讃岐うどんは沢山あれど、出会えてよかったお店。
車に乗っての行き当たりばっ旅の途中、コロナ禍で久しく忘れていた「旅をする」という感覚を心身共に取り戻してきた頃に軽くいっぱいやりましょうかとお店を探すことにした。
その日は平日。それでもどこも賑わっていて、やはりまだ密はいけないと部屋でしっぽりコンビニ飯にしようか🍻と思っていたところに、ノーゲストのお店を見つける。
メニューを見ても食べたいものが沢山あっていい感じだったので、思い切って飛び込んでみた。
のどはカラカラ、でもまずは消毒は入念にしてから店員さんに「生ビールふたつと、この土地の名物とかこれ食べた方がいいよってものありますか?」と聞いてみたところ
「最初のオーダーはこちらで通しますが、あとはこのQRコードからお願いします。読み取っていただければ、本日のおすすめの項目がありますからそれを見ていただければ…」
と、QRコードを差し出し、プライベートで何か嫌なことでもあったのかと不安になってしまう返答だった。
仕方ない。こんなご時世だし、いくらマスク越しとは言え無駄にコミュニケーションを取ろうとしているわたしたちが悪かった。
聞きたかったのは本日のおすすめではなく、この土地の、もしくは店員さん的にはこれがおいしいよ!というメニューでもよかったんだけど。次はいつ来るかわからない一見さんにまで愛想振りまいてられない気持ちもわからなくはない。
そんなことがあっても、ビールもおつまみもどれもリーズナブルでおいしかったのでまぁよしとして、他は賑わっているのにこのお店だけはわたしたちまでノーゲストなのはもったいないなと思った。
その時の出来事を心に刻み、その後の旅もわたしたちは「控えめ」をモットーに旅をしようと思った。
翌日のこと。高速道路で移動中、目的地に向かう途中で火災があり高速を降りなくてはならなくなったのだった。
せっかく下道を走るなら、朝ごはんに讃岐うどんでも食べようかと思い早くから開いているお店をみつけて入る。
入り口を入ると広い店内。
遠く離れた場所からメニューをみあげ、はじめての本場の讃岐うどんに戸惑う姿がバレていた。
すると店員さんが、おいでおいでと手招きをする。注文口にいくと、
「何にする?うちははじめてか?」と言われた。
「はい、初めてでどれがいいのか迷って…」と言うと
「どっから来た?」の問われ、わたしは控えめに
「東京からです…」と言うと、威勢の良いおじさんの店員さんは
「東京からなら何食べたっておいしいよ!かけうどんにえびちくわ乗っけてたべるといい!えびちくわなんて東京にはないだろー?ねぎと生姜もたっぷりっ!!」
と、まさに欲しい答えをいただけたのだった。
はじめて出会う、えびちくわ。
「えびが練り込まれたちくわなんですか?」と聞くと、
「あったりめぇよぉー!!」って、香川にいるのに、おじさんなぜか江戸っ子ちゃきちゃきみたいでおもしろい。
夫は肉うどんにすると、お肉をたっぷり、これでもか!というほど乗せてもらい
「肉は天ぷらいらない。ねぎと生姜だけ入れたらうまいから!」とのアドバイス。
ちくわがえびの色🦞
うどんは小サイズでもだいぶボリューミー。
しかも、値段も安い。
はふはふしながら、うどんとえびちくわ、交互にかぶりつく。
おいしい。これが讃岐うどんか。
丸亀製麺では食べたことがあったけど、本場で食べるのは初めて。
なくなるのが怖いほどにおいしい。
香川までくれば、どこで食べてもきっとおいしいんだろうと思う。
けれど、おじさんがはじめてのわたしたちに寄り添ってくれた気持ちがうれしくて、讃岐うどんの思い出が最高のものになった。
朝なので、まだそれほど混んではなく帰り際もごちそうさまを言いながら少し話しをした。
最後は「寄ってくれてありがとね。これからどこへ向かう?気をつけて行ってな!」と、これまた優しい言葉をかけてもらう。
ディスタンスに負けない心の距離感に、心からのごちそうさまとありがとうが出た。
コロナ禍でなるべく人と人の接触を減らしつつ便利に変わっていくシステムももちろんあるし、それはありがたいと思っている。
だけど、こうやって人と人が向き合う時間もやっぱり好きだなぁ。
あったかいうどんには、おじさんの人柄という隠し味が入っていたに違いない。
吸い込まれるように入ったその場所には、きっと呼び寄せられたのだろう。
一杯のうどんがこんなにもおいしいなんて、今思い出してもよだれが出る。
線路沿いのカウンター席で食べたので、目の前を電車が通過するという貴重な光景まで見れるおまけつき。
鉄道好きな方にもおすすめできるすてきうどんやさん。
いつかまたきっと、おじさんに会いに行きたい。どうか、そのまま変わらぬスタイルでお元気でいて欲しい。
わたしが注文するメニューも、きっと変わらずにかけうどんのえびちくわのせになるんだと思う。
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