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お熱

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春の花木

桜吹雪が舞うと先が全然見えなくなって、雪山に迷い込んだのかと、今は春じゃなかったのかと狼狽して、桜吹雪はまさしく吹雪だと実感した。夜に桜並木沿いを運転するのは怖い。 春の花木 卒業シーズンも終わってもうすぐ入学シーズン。 通勤路にある学習塾では、卒業生の置き荷物であろう参考書なんかが大きな袋に詰め込まれて入口横に寂しげにまとめられていた。 卒業のテーマにした商材にはよく桜が使われるがちだけど、桜はまだその頃は咲いてないのに何故だろうと不思議に思う。昔からそうなのか分からな

松の内

あけましておめでとうございます。 昨日、鏡開きをしました。と言っても小さい鏡餅の形をしたプラスチック容器の底面のシールを剥がして、中に入った個包装の餅を取り出すだけの鏡開き。 例年は実家からもらって帰った餅を余らせてしまうのですが、今年はなぜか既にほとんど残っておりません。 砂糖醤油をつけたり納豆餅やお雑煮にしてジャンジャン平らげていきました。きなこ餅はまだしてないから、鏡餅の分はきなこ餅にしようかなぁとか大根おろしの餅も食べたいなぁなどと残餅消費計画を巡らせています。 そ

白波の立つわずかな勢い

ひと月ほど前から車で会社に行くようになった。 行きと帰りでちょうどアルバム1枚を聴き終えるくらいの時間で、これはちょうど良いなと思いながら運転する。 自宅の棚から持ち出した恋はもうもくのテントもしくは一杯の水やbedのIndirect memoriesと聴いてきて、今はやまねむるのH.O.P.Eを聴いてる。本当にすばらしくて、序盤の凡人達と終盤のサイレンとノイズに毎日やられてる。 年を経て環境が変わって音楽の聴き方が変わるという話を数年前から周りの人が話していた。だんだん分

秋の隙間をいずれ良き日に

10月に途中のままにしていた日記を今頃になって書き上げたのは11月も半ばのことだった。年末になって供養する。 台風がかなり煩わしい。来る、来ると言って大体来ないか、強さを表す過剰な冠を被っているけど大抵は大した事はない。とは言っても来ると言われれば構えてしまう。どうせ、と思いながらもびくびくしてしまって恥ずかしい気持ちになる。 10/10 2020年初めてのライブをした。バンドは変わらず動けずにいるので、7月の終わりに買ったエレガットで弾き語りをした。 意味もなくリハの

盆の国

年末に8月に書いた日記の供養をする。 しばらくの間、じんわりとした空気が家中に充満して、トイレの砂壁に白い綿のようなカビが生えていて絶望した。砂ごと削り落としてスプレー材を噴射してみたけれど、数日後にはまたしても白い綿がふわっと付着していてまたしても辛い。 幾日か、仕事が終わる時間に強めの雨が降り、雨合羽を家に置いてきてしまっていたので、ヘルメットだけが雨を凌ぐ防具という状態で原付で雨の中に飛び込んでいくように帰宅する日を過ごした後、むわっとする暑さが押し寄せてきた。完全

探索するは地下か雲の上か

世の中の繋がりとは良く分からないもので、目に見える物理的な距離や目には見えない精神的な距離をもひょいと飛び越えて出来上がることがある。 この数年、そんな出来事が幾度かあって、そこでしか起こりえない出来事や存在を盲信していた頃の考えは霞んでしまう。ここは夏休みの街なんじゃないかなんて、昨日読み返した町田洋の漫画を思い出した。 2020年6月15日 日本国内のバンドで3指に入る事は間違いないという程に敬愛している札幌のcuthbartsがノルウェーのslow down reco

early 1990

中学生だった頃に母の影響で聴き始めたQUEENを除いて、現存しない海外の音楽を聴くようになったのは、ここ10年くらいの話だ。それに、それらのバンドがどんなシーンで、いつ頃活動していたかなんて恥ずかしながら気にせず聴いていたし、1990年代前半の、自分が生まれた頃に活動していたバンドがこんなにも良いバンドばかりなんだだと気付いたのは、この数年、尾道に来てからの話だ。 そういうことを知ると、点在していると思っていた自分の嗜好にはちゃんと傾向があったのだと知り、点と点は散らばって

TALOS

大学生の時、退屈に時間を持て余していて、ぽんとすごい人たちの中に飛び込んだら世界が一気に華やいで加速した。 すごい人たちの中でも特にすごくいいなぁと思ってた人たちが、今TALOSというバンドをやっていて、こないだ出したCDを買ったんだけど、1曲目からめちゃくちゃに良くて、かっこよくて、むせ返ってる。 気怠げなギターから入ってパワフルなドラムとベースが加わって、歌のような叫びのようなボーカルを乗って一気にギアを上げていくような疾走感がある。 ギラつきながら搔き鳴らしたり、ザクザ

現在、日暮れ、朝焼け

すっかり時間が経ってしまったけど、今年も全感覚祭を観に大阪へ行った。 広島在住プロの客shisoさん(2年連続2回目)とトマちゃん、尾道に東京SSを呼んだ偉人と4人。shisoさんとトマちゃんは前日にうちに泊まりに来て、買ってきてくれた広島のつけ麺を食べたり、銭湯に行ったりして当日への意気込みを高めた。トマちゃんとまともに話すのはこの日が初めてで、どんな音楽を聴くのか知らず、明日はどのバンドが一番楽しみかと尋ねると、KK mangaと返ってきたので、ドヤバい人だということが

背景も理論も知ってなお言葉を忘れてしまうこと

この夏のこと。 ウサギバニーボーイの高宮さんに呼んでもらって広島Rootzから盆が始まった。この日のウサギはDuoで(Duo観るのそういえば初めてか)”アイスを買いに”のとにかく良すぎるイントロ、そこから展開していく感じ、たまらないですありがとうございます。Duoになると音の足し引きのうまさが際立ってハ―――とため息を吐いたりした。 シゼンカイノオキテ、いつだったかアンテナのインタビュー記事を読んで気になっていたバンドだったので共演できてうれしかった。 曲はキャッチー

Rumor of town

町の噂とはなんなのか。その町にはその町だけの空気があり、そして噂が行き交う。 市町村のすべてを町とすると、行政によって市町村と定められたものだけで1724個の町が存在するらしい。その町に触れる事だけが噂を知る唯一の手がかりになる。 7月27日福岡の未遂に呼んでもらってライブをした。未遂に会うのは3回目になる。今年も半分以上が過ぎ、ライブの記録を見返してみると10本のライブの内、3度共演しており遠方に暮らしているにも関わらず、最も一緒にライブをしているバンドが未遂だということ

緊張と緩和

朝4時に自宅へ帰って昼過ぎまで泥のように寝ようとベッドに飛び込んでみても、不本意ながら10時には目が覚めてしまった。目が覚めた時の鈍い腹痛はもう3年くらい続いているような気がする。目を覚ますたびこの嫌な感覚を突き付けられるので目を覚ますことに対する嫌悪感がひどい。目を覚ましたくないとも思うけれど、それ以上に死にたくはないのでしぶしぶ鈍痛を受け入れて身体を起こした。 6月2日の土曜日に広島の4.14でライブをした。前回はたしか6月30日、おおよそ1年前。最近のことのように思っ

芸術、愛と想像、自由と幸福

この日を待ちわびていたのかもしれない。 去る3月9日、レミオロメンの大名曲のタイトルの日、私の心を震わせたバンドが集まってくれて、その場にいた人の心をまた同じように震わせてくれたのだ。 私たちは他人であるが故に同じ魂を持つ人と出会う確率なんて、海の中でガラス玉を探すようなものだと思っているし、同じ感覚を味わうことはできないと分かっている。たとえ何か良いと思ったとしても、実は人によって良いと思ったポイントは違うのだと最近はひしひしと感じていた。そういうものなのだと、他人なのだ

リュックサックに期待を詰めて

仕事が終わって六時半。春が近づけど、この時間はまだ暗いようです。サイドミラーがくにゃくにゃと折れ曲がる原動機付自転車に跨って、帰路へ着きました。 昔、マーケットで買ったドイツだかフランスだったかの軍モノの黒いリュックサックから少し大きめのフライヤーを取り出して、先程まで背負っていた仕事用のリュックサックに詰め込む。一度降ろしたそのリュックサックをまたすぐ背負って家を出て、百数段ある階段を下って路地を抜けると、いつもの黒い軽自動車で林くんが迎えに来てくれていて、福山に向かいま