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ライター仕事で気を付けていること~読み飛ばされるぐらいなら書きすぎて叱られたい、の巻~

撮影:東畑賢治

他の仕事をやる時間があるなら、1本でも多くの原稿を書いていたい

 新卒で入社したユニクロ(ファーストリテイリング)をわずか1年で逃げるように辞めたのが2001年の春のことでした。1か月ほどモヤモヤして過ごして、フリーライターの父親の紹介で編集プロダクション(編プロ)に入れてもらったんです。編プロとはテレビ業界における制作会社のような存在で、出版社や広告会社から記事や広告といったコンテンツ作りを請け負って報酬をもらっています。ある雑誌や書籍の制作を丸ごと引き受けることも少なくありません(発行や販売だけは出版社)。
 僕はこの編プロも1年弱で辞めてしまいました。いくつか理由はありますが、編集作業には向かなかったことが最大の原因だと今では思っています。デザインや写真も含めて、記事全体としてどう見せるのか、といった点に僕はこだわれないのです。他人が書いた文章を直したりするのも得意ではありません。「そんな時間があるのなら1本でも多くの原稿を書いていたい」と思ってしまいます。カッコよく言えば職人気質なんですね。

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声をかけてくれた人と会社に対して「早い、上手い、感じいい」職人でありたい

 人の関わるのが嫌いなわけではありません。むしろ大好きです。「大宮さん、こんな仕事をやりませんか?」と主に編集者さんから声をかけてもらうと、無性に嬉しくなります。生活のためにはお金も大事ですけど、それ以上に僕を思い出して指名してくれたことに生きがいみたいなものを感じるんです。声をかけてくれた人と会社に対して「早い、上手い、感じいい」職人であろうと思います。
 例えば、先月の上旬には先輩から「テレワークに関するWebセミナーを視聴して1本につき2000字ぐらいの原稿にする仕事」を依頼してもらいました(僕が担当した記事はこちらです。セミナーのサイトは下記)。非常事態宣言でインタビュー取材がしにくい中、すべて在宅で完結できる仕事をいただけるのはありがたいことです。この1か月半で20本以上も請け負わせてもらいました。他の連載仕事も続けながら、1日1本ペースの生産を自分に課しています。
 以来、朝7時から夜7時ぐらいまで机にかじりついている日々です。途中で家事や居眠りや散歩はしていますし、夜は妻と晩酌して寝てしまいますけど、土日も関係なく働いています。別にストレスはありません

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自分、依頼者、取材先。書いているときに意識する3人の読み手

 書いているときに意識するのは3人の他者(読み手)です。まずは自分という読者。本来であれば記事を読んでくれる本当の他者(あなた)を意識すべきなのですが、正直に言って僕はそれが得意ではありません。個人的なメールを書いているときですら、相手に語りかけつつもまずは自分を読み手として想定しています。自己満足とも言えますが、少なくとも自分という他者が「わかりやすくて面白い文章だね」と評価してくれなかったらやってられません
 2人目は発注者です。上記の仕事の場合は先輩ですね。テーマに合った読みやすい原稿をできるだけ早く書いて届けたいんです。1本目も10本目も同じ品質で安定して生産したい。最後の最後まで「大宮くんに頼んでよかったな」と思ってほしいのです。

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話の本質と話者の人間味を自分なりに表現する。ごく一部でもいいから

 そして3人目は取材先。上記の場合はWebセミナーの講演者ですね。講演内容をまとめた僕の原稿を読んだとき、「自分が言いたかったことが適切に言葉を足しながら読みやすい構成で文章化されている」と納得してもらえたら最高です。僕もたまに他のライターさんにインタビューされて記事にしてもらうことがあります。それを読んだときに嬉しくなるのは、褒められたりきれいごとを書かれたときでありません。僕の話の本質および僕自身の人間味のようなものをその人なりに表現してもらったときです。一部でもいいから。
 特に3番目は難しいですよね。書いていて「そういう君はできてるの? 納得していない取材先がいるかもよ」と不安になりました。
 でも、当たり障りのない言葉を順番に並べただけの原稿だけは書かないように気を付けています。そんな文章は「3人の読者」の誰の心にも届かないからです。読み飛ばされるぐらいなら、「赤裸々に書きすぎ」と叱られるぐらいのほうがいい。それが僕のライターとしての数少ないこだわりです。(おわり)

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