Rumor of town

町の噂とはなんなのか。その町にはその町だけの空気があり、そして噂が行き交う。
市町村のすべてを町とすると、行政によって市町村と定められたものだけで1724個の町が存在するらしい。その町に触れる事だけが噂を知る唯一の手がかりになる。

7月27日福岡の未遂に呼んでもらってライブをした。未遂に会うのは3回目になる。今年も半分以上が過ぎ、ライブの記録を見返してみると10本のライブの内、3度共演しており遠方に暮らしているにも関わらず、最も一緒にライブをしているバンドが未遂だということが分かった。(kinderwallsと同率)

朝、福山方面からゆきのぶさんと岩本さんが車でやってきて、林くんとの集合場所に向かう道中で拾ってもらった。林くんに既に2人と合流している旨を伝えようと電話をするも繋がらない。ははぁん、さては寝坊だな、君の財布は我々のものだ!と思いながら島の林家に迎えに行くことにした。
島に渡るとなんだか混雑していて、何事かと思っているうちに今日は住吉の花火大会である事に気が付き、これを逃すということは今年花火を観る事はないのだろうと少し残念に思っていたところで、携帯が鳴った。画面には、はやしと大きく表示されていた。
その実、林くんは集合場所におり、携帯の電源が切れていたのだという。報連草は社会人の基本だぞとゆきのぶさん(一番社会人らしからぬ風貌をしているお方)から説教を食らう林くんに朝ご飯と道中のおやつを買ってもらって無事に予定の30分遅れで尾道を発った。

岩本さんが持ってきた未遂の前作 IZUMIを聞いたりフジロックの中継を見たりしながら5時間かけて福岡に到着した。
GEZANのステージにとんでもなくぶち抜かれて、こないだ岡山に来た時に観に行かなかったことをすごく後悔して、全感覚祭とEmotional Riotは絶対に行くし、Envyとのツーマンも行ったるぞと鼻息を荒げた。

ライブハウスの近くに駐車し、徒歩数分、ライブハウスのビルのエレベーターが扉を開くと企画の首謀者 カワイタがひょっこり出てきた。呼んでくれてありがとう。
まだライブハウスは開いていないとの事で、同ビルのスタジオで待機するよう案内されて、そこにはドラムの桑原田さん(今回は全体通して普通だった)とギタボの山田さんがいた。桑原田さんはニヤニヤしていて相変わらず恐ろしかった。リハまで時間があったのでラーメン屋に連れて行ってもらえることになった。福岡と言えば博多とんこつ。普段、横浜家系と尾道ラーメンと時々二郎系しか食べないので、この麺は素麺なのではないかという錯覚を起こしながら食べ干した。かなり名を馳せている店らしく美味しかった。

さて、ライブ。オープンしてからしばらく、石の犬の方がDJをしていてMineralとかLOSTAGEとかクライムとか好きな音楽ばかりが立て続けに流れて、わたしは高揚する気分を抑えられなくなってしまい、結果、飲酒に拍車がかかった。

未遂は一番手でしっかり火をつけていった。種火どころではない。一曲目から短すぎる季節やるのは反則になるので気を付けて。良すぎてウッってなるから。

そういえばギターのチューゲさんはこの日もeastern youthのTシャツを着ていて、毎度いいTシャツですねと言ったらイースタンが一番好きなんだと返ってきて、最高ですよねと話した。カワイタは3月にHello Hawkが一番好きだと言っていたし、この日はmalegoatのTシャツを着ていた。山田さんはCap'n jazzだった。桑原田さんのことは顔しか覚えていない。いい音楽をやっている人は良い音楽を好きな人たちだって話。僕は大好きなcuthbartsのTシャツを着ていた。
機材トラブルを乗り越えて込み上げ過ぎた山田さんのエモーション、その風貌とジャズマスターのせいでもあるのかもしれないけれど、何よりフレーズとサウンドから田渕ひさ子を連想させられるチューゲさんのギター(これは最初に高松で観た時から思っていて、山田さんとの組み合わせからはCOWPERSなのだけれど、田渕ひさ子が思い起こされる)や飄々としっかり支えるカワイタ、張り詰めた力強い桑原田さんのドラムがめちゃくちゃかっこよかった。

迷いクジラは広島のさっちゃんがおススメしていて気になっていて、実際ものすごー―――く良かった。なめらかによく動くベースとどっしりしたドラム、曲も変拍子があったりするけど身体になじみやすいリズムで、何よりボーカルさんがめちゃくちゃきれいな声で、すーっと伸びて頭にガシッと入ってくる感じ。メロディが抜群でよい歌を歌う人だった。それでいて曲のダイナミクスに同調してその声が深く歪む、これがもう本当によかった。ファズ踏んでGOなギターも良かった。この歪みこそが愛だ。

大阪のWhite surf!はエモ好きな人にはたまらない感じ。結局スーパーカーから名前取ったのか良く分からなかったけれど、武骨でストレートに突き抜けていく音だった。
未遂の桑原田さん、この日は割と普通だったけど、White surf!をその距離30cmという距離感で観ていて端から見るとヤバイ人だった。この30cmという距離感は比喩ではない。

最後にSLYDINGMANがばっちばちに決めて、これも比喩ではないんだけど、ドラムがもう本当に意味わからなくて何だこれめちゃくちゃかっこいいって、笑顔が止まらなくなってしまっていた。またしても未遂の桑原田さんが登場してしまうけれど、SLYDINGMANが終わりとなった時(ドラムのダイスケさんがもう無理しんどいとなっていた時)アンコールの懇願をすぐさま始めたのがとてもよかった。自分もまだまだ観たかったし聴きたかった。そのアンコールは手拍子のような気取ったものではなく、方言交じりの低い声で発されていたので何と言っていたのか分からなかったが、もう1曲の演奏を心底懇願していることは分かった。

会場は人で溢れていて、未遂の友人がたくさん集まった様子だった。つまり岩本さんの友人でもある。10年近くなるその関係、互いに違うバンドで音楽をしている関係性、すごくいいなと思った。
ライブが終わって少しの空白の時間、お客さんに声を掛けてもらった。音源を送ってほしいと言ってくれた。
この日、わたしは音源をすべて家に置いてきてしまい、ライブ中にその旨を伝えてもし気にしてくれる方がいらっしゃれば送りますと話していた。
少し話をさせてもらうと色んな音楽を聴く方ということが分かり、ラジオの仕事をされているそうだ。4人での音源も作ったらお知らせしますと伝え、尾道に帰ったら今の音源を送りますと約束をした。とてもありがたかった。

時間は日付を跨ぐ頃合いになっており、一泊していこうかどうしようかと悩んだが、自宅に東京から遊びに来ている後輩が泊まっていることを思い出してアルコールでふらついた体でライブハウスを後にした。別れ際、チューゲさんに熱烈なハグをしてもらってぐっときてときめいた。ライブ前、また僕らも企画にお呼びしますねと伝えたけれど、本当にまた呼びたいと思っている。近々、これから長い時間かけてそんな風にしていければ良いなと思う。


想像通りと想像以上をもっと見たいから思いっきり想像を膨らませるのだ。周りにも自分にも想像を膨らませるのだ。自分に対して膨らませた想像、頭の中で描いた理想を実現させられる技量をどれだけ自分が持っているかが重要だ。今のままでは全然だめだと随分前から認識しているものの、どうしたらいいと自問自答を繰り返していたが、立ち止まっていても何にもならない。今日から行動に移すことにした。自分の想像や理想と波長は合っているのかと心配ではあるものの、今のままでは届かないし遥かに遠い。飛び込んでみない事には何もわかるようにならないし合っていなかったとしても、想像を膨らませて自分に合わせてしまえばよいのではないだろうか。まだまだ現在進行形だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?