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(7)総理通訳の外国語勉強法

 総理大臣や天皇の通訳を務めたという外交官がどのようにアラビア語を習得したのかという書籍。英語を勉強している人にとってもとても役立つ内容です。


 第2章でまず、外国語習得の心得的なことが列挙されています。これは15項目ほどありますが、いくつかここでご紹介します。

 まずは目的、目標、期間を明確にすること。これは当たり前といえば、当たり前なのですが、意外に外国語(英語も含め)を勉強する人はこれが抜けがち。また、集中力が重要とし、「ながら勉強」は無駄としています。さらに、ここが僕にとっては大事かと思いますが、「とにかく人前で話しましょう。恥をかかずに上達はありません」。たくさん話して間違いを直しましょうと締めくくっています。どれも当然といえば、そうなのですが、このあたりを忠実に守れば、語学は上達する以外はありません。

 第3章からは具体的な勉強方法を伝えていますが、日本人の場合はまず「日本語脳」を大切にして、言いたい日本語を外国語に置き換えてあげていくようにする必要があるとしています。「日本語を基軸にまず話したいことを決め、それを外国語に置き換えるために外国語をインプットするのだという発想に転換してください」としています。外国語は外国語で理解しないといけないと長年言われていますが、これではなかなか上達しないともしていて、日本語を介することでわかるようにしないといけないとも話しています。話す内容は自分で題材を決め、自分で言いたい日本語を決めて、それを外国語に転換していくことが大切で、僕も確かにこれは自然にやってきた経験があります。

 そして、インプットよりアウトプットを重視する。特にここで強調しているのが「読解から始めない」ことと「音から入るリスニング学習は間違い」としています。とにかく「スピーキングを最初に行う」。リスニングとスピーキングはセットで考える必要があり、これを分けて勉強していては本末転倒なのです。

 この外交官もアウトプットの学習から開始し、スピーキングのために単語、表現、文章を覚えて、発信してきたといいます。自分から発した音は忘れないので、それが増えれば増えるほど脳に定着して自分のものになっていく。また、アウトプットを繰り返していくと発音が良くなるともしています。

 インプットとアウトプットの割り合いは5割ずつ。学習の初期段階では限られた単語、文法を使って限られた内容についてアウトプットできることが大切。とにかくインプットとアウトプットを乖離させないことを徹底させてくださいとも説明しています。

 語彙力を高める方法として、市販の単語集を使う人が多いですが、ただ、これをtあだ使うのは受け身的勉強。著者はこの単語集に乗っている単語を日本語から外国語(英語)にまずしてみる。①発声できた単語、②日本語から発声できなかったが、英語をみれば知っていた単語、③英語を見てもわからなかった単語の③つにまずは分類。②の部分を強化していけば、上達につながる。

 さらに、この書籍でも最もユニークなのが、第5章ですすめている「自己発信ノート」の作成。例えば、外国人への自己紹介文章など事前にまとめた文章を作ってこのノートに書き留めて暗記。まずは参考書を読むのではなく、このノートを作ってまずは日本語で自分でいいたいことを作成してみるといいそうです。これをすることで、受け身から発信への学習に変わっていくのです。また、外国人と話していて自分の使いたいと思う表現もここに書いていくといいとしています。僕は高校時代に欧米にペンパルがいて文通をしていましたが、このときの表現は今でも忘れることができません。つまり、自分から発信したことで脳に定着したんだと思います。

 また、自分用の単語帳を作るのも大切としています。このノートは外国人に発信する可能性もある単語に絞って書き込み、不必要な単語や表現は含めない。アウトプットしない単語を無理やり覚えても脳の中には入ってこないので、時間の無駄になります。

 また、まとまった文章を別の表現を使って再現するパラフレージングや「瞬発力」を鍛えるクイックレスポンス、リプロダクション(外国語の音声を一通り聞いて、自分でその外国語の分をそっくり口頭で再現するトレーニング)なども取り入れていくといいとしています。こういった通訳が使う訓練方法も取り入れていけば、必ず上達するはずなのです。

 著者は先の心得の中の最初にこう話しています。「外国語の習得には1パーセントの才能もいりません。器用でなくてもいいのです。正しい方法と謙虚さを持って努力するのみです」。確かに語学は余計なことをせず、集中してピンポイントで勉強してけば、自ずと向上するのです。
 

 

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