「すごい」です。
2 外国語習得のポイント(「基本的な考え方」編)
(1)「何のために外国語を学ぶのか、その目的に愚直に」=『目的ありき』で臨んだ方がより効率的な道を選択できる、という著者の主張は、外国語学習に関するモチベーションを正しく持つために、良いと思いました。
(2)著者の考える外国語習得法は、「アウトプットを主体」として勉強すること、とのこと。
「通訳者だから、求められるのは口頭でのアウトプット」であり、それを主体とする勉強法は、著者の仕事上の目的に合致しています。一方、多くの日本人のとっても「大事なのは口頭でのアウトプット(読めること、書けることではなく)」だから、著者の考え方は我々にも役に立つはず、と感じました。
(3)著者によると、外国語の「インプット」は、その「アウトプット」のために行うべき、とのこと。発話に必要な単語やフレーズをインプットして、それを実際に使ってみて、初めて、それが自分のものになる。その繰り返しで、経験を積むことで、外国語が上達していく、とのこと。
(4)また、著者は、日本語でまず考えて(文章を組み立て)、それを外国語に訳すという方法をとるべき、と主張しています。
この点は、いわゆる『ネイティブ脳』の考え方と対立してそうですが、「対立はしていない」と、自分は思いました。
『ネイティブ脳』とは、「英語は英語で考えるべき。日本語で考えてから直訳すると不自然な表現になってしまう。決まり文句やフレーズは、その言語ごとに存在していて、日本語を介さず、それを最初から想起すべき。」の考え方です。
著者が言いたいのは、ネイティブ脳を取り入れることも必要としつつ、もう一段上のレベルでの外国語表現力の習得のためには、日本語で豊かで正確な表現ができていることが必要であり、それの外国語への正しく、素早い変換力が必要、と言っていると感じました。
3 外国語習得のポイント(「具体的な方法」編)
外国語習得の具体的な方法については、第5・6章に書いてあります。以下、自分なりにポイントを列挙します。
○「アウトプット重視」と「スピーキングファースト」
・発信(アウトプット)をベースにした語学学習をする
・インプット過多にならないように(アウトプット50%・インプット50%)
・話すことを重点的にやっていれば、後からリスニング力もついてくる。
※インプットしすぎないこと。漫然とリスニングやリーディングするのは語学習得の邪魔になるだけ。勉強しているという、言い訳にしか、ならない。アウトプット中心の学習が語学力を上げるための一番の近道。
○日本語からの置き換えを軸にするために、日本語と外国語を併記する形の「自己発信ノート(自己紹介とか、自分なりの表現集)」と「オリジナル単語集(ジャンル別など)」を作成する。
※外国語を使うタイミングの直前に、1時間程度、「自己発信ノート」と「オリジナル単語集」の必要な部分を読み返して本番に臨むと、自信をもってアウトプットできる。
〇話したい内容を日本語で整理する→外国語に置き換える→複数の表現を置き換えて使い、表現力に幅をつける。
※アウトプットした(自分が口に出した)言葉は忘れないので、多くの単語や表現を使う努力をすること。その繰り返しで、表現力がついていく。
最後に、、、、
audibleは4時間弱とちょうど良い長さで、内容に引き込まれる感じで、一気に聞きました。
(参考)
伊藤さんがnoteを書かれたので、紹介させてもらいます。
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