見出し画像

西荻窪 「こけし屋」の思い出。

時代の流れ、というのもあるのか最近わたしの好きな場所がどんどんなくなっていっている。
特にこの3月というのは、ひとつ区切りのような月でもあり特に沢山の閉店の文字を見た気がする。

コロナ禍でどこにも出かけられず悶々としていた時に盛大に食べたうなぎ屋さんも
東京の青春が詰まったヴィーナスフォートも
よく行く街のあんなとここんなとこ。
数えたらキリがないくらいで、ものすごくさみしい気持ちが込み上げる。

その中でも特に、何度も通ったあの老舗ケーキ屋さんがなくなる。
正確には建替えのため一時閉店し、仮営業などはなく3年後にまた戻ってくる予定とのニュースを見ていた。

いてもたってもいられなくなっているのとは反比例して、身の回りがバタバタしていた年度末。
ひと段落落のタイミングで出遅れるカタチにはなってしまったけれどギリギリところで滑り込めた。

そのケーキ屋さんは、西荻窪にあるこけし屋さん。レストランや喫茶室もあって、店内にはこけしがディスプレイされていた。

出会ったのはいつだったか、はたまた何きっかけだったのか思い出せないくらい前から好きなお店だった。

東京にはたくさんのお店がある。
行きたいお店は増える一方、だけどこけし屋さんのような何度だってリピートしたいお店も増えることでなかなか行きたいリストを消化できない。

どんなところに好きの気持ちが溢れてしまうのかと言うと、まずはレトロな雰囲気のお店。並んでいるこけしたち。特別な包装紙もかわいくて。
ケーキはもちろん美味しくて昭和の味がする。いさぎよく甘い、そのしかくのショートケーキ。ケーキを食べる時は、甘いものが食べたい時だから、甘みを控えられたら困るのだ。
ももの缶詰が乗ったソレイユというケーキも好きだった。

喫茶室でモーニングを食べ、食後にケーキを食べても1,000円で収まる価格設定もわたしのようなコスパ女のハートをがっちり掴む。

InstagramやTikTokでこぞって紹介されるような派手さはなく、店員さんもベテランさんが多い。客層をみても地元の人たちに愛されているところも落ち着くポイント。

コロナ禍1年目のお誕生日には、かわいい犬が乗ったバタークリームのケーキを夫にねだった。暑い日にマスク熱中症になりかけながら2人で受け取りに行き、家で箱を開けた瞬間

「夢みたい🥺」と目を潤ませた。
日常が奪われていく中でも確実に存在してくれたこけし屋のケーキ。

喫茶室はひと足先にクローズしてしまっていたので、いろんな思いを馳せながらテイクアウトの行列に並んで懐かしのケーキたちをゲットする。
一緒にグリンピースサラダと、マカロニグラタンも。

画像1

並んでいるとき、地元マダムに話しかけられた。

「私はね、もう50年ここのケーキにお世話になっていたの。ここがなくなったらケーキ屋さんがなくなってしまうわよね」

そんな大袈裟な。他のケーキ屋が…とは思わない。ファンにとってはそこまで特別なケーキで、うんうんとマダムと気持ちを分かち合ったのだ。

70周年の時に出ていたトートバッグ。
いつでも来れるからと買わずにいたことを今さら後悔している。

チャンスの神様は前髪しか生えていないのだから、その時がっちり掴まないと…通り過ぎてからでは遅いのに。

それでもね、十分建て替え前のこけし屋を楽しむことが出来た。

3年後に戻ってくるとはいえ、建物も従業員の方も変わってしまうとやはり今のこけし屋でなくなってしまうんだと噛み締めて味わう。

その頃わたしはまだ東京にはいるのか、いたとして3つも歳を重ねてしまえばこの感覚もまた違うものに変化するかもしれない。

星の数ほどのケーキ屋さんの中でもこんなにも好きなお店に出会えた奇跡の物語を、このnoteに記しておきたかった。

桜の景色とともに、心の宝箱に大切にしまっておきたい。手前に置いてすぐに引き出せる場所に大切しまうこけし屋との思い出。

画像2

今日のわたしはちょっとおセンチ。
だけど、前向きにありがとうの気持ち。

こけし屋、Forever🥺

この記事が参加している募集

至福のスイーツ

優しくそっと背中を押していただけたら、歩んできた道がムダじゃなかったことを再確認できます。頂いたサポートは、文字にして大切にnoteの中に綴ってゆきたいと思っております。