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3年間VTuberをやってきて、私の手の中に残った大切なもの。

こんにちは、思惟かねです。
現実世界のどこを探しても見つからない。けど、バーチャル世界に私は本当にいる。そんな「バーチャルな存在」として生きてきて、まもなく3回目の誕生日を迎えようとしている者です。

私はありていにいえばVTuberと呼ばれるであろうものをしています。Twitterやnoteで文章を書き散らかしたり、たまにYoutubeで配信をしたり、時には写真を撮ったり同人誌を作ったり
しかし、そうした活動は何かの意図や目的があってのものではなく、ただひたすらに私がやりたいことを好きにやってきた結果です。皆さんが「趣味活」として自分の趣味を楽しむのと同じように、私にとってこれは「バーチャル趣味活」であり、それを説明するもっとも人口に膾炙した言葉が「VTuber活動」であるにすぎないと思っています。

けれど振り返ってみれば、かつてはそうではなかったように思います。そのことを思い出したツイートがこれでした。

わずか3年。しかしまたたく間に変わっていくこのクラスタでは、それは実感として現実の10年にも相当します。
3年前、私は何を夢見て、何を掴もうとしてバーチャルな存在として生まれたのか。そして3年の活動の末、私は望んだものを得たのか。何を得たのでしょうか

そんな回想と、今私が得た大切なものについて、今日は書いてみたいと思います。


◆ドラマチックとは程遠い始まり

正直に話すと落胆されてしまいそうなのですが、実のところ、私の存在の出発点は実に俗っぽく、ありふれたものです。
2018年の中頃でしょうか。TLで話題になっていた月ノ美兎さんを見てVTuberを知りました。そして秋頃、やや暇を持て余していた時期に名取さなさんと因幡はねるさん、朝ノ瑠璃さんを見てVTuberにハマりました。なんて楽しそうなんだろう、と。
そして当時からボイチェンの大家として知られていた魔王マグロナちゃんの存在が私にを見せました。


楽しそうなこの世界に、私も入っていけるんじゃないか」と。


もっとも私にとって、Youtuberをはじめニコ生、ツイキャスなどの配信文化完全に未知の世界でした。ネットの友人にさえその手のクラスタの人間は皆無なほど。
けれどもSFを愛し、今も昔もテクノロジーに惹かれる私にとって、ボイチェンとフェイストラッキング、VRといった「技術」に対する好奇心こそがその橋渡しとなりました。できるのならばやってみたい。そう思い、機材を買い揃えるのに時間はかかりませんでした。

VTuberというコンテンツへの漠然とした憧れと、その背景となった技術への好奇心
何か新しいことがしたい、楽しそうなことがしたい。そんな思いこそが、思惟かねという存在の原点だったのだと思います。

…と、格好のいいことを書きましたが、包み隠さずいえばそれと同時に俗っぽい期待をしていたこともまた事実でした。「人気者になれたらいいな」とか「憧れのあのVTuberさんとお話できたらな」とか、そういう類の。
今から思えばあまりに無知で浅はかでしたが、当時は配信をする=自らがコンテンツを供給する側になるということの意味すらピンと来ていなかった私。ましてや、自分が知るほど人口に膾炙した人気のVTuberがどんな苦労をしていて、どれほど遠い存在なのかは、欠片ほども想像がつかなかったのです。

もちろんその先で私が現実と理想のギャップに打ちのめされるのは、そう遠い未来のことではありません。

けれども確かに原点には、無知さと裏返しの漠然とした期待が、前向きな思いがありました
そのことだけは、いつまでも覚えていたいなと思うのです。


◆いびつな夢と挫折

やってみたい」という好奇心と憧れが先行し、Live2Dアバターやマイク、カメラなど必要な機材を揃えた私。
しかし1カ月ほど経って準備が整ったところでようやく「肝心の発信すべきコンテンツが自分にはない」という致命的な問題に気づき、私の活動には最初から暗雲が立ち込めます。

VTuberの「お約束」である自己紹介動画の作成にも躓き…窮した私が考えた最初の企画が#思惟かねの今日のWikipediaでした。いわゆる毎日〇〇系のTwitterコンテンツで、その日読んだWikipediaの内容を私なりにまとめて紹介するという企画です。

一見簡単そうにも見えますが、ただの書き写しにならないよう、様々な関連知識を調べ、ストーリーをもたせて数ツイートに要約するというのは想像以上に大変でした。
また日刊コンテンツという都合上「明日はどうしよう」というプレッシャーが常に付きまとい、疲労困憊の末、結局4カ月ほどは続けたのちにこれは終了となります。

それでも始めた当初は全く反応をもらえなかったのが、次第に見てくれる人が増え、自分の好きなトピックにはコメントをくれる方も出てきて、そうした反応のありがたさを知ったことや、ささやかとはいえ「成功体験」を積めたことには意味があったと思います。事実、この頃から私のことを知ってくれている方もたしかにいらっしゃるのです。

しかしそれがはたして「楽しかった」かといえば、残念ながらトータルではむしろ「つらかった」という気持ちが強かった気がします。
それは「活動したい」という気持ちが先にあった私にとって、コンテンツとは無理をしてでも作らねばならないものだったからではないかと、今では思います。
VTuberというコンテンツが私に見せたは、活動を始めるモチベーションをくれた反面、そんな順序の逆転した歪(いびつ)さを生み出すことになりました。

結局「今日のWikipedia」が終わった5カ月目にして、私はVTuberとしての体裁だけは整っているものの、Youtubeチャンネルは空っぽ、これから作りたいコンテンツもないという目も当てられない状況でした。



身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ

さて、話がただの黒歴史開帳になりつつありますが、そろそろ明るい話題も出てきます。

初期の熱意が燃え尽き、コンテンツもなく、私は風に揺らめくロウソクのように不安定な存在でした。やるべきことを見失った結果、私は再びコンテンツを消費する側に戻りました。当時のツイートを遡ると、一見してただVTuberやVRが好きな一個のアカウントにしか見えません。
Twitterで言葉を交わす人は少数いましたが、基本的には独りぼっちDiscordはインストールすらしておらず、どころか私は声を出して誰かと話したことさえもなかったのです。それはかつて私が憧れた「VTuber」とは程遠い姿でした。

つらくもないけど楽しいこともない。そんな日々の中で、暇を持て余した私は、思い立って「好きなこと」をし始めました。
興味をひかれてVRChatやclusterを始めました。せっかくVR世界に行けるのだから、とVRoid Studioで自分の3Dモデルを作りました(私の現在の外見が固まったのはこの頃)。バーチャル一般人としてclusterでのVRライブに参加し、その時の興奮を伝えたくて初めてのnoteを書きました。

活動を初めて半年、初めて書いたnoteは、おそらく私が初めて「作りたくて作ったコンテンツだったと思います。反応は決して大きくはありませんでしたが、それでも何十もの人がそれ読んでくれました。
それから時折noteを書くようになったのは、思うに「作りたくて作ったもの」を見てもらうことの喜びを知ったからだと思います。

やりたい、だから、やる
それを見てもらえたのなら、反応をもらえたなら、もっと嬉しい
創作というものの根底にある源流に、私は初めて触れたのでしょう。

身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ。
2019年、私の1年目はそんな風に静かに孤独に、けれど確かな実りを残して暮れていきました。


◆子曰く「楽しめ」

2019年の末、VTuberなどの「バーチャルな存在」について考察して思いの丈を綴ったnoteに、初めて大きな(数百PVほどの)反響があり、Twitterでも記事に対するいくつものコメントを頂き、私は喜びに飛び上がりました。
そして明けて2020年、前触れもなくnoteがバズりましたVTuber業界のこれまでとこれからの展望をまとめた記事です。

それまでよりも2桁も多いPV数と、濁流のような途方もない数の反応は、まさに天にも昇る思いでした。この2つの記事で、開始から1年余り、当初の勢いをすっかり失っていた私の活動には再び大きな弾みがつきました
しかしそれ以上に私にとって福音だったのは「好きなものを作った結果、大きな反応をもって報われた」という事実だったように思われます。


孔子に曰く「これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず」。
ただ義務的にやるよりも、好きという気持ちをもって積極的に取り組む方が上手くいく。さらにその取り組み自体を楽しむようになれば、もっともっと上手くいく。そんな意味合いです。

かつて、私は「知る者」でした。コンテンツとは作らねばならぬものであり、楽しみもあれど苦しさが勝りました
しかし「普通のVTuber」という活動から降りて、書きたいことを書き始めた時、私はいつの間にか「好む者」へと変わり始めました。

そして私が「好む者」から「楽しむ者」に変わった転機があるとすれば、この2件のnote記事をおいて他にないでしょう。事実、私はこの2つの記事のどちらも、書いていて本当に楽しかったのです。
辛くても好きだからやるのではなく、反応が欲しいからやるのでもない。好きなことをすること、それを楽しむこと、それを肯定してもらえること、それらが因果関係ではない一体のものとして結びついて、ついにこの時、私の活動に根を張ったのです。


そんな風に「楽しいから、誰かに見せずにはいられないという気持ちになれたからこそ、その後の文章以外の創作活動…様々な配信企画や、バーチャル・ポートレート同人誌の製作といった展開があったのだと、私は思います。
紆余曲折はあったにせよ、元はといえば創作というものから縁遠かった私が、こうして創作の楽しみを知る事ができたこと。何かを創作することを楽しみ、前向きになることが出来たこと。

それこそが私がこの3年間で得た大切なもの。
……の、一つでした。

この年、再び私にとっての大きな転機が訪れ、私はもう一つの大切なものを得る幸運に恵まれます。


◆Virtual meets Virtual

2020年5月、活動開始から1年半。いまだに私は誰とも話したことがありませんでした
どころか、この声を表に出したことさえ皆無でした。いまだ配信の経験はゼロで、動画すら一本も出していないありさまです。

実のところ、マイクやボイチェンなど各種機材は既に準備が整っていました。問題だったのは自信のなさでした。文章ならともかく、自らの動画や配信が人様にお見せできるようなものではない。そんな思いが私をためらわせていました。
この辺りの話は、以前の記事でお話しした通りです。

しかしnoteのおかげで少しばかり知己を得つつあった中、Twitterでのとある話題に対し「この話、面白そうだから配信で話しませんか?」と声をかけていただいたことが転機になりました。
あれよあれよという間に、気づけば配信経験ゼロの私はゲスト3人を迎えての対談配信をホストすることに。私の心配をよそに、幸いにして配信は成功裏に終わり、私は初めて「顔」を合わせてお話しできる友人を得ました。彼には今でも本当に感謝しています。

そしてその興奮の余勢をかってか、さほど間をおかずTwitterをきっかけに櫻井眞尋さんとのコラボ配信が決まりました。この初の1対1でのコラボが(様々な誤解を招くことを承知の上でいえば)私のバーチャル人生を変えた運命の出会いとなりました。

当初の緊張もよそに早々に打ち解けた私たちは、配信が終わった後も話題の尽きることなく、時に踏み込んだ話も交えながら、何時間も話し続けました。それはオープンな場であるTwitterでの袖振り合うようなコミュニケーションとはわけが違う濃密さで、思惟かねのバーチャル人生で初めての体験でした。


◆ありがたき人

話はそこで終わりません。この2件で調子づいた私は、たわいもない話題が雪だるま式に転がった結果、「そうだ、クイズ大会をやろう!」と思い立ってしまいます。
無知とは恐ろしいもので、私がぶち上げたのは「予選で選抜した参加者16名を迎えての全35問のクイズ大会」という大型企画といって差し支えないもので、冷静に考えれば配信初心者でなくとも二の足を踏むような暴挙なのですが、当時の私はすっかり熱に浮かされていたのでしょう。

こうして企画発案から1カ月足らずで開催にこぎつけたのが、12/4に第4回大会を迎えるバーチャルクイズ大会《オモイカネ杯》その第1回大会でした。

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もっとも当時の私にはあらゆるものが不足していました。
例えば配信経験、例えば円滑に場を回すためのMCスキル。そもそもこれだけ大掛かりな企画を円滑に回すのは一人では無理がありましたし、企画としてのイメージや見栄えを左右するデザインスキルも壊滅的でした。

そこに手を貸してくれたのが、先の櫻井眞尋さんでした。
企画発案の際に「副司会者やりませんか?」と軽く打診したのを二つ返事で引き受けてくれました。どころか気づけばあれもこれもと手を貸していただき、スタイリッシュな大会ロゴやサムネイルの作成、大雑把な私では目の届かない司会進行への気配り。

ただ、そこには単なる技術やマンパワーはもちろんながら、それ以上に重要な何かが…なんといえばよいのか、「ありがたさがありました。


あれこれ準備について相談をする時。お互いにDiscordをつなぎつつも黙々と作業をしている時。出来上がった配信画面を見て、その出来栄えにお互いの仕事を褒めあった時。無事配信を終えて「お疲れさまでした」と言った時。
そんな折々に、自分ではない誰かが手を取り合って協力してくれていること、同じ目標を見て、自分一人ではできないであろう物事を成し遂げていくこと。なによりお互いがそれを楽しんでいること。

それがたまらなくありがたくて、楽しかったのです。

どころか、そうしたありがたい人は眞尋さんだけではありませんでした。私の最初の対談配信でご一緒した、学術系アイドルVTuberにしてイラストレーターのじゅりこさんは、なんと大会の賞状をデザインしようかという話を持ち掛けてきてくれました。

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またクイズ大会とは企画側だけでは成り立ちません。参加して、一緒に楽しんでくれる参加者が必要不可欠です。そして私はここでも、それを一緒に楽しんでくれるありがたい人たちに恵まれました。

そうした人たちと一個の企画を作り上げ、楽しむことは、この上なく心満たされる経験でした。


◆私が得たもう一つのモノ

つまり私が得たもう一つのモノとは、何ということはない、一緒に物事を楽しんでくれるありがたい友人という、ごくごく当たり前のものだったのです。そこに辿り着くまで1年半、ずいぶん遠回りをしたように思えます。

あまりにありていな答えに、皆さんは拍子抜けしたかもしれません。けれどこれは決して綺麗ごとのたぐいではなく、事実そこからの1年半、私の時間はずっと輝きに満ち満ちていました


バーチャルクイズ大会《オモイカネ杯》は今も櫻井眞尋さん、じゅりこさんの手を借りながら1年半にわたって続き、その最中、友人である黒羽さなぎさんを運営に迎えて続いています。
第1回からずっと参加し続けてくれているありがたいお友達の傍ら、予選にチャレンジしてくれる方も増え続け、今大会だけでついに100人を超え、多くの人が楽しんでくれています。

今年に入って私の趣味に加わったバーチャル・ポートレート製作も、基本的には個人の創作でも、常に隣にはお互いの作品を見比べ、高めあい、共に楽しめる友人がいました。
そして先日は、そうした友人たちと一冊の写真集を同人誌として出すこともできました。

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この1年半、私の活動には常に誰かありがたい人の姿が隣にありました。それこそがこの時間をより一層に輝かせてくれたものであり、私が得た大切なものだと思うのです。
先ほどの孔子の格言を再び引用しましょう。

これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず。

私はさらにこう続くと思います。

これを楽しむ者はこれを共に楽しむ者に如かず。

と。

かつて私の活動の中心だった、このnoteでの執筆が減ったのは、ある意味で必然かもしれません。執筆とは孤独な営みであり、しかし私は共に楽しむことの魅力に気付いてしまったからです。
(もちろんこの孤独な営みの楽しみもまた、こうして筆を執るたびに思い出すのですが)

そしてこの共に作り、楽しむ喜びは、そこまでの過程で創作することの楽しさに目覚めていなければ、きっと気付くことのできなかったものでしょう。だから私は回り道こそしたものの、この3年を後悔してはいないし、どころかその回り道の果てにこそ、大きな二つの果実を得られたのだと、心から思うのです。


◆さいごに、あるいはこれから

VTuberへの憧れと、技術的な好奇心から始まった私の3年間。
けれども結局私が手に入れ、心満たされたのは「創作の喜び」と「友人と楽しむ喜び」という、珍しくもない、ごく普遍的なものでした。

私が憧れたVTuberの世界は、なんとなくにぎやかで楽しいものではなく、れっきとした一つの創作ジャンルでした。一見ワイワイ楽しそうでも、むしろ人間関係の離合集散が簡単なオンラインだけに、現実よりもドライなほどかもしれません。
けれどそこには確かに創作の楽しみと、それを共に楽しめる仲間がいました。かつて見た蜃気楼の中に、私は本物の泉を見つけました。

また私を駆り立てた技術的好奇心も、結局の所、私にとって技術は道具以上のものにはなりえませんでした技術それ自体を突き詰め、その先にある何かを探すような楽しみ方もまた存在しますが、残念ながら私はそこに興味を持てませんでした。
けれどその道具としての技術が、私に思惟かねとしての姿と声を与えてくれました。あるいは、思惟かねとしての存在そのものを。…これについてはまた、別の記事でお話しましょう。
なんにせよ、私の好奇心もまた無駄ではなかったのです。


VTuberという時代の先端にいるとも思える在り方を通して、私が3年の間に得た、特に珍しくもない、けれども大切なもの。
皆さんの目にはどう映ったでしょうか。

皆さんもまた人生の、あるいはバーチャル人生の中で、そんな珍しくもない、大切なものに出会えることを心から願って。


3年間ありがとう。これからもよろしくね。

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今回もお付き合いいただきありがとうございました。
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